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第一章 二十四話 『転入④』

「い、いや。出ろと言われましても私、目立ってはいけないって…」


「構わん。出ろ」


有無を言わせない物言いだ。

全く引かない。


「秘宝の事とあってはねぇ…。ベルガ君は引かないよ?」


トルフェイさんに救いの眼差しを向けてみたが全く状況は変わらず。


「…。お父様はなぜそんなにも秘宝を求めているのですか?」


そういえば聞いていなかったと思って尋ねてみた。


「ふむ。立ち話はなんだ、馬車に入れ」


促され言葉に従う。


車内に入ってお父様とトルフェイさんの対面に座るとすぐさま結界を張り、お父様からベルガドルムに戻る。


「貴様も肩の力を抜け。娘としてではなく、アルクとして話す」


「わかった」


「知っての通りだが、私は秘宝を収集している。正直なところ今の貴様の状況では理由は言えない」


言えないんかい!


「まぁ、大まかに言ってしまえば黒徒関連とだけは言っておこう。」


「授業で聞くことになるかもしれないけど、十年前の事件『ペレラ島邪龍襲撃』きっかけ。と、までは言ってもいいんじゃ無いかい?ベルガ君」


「…チッ。まぁ、時間の問題か…」


ペレラ島?

以前、屋敷での勉強中この世界ゼルゲッテンの世界地図を見たけどそんな島は載っていなかった。


しかも邪龍襲撃って。

ベルガドルムの事なんだろうか?


「とりあえず言える内容はここまでかな。そろそろ私たちは屋敷に戻るよ。それと、アルク君。この先君の力が必ず必要になってくる。その時までしっかり励んでね!ベルガ君と共に応援してるよ」


オレの肩を叩いて馬車の扉を開けてくれるトルフェイさん。

と同時に周囲の結界を解いてベルガドルムはお父様に戻る。


あ、フィーレちゃんが寮から出て来た。

荷下ろししてくれていたんだろう。


「あれ?なんでうちの馬車が二台も…?」


そりゃそうだ。

トルフェイさんとフィーレちゃんが乗って来たのと別に、お父様がなぜかやってきた時の馬車があったからだ。


ちょっと待て。

大事な事聞いてないじゃん!


「お父様!そういえば、なんでここに?」


「ああ。そうだったな。これを渡し忘れていた」


リュック程の大きさの袋を取り出すと私に手渡す。


重っ!

何入ってんの?これ。


「これは?」


「入学祝いだ。餞別として持っておけ」


「入学祝い?」


「中に1000ゴールドレルが入っている。友人との付き合いで使えばいい」


!!


おいおい。

1ゴールドレルが前の世界で換算すると1万円だ。


い、1000万円じゃん…。

友達との付き合いで使う金額じゃないんだけど。


「貴族の者も多く居る。そんな奴らと付き合っていけばその程度三年もあれば底が尽きるだろう。無くなれば連絡を寄越せ。工面してやる」


「お前も少し貴族社会というものも勉強してくると良い。その時が来るかは分からんが、何かと役に立つだろう」


簡単に言ってるけどさぁ。


「わ、わかりました。とりあえず、私一人では重くて寮内に運べませんのでフィーレちゃん一緒にお願いします」


「は、はい!やっぱり伯爵家ともなるとお祝い金も凄いんですね!」


いやぁ。

そんな目でオレを見られても…。


オレだって、凄いんですね。伯爵家。って感じだもの。


「それじゃあな。屋敷に戻る」


「はい。お気をつけて」




「出ろよ」




行っちゃった。

それも最後に念を押されて。



仕方がないか。

ここまでして貰ってるんだもん。大会の一つや二つ出てやるよ!

しかも、どうせ出るんだったら優勝目指す!


…目指すだけね。目指すだけ。





そこには、偶然通りがかった四人の魔力専校生が居た。


「あの馬車の龍の家紋。ガル・シアン伯爵家のものじゃないか?なぜこんなところに?」


どこか身の覚えのある顔立ちをしている魔力専校の制服に身を包んだ青年が問う。


「あら、貴方聞いてませんの?ルムード伯爵様の娘が転入するらしいですわ」


緩やかなカーブのかかったロングヘアを靡かせた少女が問いに返す。


「へぇ〜。」


低めの身長で眠そうな表情の少年は興味が無さそうに明後日の方を見ながら返事をする。


「貴殿はどうも周りに関心が無いのでござるなぁ。ところで、娘殿がいたとは初耳でござるな」


長い灰色の髪の毛を後ろで一本に結んでいる一見青年か少女か分からない生徒が尋ねる。


「僕も」「わたくしも」「ふ〜ん?」


「誰も存じ上げていないようでござるなぁ」


「しかし、噂によるとガル・シアン伯爵令嬢はかなり実力があるらしいですわ」


「ほう?誰情報だい?」


「お父様ですわ」


「フェン・ターク宰相殿が言っているんであれば間違いは無さそうだ。」


「しかも、ガル・シアン伯爵様だってかなりの武闘派でござる。娘殿が強くてもおかしくはござらんな!」


「これは一度会って、手合わせ願いたいね。」


「はぁ…。いくら実力があるといっても伯爵令嬢ですわよ?」


「君だって似たようなもんじゃないか。それでも魔闘演舞で僕といい勝負してたでしょ?」


「いけませんわ!わたくし達は四聖賢。個人的な決闘を認めていない我が校のルールを破ることはあってはならないのですわ!」


「わかってるさ!誰も直ぐにとは言っていないじゃないか」


「いやぁ。顔に書いてあったでござるよ?」


「…。今年の魔闘演舞まで待つさ。とはいえ、僕と当たるかは分からないけど」


「まったく。お手並み拝見したいのはわたくしも一緒ですのよ」


「拙者も」


「おれもー」




「「「「…。」」」」




四人の間で目には見えない謎の稲妻がバチバチと音を立てていた頃。

無事にトルフェイとフィーレも馬車に乗って寮を立ち、アルも寮内に踏み込んだのだった。





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