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第一章 二十六話 『授業』

さて、あれからイリーはシューカ先生に呼ばれて職員室に向かった。


オレはというと全25名居る魔術クラスの窓側左端の席に着くように促されて座っている。

あれだけ歓迎されたオレだったけど、イリーに目をつけられてしまった事でクラスの誰一人として近づこうとしない。


チラチラとこちらを見てくる視線だけが刺さる。


はぁ…。


イリーがやらかしたせいで、授業が20分程遅れている。

未だシューカ先生もイリーも帰ってくる気配はない。


オレのせいでは無いと信じたいが、流石にこの感じは堪えるなぁ。

とか思っていると唯一、一人だけオレに話しかけてきた。


「アル・ガル・シアン嬢。すまなかった。」


「えっ?」


イリーと揉めていた生徒だ。

なんでお前が謝るんだよ。

全面的に悪かったのはイリーだろ?

その前に君は一体誰なんだい?


「いえ…」


「おっと、すまない。自己紹介がまだだったな。私はディエン・カイ・ウールという」


話しかけられてキョトンとしていると、向こうから自己紹介をしてきた。

カイ・ウールといえばレリグシア王国でも屈指の商人家系であり、その腕前から叙爵して今は子爵家となっている。

階級でいえばオレの伯爵家に続く階級となる。


「カイ・ウール家の方でしたか。存じています。アル・ガル・シアンです。改めてよろしくお願いいたします」


家の顔も立てなければいけないから、できるだけ人当たりよく接しなければ…。

王国屈指となると今後もお世話になるかもしれないからね。

ここもできる限りの作り笑顔で攻める事にした。

ニコリ。


「…」


?


反応が無い。


「ディエン様?」


「す、すまない。すこし考え事をしていた」


「ふふっ。ディエン様はずっと謝ってばかりですね」


「…っく。そ、そんな事はさておき、なんとかイリーの気を私に向かせようとしたんだが失敗だった」


「そんな、わざわざ気を使わせてしまったみたいですみません。いや、この場合はありがとうですね」


「…君は」




バタン!!!


おっと、奴さんが帰ってきたようだ。



「…ったく、ウルセェんだよ。ぐちぐちぐちぐち。クソババァが!」


ドカンとわざとらしく音を鳴らして席に座るイリー。


その後すぐにシューカ先生が戻ってきた。


「30分程遅れましたがこれから授業を始めます。一限目はスキルですね」




朝登校してから約三時間ほど過ぎ、一限目スキル。

この授業は名の通りスキルについての授業だった。

先天性スキル、後天性スキルの理解の他に大まかな種類や特徴の説明で終わった。

これは、ガル・シアン家でのお勉強で習った内容だったので問題なく進んだ。


二限目は魔物について。

これも以前習ったように、外的な要因で凶暴化した魔物が居るということ。

F〜SSクラスという強さでのランク分けがされている。

それに伴って、この世界各地に広がっている討伐者と呼ばれる職業の者たちが対応しているらしい。

また、その中でも優れている一部の者は勇者と呼ばれる。

所在している国に仕えるようになり、近衛騎士のように常に王国都内で警備しているのではなく基本的に王国に所属する領土全てを守備しなければいけないみたいだ。


この世界では、勇者ってそういう立ち位置だったんだな。

やっと一つの謎が解けた。


オレとベルドルムが出会ったあの日、ベルガドルムを追っていたのも守備の一環だったんだろう。


三限目は歴史だ。

今回はダンジョンにフォーカスした内容。

要約した内容としてはこういったものだった。


遥か昔、まだ人間が存在せず神々が地上に居た時代。

意見の相違により始まった神々同士の衝突によってゼルゲッテンが壊滅状態に陥った。

数千年と続いたその衝突は突如終わりを告げる。

地上に居た神々は消え、その衝突の遺産だけが残る事となった。

その時に残ったものが今のダンジョンであり、神々が使用していた武器や宝物が現在の秘宝である。


なんというか、どこにでもある神話や伝説のような話だな。

シューカ先生も未だ謎の多いもので真実は全く解明はされていないと言っていた。


自分の身体なだけに、ここまで謎だと少し不安が残る形で終わった。



ここでお昼休憩。

朝に寮で用意されたお弁当を机の上に広げて黙々と一人で食べた。

今朝の事もあってやっぱり誰もオレに近づかない。

ちょっと寂しい。



一時間のお昼休憩が終わり四限目。

実践学習だ。

魔術クラス全員が演習場と呼ばれる前世でいうところのグラウンドにやってきた。


「これから実践学習を始めます。初めて行うアルさんもいるので再度説明します。この授業では、二人一組になり一対一を想定とした実際に戦闘を行うものとなります。我が校は卒業後に即戦力になれるようにある程度の怪我はやむなしとします。もし、怪我をしても専用ポーションを使用して次の授業に支障が出ないように即座に治療を行うので安心してください。また、戦闘規則として気絶する、負けを宣言する、教師が止めた場合はそれに従い速やかに戦闘を中止してください。スキルの使用も許可しますが、武器については真剣等は使用せず用意された木剣等の危険性の少ないものは使用できます」


ゴクリ。

これは想像以上の授業になりそうだな。

前の世界じゃあ怪我してオッケーなんて授業ないもん。


てか、二人一組って言ったか?

どうするかな。

今の避けられてるオレと組んでくれる人はいるかな…。



「アルさん、安心してください。今日は初日でアルさんの実力がわからないので先生が相手をします」


あ、シューカ先生のその言い方だとそれぞれ実力に合わせて相手を選ぶ感じになるってことか。

お互いの実力が拮抗している相手とやる方がいいもんね。



「すみません。少々遅れました」


諸悪の根源、セドル学年主任がやってきた。


「それじゃあ、始めてもらいましょう。イリー君とディエン君の実践までシューカ先生と私で手分けして見ましょうか。」


「はい。あ、しかしアルさんは今回初めての授業ですので私と行う予定なのですが」


「ふむ、それでは貴女達を最後にしてイリー君とディエン君の実践はその前としましょうか」



えぇぇ。

オレ、最後なの?

また皆に注目されちゃうじゃん。できるだけ魔闘演舞だっけ?それまで注目されないようにしたかったんだけど。


あれ?ちょっと待てよ。

なんか朝、セドル学年主任が一年は魔闘演舞に出れないとかなんとか言ってなかったっけ?

四聖賢に推薦がどうとか。


詳しくは思い出せないから後でシューカ先生に聞きに行こうかな。




「早くこの野郎をぶっ飛ばしてやりてぇってのに最初じゃねーのかよ!」




あーあ、やっぱり騒いでる。



イリーの事はさておき、既に始まっている実践学習を見ていこう。

シューカ先生とセドル学年主任の二つのグループがある程度の間を空けて行われている。

戦っている生徒たちも流石に魔力専校に入学しただけあって、そこら辺の力自慢とかとは比較できないほど強い。

ある意味オレなんてチートみたいなもんだし、元々この世界で生まれ育っていたらこの生徒たちみたいになれてはいなかっただろう。

一つ一つの動きからスキルの使い方にしても才能の片鱗と地道な努力が感じられる。

男女関係なく戦っているこの光景は前の世界じゃ考えられない。



とか考えているうちに、授業はどんどん進んでいきイリーとディエン君の出番がやってきた。



「あー、やっと雑魚どもが終わったか」

右肩をぐるぐる回しながら前に出てくるイリー。


「悪いが直ぐにその口を閉じさせてやろう」

対して、静かにゆっくり歩いていくディエン君。


「ふん。やってみやがれクソ野郎!」


「両者話はそれくらいにして始めるぞ」


「「はい」」

返事とともにお互い構える。


「それでは、始め!」


「死ねぇ!雷撃ぃ!!」

セドル学年主任の合図から始めに仕掛けたのはイリー。

両手を前にバチバチと雷のようなスキルを放つ。


「ロックウォール!」

対してディエン君は右手を地に向けスキルを発動する。

瞬時に眼前の地面がもり上がり大きな岩を成形する。


ドコンという音とともにイリーの放った雷撃が成形した岩に衝突し霧散する。


「実にセオリーどおりの対処法だな」

うむうむと頷きながら納得しているセドル学年主任。


セオリーどおりって?


「ええ。雷にはアースを、電気を大地に逃して威力を失くす。良い対応です」

シューカ先生が説明してくれた。

オレも知ったかして頷いておく。


「防御ばっかかぁ!クソ野郎!!オラァ雷撃ぃ!!」


「イリー!お前もそれしか脳がないのか!」


イリーの雷撃をロックウォールで次々に防いでいく。


「キリがねぇ、だったらこいつはどうだ!イカズチ・マトイ!」

スキル名どおり身体中に雷を纏い深く地に伏せて攻撃準備を始める。


「くっ!まずい!ロックウォール三連!!」

イリーとの間にロックウォールを縦に三つ成形する。


刹那、イリーの踏み込みと同時に成形された三つのロックウォールが砕け散った。


「それじゃあマトイ状態のオレの攻撃は防げねぇ!」


「いや、それでいいんだ!」


「何!?」


砕けた岩の先には風を纏い、深く腰を落として右拳を握り締めニヤリと笑うディエン君の姿があった。


「蹴りを放ったその態勢では避けられないぞ!センプウ・マトイ・一点撃!!」


身体に纏う風を右拳に集中させ放つ。

イリーのまっすぐ放たれた右足の蹴りに対して腹部を狙ったフック気味のパンチ。


「終わりでしょうかね?」

セドル学年主任の言葉に全員が勝負の最後を思った。


が、


「ぎぃいいいいい!!!!」

纏わせた雷をバチバチと鳴らし、蹴り脚とは逆の脚で反動をつけその場で錐揉み回転をする。

腹部に放たれたパンチを左膝で跳ね上げる。


「バカな!うっ!」

イリーのまさかの行動に自信に満ちた笑みは驚愕へと変わっていた。


攻撃した勢いに任せ、両者地を足で抉りながら6Mほど飛ばされる。



驚いた。

イリーの奴、言うだっけあって強かったんだな。

どう言う訳か威圧感はあまり感じなかったけど。



「くそっ!あんだけあった魔力も残りすくねぇ…。次でぶっ飛ばす!!!」


「どうやら、状況は互いに一緒らしいな…」


両者、肩で息をつくほどに消耗している。


「「マトイ!!!」」


最後の魔力を振り絞りイリーは雷、ディエン君は風を纏う。


「「終撃!!!」」


互いに右の拳に魔力を貯める。


雷鼓ライコ!!!」 「疾空しっくう!!!」


放たれた巨大な雷と嵐の魔力の塊が衝突する。



うわっ!すごい衝撃だ!

どちらの攻撃もまともにくらったら一撃で戦闘不能だろう。


「「ぐぐぐぐぐっ!!!」」


ゴゴゴゴと地鳴りを響かせながらぶつかり続ける技と技。


しかし、数秒後に事故が起こる。



「「!?」」



「何が起きてっ!?」

「逃げろ!!」



イリーは現状に疑問を、ディエン君は必死にオレに叫んでいる。



イリーとディエン君両者共に今まで押し返そうとし相手方向に向けていた魔力のベクトルが、突如として不意に全く関係のない方向へと変わった。




そう、オレの方へ。







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