第一章 十一話 『おでかけ②』
あれから、買い物を済ませ帰りの馬車に乗っている。
もう夕方だ。屋敷に戻る頃には完全に日が落ちているだろう。
オレの隣にはルムードが座っており背もたれに背中を預け眠っている。
正面には山積みの荷物に囲まれたティーマさんがやたら艶やかで達成感のある顔でこちらを見つめている。
多分オレの表情はティーマさんとは正反対だろう。
正直今日はもう何もしたくない程無気力だし、現実を目の当たりにしてしまった衝撃なのか頭が働かない。
単純に先程までのティーマさんとの攻防(?)で体力を使い果たしたのかも知れないが…。
時を遡ること数時間前。
「さぁさぁ、お嬢様!お召し物を購入しに行きましょう!!」
なんかこの人、目が血走ってるんだが…。
こ、こえーぞ。ちょっと。
「あ、その前に今その外套の下には何を着ていらっしゃるんですか?」
げ!
まずい!裸なんですけど!!
バレたら痴女だと思われちゃうんじゃ…。
頑なに外套の前部分を両手で握りしめる。
「?」
オレの反応に疑問を抱くティーマさん。
「そんな恥ずかしがらずに。ルムード様の養子として屋敷に迎えられる訳ですから、これから私達メイドが着替えを手伝う事になるんです。今から慣れちゃいましょう!それに!サイズが分からなければ買うものも買えません。今計っちゃいましょう!あっ旦那様は一度馬車から降りて頂きたいのですが?」
すごい早口だ。
確かにこれからは王国貴族の娘なんだからそうなる事はわかるんだけど、そぉーじゃないんだ!
ティーマさん!
おい!父上どの!!見てないで助けてくれ〜
ガチャリと何も言わず馬車から降りるルムード。
終わった。助けはないようだ。
「ふふふ。これで女性二人気兼ねなく脱げますね♪」
い、言い方…。
「手をどけてくださいお嬢様」
両手の指をワキワキと異様にくねらせながらにじり寄ってくる。
これは、もうこちらから白状しちゃう方が良いのかも知れない。
うん、それが最善策だろう。
「あ、あの。実は今…」
話しかけた途端ピタリとティーマさんの動きが止まる。
「どうしました?」
体勢そのままに笑顔で聞き返してくる。
「外套の中、何も着てなくて…」
一瞬の静寂がオレ達の間に訪れた。
「「….。」」
バサァ!!
「!?」
ティーマさんは何も言わず無表情のままオレの外套を脱がした。
あまりの速さに反応できず為すがままのオレ。
見てる。
変わってしまったオレの体を。
オレですら全部把握した訳じゃないのに。
それも、年上であろう女性に。
恥ずかしさに体が熱くなると共に涙が込み上げて来てしまう。
くそっ!なんでこんな目に!
恥ずかしいからなんとか声を出して体を隠したいのに、緊張状態なのかうまく体が動かせない…。
「…や…ぁ」
なんだそれ!!
絞り出して出した声がこれか!
余計恥ずかしいぞ!!
目を瞑って局部を隠すように体を丸くする。
オレはしばらく動かないでいたがティーマさんから何も反応がない。
どうした?
ゆっくり目を開けるとそこには、両鼻から血を流し瞳孔が開き切った様な目でオレを見ているティーマさんが居た。
….パチンッ!
….やべ。なんか反射的に手が出ちゃった。
目を開けた先にあった光景に脳が追いついた瞬間だった。
恥ずかしさと、怖さについつい出てしまった。
悪気は一切ないがやりすぎてしまったかも知れない。
しかも相手は女性だ。
やってしまった事に少し後悔しているとティーマさんに意識が戻る。
「申し訳ありません、お嬢様。私としたことがお恥ずかしい姿をお見せしてしまいました」
左の頬に赤い手形がついている顔を下げ謝るティーマさん。
「こちらこそ…。その…ほっぺ、大丈夫ですか?」
「ええ。大したことありません。それに、美少女の平手打ちなんてご褒美ですから」
なんて訳のわからない事を言いながら、オレに外套を渡してくれる。
最初の知的な女性像はどこ行っちゃったんだ。
「どうやらお嬢様には色々な背景がお有りの様ですが、それを聞くのは野暮というものでしょう。これから、お嬢様のお体のサイズを測定しましたら私一人でとりあえずお出かけになれる程度のお召し物を買って来ます。少しの間、馬車内で旦那様とお待ちくださいませ」
良かった。
外套だけで買い物に行く訳じゃないようだ。
さっきのがあるから測定がちょっと怖いけど。
少し時が経ちティーマさんが馬車に戻ってきた。
買ってきた服に着替えるという事でまたルムードを馬車から追い出す。
さて、ここからが本番だ。
上下セットの下着一着と空色を基調に肩と袖に白いフリルが付いているワンピース一着が用意されている。
どこがお出かけになれる程度の服なんだ。
めっちゃ高そうだぞ!
「では、お嬢様。お召し物を着させて頂きます。半年後に魔力専校にご入学なさる予定でしたので、いずれはお一人でもお着替えできるように頑張りましょうね」
オレの表情でなんとなくこういう服を着るのに慣れてないと思われたようだ。
そんなこんなで、オドオドしているオレをよそに笑顔のティーマさんから着せてもらった。
まぁ、あとはみんなの察しの通り下半身のスースーしてる感じが心許なさを演出しているが、これしか着るものが無いのでしょうがない。
「では、準備も完了した事ですしショッピングに行きましょうか、お嬢様♪」
一難去ってまた一難ですか…。
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