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第一章 二十二話 『転入②』

「じゃあ、行ってきます」


「行ってらっしゃいませ。お嬢様」


「行ってらっしゃいませ!」


お嬢様はどこか上の空のまま馬車から降りて校舎に向かった。

初めての学校生活に思うところがあるのだろう。


「緊張なされてましたね」


フィーレも感じ取っていた様だ。


「ええ。ですがお嬢様はああ見えて肝が据わってらっしゃる。大丈夫でしょう」


「そうですね!お嬢様は出来る子ですもん!」


両手を顔の前に握りしめて話すフィーレ。

その後、校舎の方をしばらく眺めていた。


歳もほとんどお嬢様と変わらない。

本来であれば“ここ“ではないにしろ、どこかの学校へ入学して学生生活を送っていたかもしれない。

十年前の黒徒による事件が無かったならば。




「それでは、フィーレはこの後寮へ行って荷解きをお願いします。私は馬車の見張りをしておきます」


「ええぇ!この大荷物運ぶんですかぁ?」


「仕方がないでしょう。私は男性。女子寮なんて入れませんからね。馬車からは降ろしますから」


「はぁ。こんな事ならお姉ちゃんも連れて来れればよかったのにぃ〜」


「ティーマも忙しいんですよ。ほら、時間が勿体無い。行きますよ」


「は〜い」


項垂れながらもお嬢様の為だと気合を入れ直す。

私も頑張らなくてはいけないな。

これから始まるであろう大きな出来事に対して。




「アルさん?どうしましたか?」


担任だと自己紹介していた黒髪、黒い瞳の少女がオレの顔を覗き込んできた。

オレの身長自体低めなんだけどこの魔法少女は五センチくらい更に低めだ。


こんな直ぐに会うことになるなんてな。

でも、勇者一行はレリグシアの都に向かうって言ってたもんな。

会ってもおかしくは無いか。


「アルさん?体調優れませんか?保健室行きます?」


ずい、とその整った顔を寄せてくる。


ま、待て。

オレ自身の身体には慣れたけど、他の女の子に近寄られると緊張するって!


「顔赤いですよ!熱あるんじゃ…」


「待ってください!違いますから!大丈夫ですから!!」


相手の肩を持って引き離した。


「そうですか?それならいいんですけど…」


「それよりも、先日は危ないところをありがとうございました」


この間は助けて貰ったけど礼を言えて無かったから改めて言っておかなければ。


「? 危ないところ?」


「お、覚えてませんか?」


え?

どういうこと?

人差し指を顎に当てて頭を傾げている。

本当に覚えてないんだろうか。


「あぁ…」


あ、思い出したかな?


「それって多分、勇者フェイン君と一緒に居た子でしょう?」


…何だか他人事だなぁ。


「そうですね…」


「ふふ。似てるって言われるんですよねぇ。私と娘が!」




あん?


なんて言った?


「い、今娘って…」


「ええ!では、改めて。私はアルさんの組の担任シューカと申します。よろしくお願いしますね。それと娘のラフィーネアがお世話になったようで失礼なかった?」


「…。はい、よろしくお願いしますぅ…」


この子が母親…。


ほんと、どうなってんの?


この世界…。





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