Life 13 A New Home 新しい住処
新居探し
僕たちは、僕の部屋に引っ越してくる「彼女」(僕と同い年の本来の彼女)と「娘」(タイムスリップしてきた彼女)と3人で暮らすため、新しい住まいを探すことになりました。僕の意見も聞き入れられ、寝室とダイニングで顔を合わせられる間取り、収納の多さ、そして僕の要望である書斎スペース、女子2人の要望である女子部屋などを考慮して、物件を探します。
結果的に、2DKで、寝室とダイニングが広く、念願のお風呂とトイレが別になった部屋に決まりました。今の住まいから近く、引っ越しも楽そうです。
3人での共同生活への不安
引っ越し先は個室がない間取りのため、僕は「2人になりたい時や、1人になりたい時にどうするのか」と不安を感じます。しかし、娘は「3人の誰かが裏切り行為を行うってやつ?」と茶化し、彼女は「誰も欠けちゃダメなんです」と僕の不安を一蹴します。
僕は、それでも納得がいかない様子でしたが、娘は「邪魔するほど野暮じゃない」と、彼女は「二人があまりに自然にしてて、入っていくような空気じゃなかった」と、それぞれが僕らの関係を気遣っていたことを知ります。
決意を新たにする僕
僕たちは、互いを思いやりながら、3人での共同生活をスタートさせることを決意します。娘は「おねえちゃんばかりかまってたら、私、嫉妬で泣いちゃうかも」と僕に甘え、彼女も「甘え方はあなたのほうが知ってるから、真似しちゃうよ」と笑います。
僕は、これから始まる新しい生活が、少しでも幸せになるよう、取り越し苦労にならないようにしたいと願います。そして、娘から「おねえちゃんと私、本当はどっちのほうが良かった?」と聞かれ、答えに詰まるのでした。
昨日したことはさておき、今日は今日でしたいことがある。
合鍵で入ってきて起こされたときに、色々な罪悪感とも戦ったけど、そのあと僕をのけものにして、二人でキャッキャウフフしてたところを見ると、特に怒っているわけでもないみたい。
まあ、これで感謝されても、それはそれで僕はやり場のない想いみたいなものが残ってしまう。
問題としては、一線を超えてしまったことで、生活の変化みたいなものが起こるかもしれないところだけど、まあ、娘のことだから、よりベタベタしてくるんだろうなと。
嬉しい反面、流石におじさんにベタベタする若い女の子というのもどうなんだろうかと。いかん、そういうこと考えるなって言われてるな。
前置きは長くなったけど、あのあと、寝ぼける時間もくれず、今日は不動産屋の紹介で、3人で暮らす部屋探しをするらしい。
僕は自分の部屋で良かったんだけど、二人に却下されてしまった。娘曰く、「おねえちゃんをあんなところで生活させるのは流石に犯罪だよ」って言われた。
彼女は彼女で、やっぱり部屋が手狭じゃないかと。こっちは真っ当な意見。流石に僕のお嫁さん。生活ってのがなんだかよくわかってる。
でだ、三人で意見は揃えておこうってことになった結果、こうなった。
・生活圏は変えない(僕の意見)
・寝室とダイニングで顔が揃えられるようにする(三人の意見)
・収納多め(これも三人の意見)
・女子部屋がほしい(女子勢の意見)
・書斎スペース(僕の意見)
まあ、どっかを妥協することになるとは思うけど、僕の意見が無視されるのだろう。
あ、あと万年こたつは設置決定。昔から提唱してるけど、人間は四季を感じながらこたつに入るのがベストだと思っている。
まあ、冗談はさておき、キッチンテーブルよりはこたつのほうが、生活感がある。想い出もいっぱいあるし、こたつにはもう少し頑張ってもらおう。さすがに、掛け布団は新しくしよう。
それと、ベッドはキングサイズで3人で寝るってことらしい。流石に狭くない?って思ったんだけど、たまに布団1枚で二人で寝ていたということを考えたら広いでしょって彼女に言われた。
彼女は彼女で、家にいるときぐらい、3人で過ごす時間を極力長くしたいとのことだった。言いたいことはわかるんだけどね。
不動産屋さんには無茶を言って色々内覧させてもらったけど、そんなもの見つかるわけがないのである。
じゃあどうなったかというと、2DKで、寝室が八畳、ダイニングが横に長い十畳、キッチンが二畳と少し狭い、そして待望の風呂、トイレ別である。
これで、入る方も、入られる方も恥ずかしかったユニットバスから卒業だ。
いや、うちの女子勢は、何度も見られてる裸なんだから別にいいと実にドライな回答なのだが、僕のほうが恥ずかしいのである。
収納がそれほど多くないが、そこはキングサイズのベッドの下と、寝室に二畳ぐらいの押入れがあるので、それでなんとか入ると思う。
よかった。これで僕のフィギュア棚とか、無駄に豪華な5chオーディオとかは怒られずに済む。
ちなみに今の住まいからは約10分。同じ町内なのだから、引っ越しもなんとかなるだろう。業者が入ってもそれほどかからないと思いたい。(予算20万)
引っ越しは来月の頭にするらしい。先に彼女が入居し、荷物をまとめて僕らがあとに入居。
それにしても、本当に個人の部屋がなくても大丈夫かなあと思ってたりする。二人だったら問題なかった気がしてしょうがないんだよ。
「え、そんな心配してたの?」
チョコクロワッサンを頬張りながら、娘はあっけらかんと答えた。
「それって、3人の誰かが裏切り行為を行うってやつ?そんなこと考えてたんだ。」
「そうじゃないんだよ。いい、当然、僕らの関係がわかれば、二人でいたいときだってあるよね。」
僕は彼女に熱弁を振るう。
「そういうとき、流石にダイニングに一人きりというのもちょっとさみしくない?だったら、個人部屋があったほうがいいと思ったんだよ。」
「そんなの、場所なだけで、結局一人なのは変わらないよ?大丈夫だって。」
「その前に、3人一緒に生活するんです。誰も欠けちゃ駄目なんです。だからそんな心配しなくていいんです。」
これが空間オーディオというやつなのか。微妙な声の高低はあれど、ほぼ同じ声。
周りのお客さんが二度見するであろう瓜二つの女性から発せられるそれ。慣れてるといえど、説得力がより強くなっている。
「うーん。」
納得がいかないような顔をしてる僕に、娘が何かを察したのか、
「ああ、そういうことね。流石にそういうときに邪魔するほど野暮じゃないですよ私。」
と、気づいた彼女。
「いっその事、それも三人でいいじゃない。ほらほら、両手に花、世間一般的には親子丼って言うんだっけ。」
「あのなあ、あんまり公衆の面前で恥ずかしい言葉を並べないでよ。仮にも中年ですよ僕ら。」
「どうせおばさんだって言いたいんでしょ。知ってるよ。彼女のほうが肌のハリもいいし、良かったんでしょ?」
「いや、だからさぁ。」
周りに対して、僕は小さく一礼をする。
「それもそうだけど、君たちだって二人で話したいとか、あるいは一人でいたいって思うときがあると思うんだよね。」
「オトーサンもそういうことあったの?ここ数年ずっと一緒に暮らしてたけど、そういうときはどうしてたの?」
顔をしかめる。うーん、そう言われてみると、どうしてたんだっけかな。
「ほら、浮かばないってことは、そういうことが起きることは少ないってこと。それに、」
「それに?」
「単に羨ましかったんだもん。あなた達はもうずっといっしょに暮らしてるけど、私はそこに入っていく方だから、楽しみにしてていいでしょ。」
「え、おねえちゃんの本音ってそれ?別にあの汚い部屋でも入ってきてて良かったのに。」
彼女は耳まで真っ赤。そんなに恥ずかしいことじゃないでしょうに。
「いや、なんか、二人があまりに自然にしてて、とても入っていくような空気じゃなかったりしたものでして。」
「ちょっと遠慮してたんだ。やっぱり大人だね。」
娘が彼女によしよししてる。目立つからやめてほしい反面、こういう風景を眺める生活も悪くないんだろうなって。
「わかった。そうだね。もともと腹はくくってたけど、覚悟は決まった。いつも3人でいよう。」
「「うん」」
「でも、おねえちゃんばかりかまってたら、私、嫉妬で泣いちゃうかも。」
「それは私も同じ。今のところ、甘え方はあなたのほうが知ってるから、真似しちゃうよ。」
相手を思いやる生活というものは楽ではないと思う。今までは娘だけで良かったから、なんとかなっていたものだと思うけど。
もう一人のあなた。彼女が入って、毎日が少しでも幸せになったら、僕はそれでいいんだよね。まあ、取り越し苦労になるかな。
「ところで、同一人物ですからそこまで体の作りは変わらないと思うんですけど、」
「おねえちゃんと私、本当はどっちのほうが良かった?そこは正直でいいんだぞ。」
...わからないっての。ふたりとも、すごく思いが伝わってくるから、それだけで十分なのにね。
今日はこの辺で。




