オープニング1
「王族との間に深いキズのある種族の娘が一族のあかし(ルール)を破り王と永遠の愛の誓いを結んだとき、王国には大きな」
占い師の老婆は、それ以上何も言わず息絶えた。
その手には真っ黒な石が握られていた。
だが、50年以上前に王に告げられたこの言葉はまだ、王族を縛っている。
カイ・・・王の息子の一人。12歳。
ぺパ・・・カイの妹。10歳。
「王族は15歳になるまで城の外に出てはいけない。」
カイは読んでいた本を閉じてつぶやいた。
今からちょうど55年前、占い師の老婆が王に告げた言葉によってこの決まり(ルール)ができた。
破ったものは厳しく罰せられるという。
カイは何度も、母になぜこんな決まり(ルール)があるか尋ねたが、母の答えはいつも決まって
”この王国を守るため”だった。
父にも一度不満をこぼしたことがある。
でも、父には
「これは55年前に私の父が決めた絶対的なルールだ!
お前は城の外に出なければいいだけだ
これ以上聞くな」
そういわれてしまったのだった。
城では、欲しいものが何でも買ってもらえるけれど、カイはつまらなかった。
少しでも城の外に出て外はどんな感じなのか知りたかった。
でも、それはカイがどれだけ願ってもかなわなかった。
窓から外をのぞいても、決まって大きな草一つ生えていない中庭が見えるだけ。
しかも奇妙なことに、この城には、王族以外の女性がいないのだった。
だから、カイはぺパしか女性を知らなかった。
カイは15歳になるのを待てなかった。