第一章 二十話 『黒徒』
「黒徒とは何なんですか?」
「そうだね。アルク君はわからないよね。じゃあ私から説明させていただこうかな」
オレの質問にトルフェイさんが答えてくれるらしい。
「ええ。お願い致します」
「まず、黒徒と言うのは正式名称では無いんだ。私達が彼らの事をそう呼んでいるだけ。私達もわからない。ただ、一度対峙した際に全員が黒い外套を身につけていたんだよ」
彼らという事は、どうやら黒徒というのは複数人居るグループみたいだ。
「なるほど。だから黒い使徒という意味で黒徒という訳なんですね」
「そういう事だね。そして彼らは恐るべきスキルを使用するんだ」
「恐るべきスキル…?」
「詳しいことはわからないが、そのスキルというのは…」
「先刻、貴様らも目にしただろう。黒く澱んだオーラのことを」
——!!
ベルガドルムがオレとトルフェイさんとの会話に挟んできた。
「そう。朝の盗賊の大柄の男が発していたものさ」
確かに突然あのオーラを発し始めてから劇的に変わった。
攻撃力もスピードも。
あれも身体強化系のスキルだったということなのかな?
「となると、あの盗賊の大柄の男は、その黒徒ということですか?」
「いや、恐らくないな」
変わってベルガドルムが答える。
え、違うの?
「ああ。先程言った黒徒が使用するスキルというのは、他の者を操るスキルだ。ヤツは黒徒に操られていただけだろう。彼奴らは中々姿を現す事はまず無いからな」
なるほどな。
そっち系統のスキルか。
「そもそも、その黒徒という者達の目的とは何なんですか?」
「目的も謎なんだよ。私達も未だに掴めていないんだ。十年追っているっていうのにね」
ちら、とベルガドルムに目配せをするトルフェイさん。
何だろうか。
「事の発端は、十年前に起きたとある災害時のことだったんだ。そこには私、兄アーダンテそしてベルガ君も居た。見たんだよ、私達三人はその災害を黒徒が招く瞬間を、ね。悲惨で残忍な出来事だったよ」
……。
話をしていたトルフェイさんの表情は暗く苦しそうだったが、どこか怒りにも似た感情が感じとれた。
ベルガドルムは静かに目を閉じトルフェイさんの話を聞いていた。
「まぁ、とりあえずこの災害については魔力専校の授業で詳しく聞くだろうし、追々話をしようか」
にこやかにオレに気遣って話すトルフェイさんは少し痛々しく思えた。
「ある程度の説明が出来たところですし、本題の黒徒の不審な動きについて話しますね」
一息ついた後、ヴィアナさんが本題に入る。
「そうだな。報告を聞こう」
「では、一昨日のことですが、本日アルク様が戦闘した盗賊のように黒いオーラを纏った者がガルナーデにも五体程現れました」
ガルナーデにも出たんだ。
しかも五体って…。
でも、龍族だから戦闘力的にはオレ達よりも全然あるし問題は無かったんだろう。
「「…」」
また、ベルガドルムとトルフェイさんは目を合わせる。
「幸いな事にバルグリアズ殿下とリンドナルク王女殿下が対戦。その後、一体を残し殲滅。その一体は研究施設送りになりました」
「王女殿下も出陣したのか、流石にやり過ぎじゃないか?」
「王女殿下曰く、最高戦力でチャチャっと終わらした方がいいだろ?それに私も少しは運動しないと肥えちまう。だそうです」
「王女殿下らしいな。そんな事より、このタイミングでガルナーデにも出て来たということはやはり狙いは…」
「これは、ベルガ君を追っているね」
ベルガドルムを追っているって、まさか…!
ベルガドルムとトルフェイさん、ヴィアナさん三人と目が合う。
「真の目的は私…?」
「「「だろうな(だろうね)(はい)」」」
ぐはぁ…。
やっぱりオレなのね。
「まだ貴様がアルクとバレていない内に、魔力専校に行ってもらう事にして正解だったようだな。ある程度カモフラージュできる」
…。
ん?
なにこの間。
ベルガドルム以外の二人がちょっとニヤついてる…?
「ベルガ君〜。君の本心はそれだけじゃないでしょ〜?」
なんだなんだ?
トルフェイさんが見た事ない顔でベルガドルムを煽ってる。
「黙れ。焼くぞ」
うわっ、直球だよ。
でもなんか言われたトルフェイさんは嬉しそうな顔してる。
見ていると、オレの隣にヴィアナさんが寄ってきた。
何だろう。
「…お兄様は、アルク様を大事になさっているっていう事ですよ。フフフ」
「えぇ?」
「あら?意外に鈍感なんですね?」
「な、何ですか?」
少し煽られた気がしてムッとした。
ヴィアナさんは、オレのムッとした表情に負けずさらにニヤニヤしながら話を進める。
「恐らく今の状況であれば、黒徒に攻撃対象となるのは、アルク様を所持しているお兄様が最優先されるでしょう。その場に貴方様が居なければ一番安心できるのは誰でしょうか?」
「…ベルガドルム…かな」
「そういう事ですよ〜」
な、なんか身体中むず痒くなって来た…。
あ。
ベルガドルムがオレ達三人に向かって魔力の塊を放って来た。
これ、オレ死んじゃうよ?
———どがぁああああん。
目を開けたら、オレ以外の二人は床に焦げて倒れていた。
けど、オレは何とも無い。
オレには薄い結界の様な物が張られていた。
多分、これはベルガドルムが張ったんだろう。
身体の痒さが増した気がした。
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