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婚約破棄と解消と保留、そしてする予定はありませんけど?  作者: みのみさ
第二部 婚約するのも大変です

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エリゼーヌの最初の縁談4

 ユベールは泣き叫ぶ従姉妹を眺めていい気味だ、とほくそ笑んだ。


 3歳になってから預けられるようになったエリゼーヌはきゃらきゃらとよく笑う子供だった。ミルボー家では愛想のよい人懐っこい幼児をたちまち気に入り、それまで可愛がられていたユベールを脅かす存在となった。

 ユベールは姉のイレーヌと7歳も歳が離れていたし、マドレーヌ似の美貌で誰もにチヤホヤされていたのに、従姉妹が来てからは人気者の座を奪われてしまい面白くなかった。

 むかっとして赤毛をひっぱって泣かせてやった。勝ったと思ったのはほんの一瞬でユベールは家族中から非難された。


「酷いわ、ユベール」

「まあ、こんな小さな子供を泣かせるなんて・・・」

「エリゼーヌはお前の従姉妹だ。もっと優しくしてやれないのか?」

「エリゼーヌは可哀想な子供なのよ? マドレーヌの身体が弱いばかりにこんなに小さいのに預けられて」

「お前は騎士になりたがっていたが、子供を泣かせる騎士なんていないぞ? 本当に騎士になりたいのか?」

 姉に両親に祖父母と、家族から初めて叱責されたユベールは憤った。

 昔から発育のよかったユベールと標準的に育っているエリゼーヌでは年の差は歴然としていた。泣かせれば弱い者イジメとみなされるのは当然だ。しかし、ユベールは反省などせずに怒りの矛先を元凶であるエリゼーヌに向けた。仕返ししたかったが、また直接的に攻撃すれば非難轟々は確実だった。

 ユベールは家族に隠れてエリゼーヌをイジメようとしたが、姉と母が気に入って一緒にいる事が多く、なかなかその機会は訪れない。

 せいぜいすれ違った時に嫌味を言うくらいだった。それさえも、姉の侍女に見つかって父に告げ口されて大いに叱られたが。


 マドレーヌから婚姻の打診があったと聞いてチャンスだと思った。

 婚約者になれば交流の時間がある。これまでの鬱憤を晴らせると思ったのに、よりにもよって子爵家ごときにお断りされるとか、信じられなかった。

 ユベールは幼い頃にマドレーヌからミルボー家の出自、今の王家と縁続きだと教えられた。

 ずいぶんと昔の話だから、二人だけの内緒の話だと言われて有頂天になった。

 美しい叔母の肖像画をミルボー家で見かけてからずっと憧れていたから、マドレーヌと懇意になれて嬉しかった。そして、やんごとなき尊いお方とどんなに薄くても血が繋がっているというのは、自惚れが強い子供だったユベールの自尊心を大いに満足させてくれた。


 ミルボー領の別荘地は高位貴族にも大人気で、美しい景観に物静かな環境が王都での暮らしに飽きた貴族たちに好評だった。

 伯爵夫妻はお客様のために迎賓館を建て様々な催しでもてなした。絵画や音楽鑑賞、歌劇などで作品や演者は全てミルボー領の若手芸術家たちだ。観光資源に加えて芸術家の人材がミルボー領の主な収入源で、伯爵は芸術家育成に力をいれていた。

 お客様の貴族が気に入った作品を買い求めれば芸術家の収入になり、一流と認められるのは早い。貴族は青田買いで目利きを自慢できるし、ミルボー家は領の宣伝効果が得られる。

 王都で有名になったミルボー領出身の芸術家は数多く、あの作品の舞台はこの場所だとか、あの絵画はここで描かれた、というように、作品の題材になった場所を観光名所として客を呼び寄せやすいのだ。

 だが、領地経営に興味のないユベールは単に高位貴族と交流しているとしか思っていなかった。ミルボー家は由緒正しい血筋に、高位貴族とも親しい名家なのだと思い込んで、山よりも遥かに高いプライドを変に拗らせていた。


 名門中の名門貴族(ユベール自称)の長男である自分をたかが子爵令嬢ごときが袖にするとか、両親と姉が戻る前に一泡吹かせてやる、とユベールは鼻息荒く企らんだ。


 護衛の中でも特に命令に忠実な男を選び、その男の義妹で知り合いだったアンヌを巻き込んだ。髪結い師見習いのアンヌは貴族が髪染めを忌避するとは知らなかったから、ユベールにとってはちょうどよかった。

 アンヌはユベールより5歳も年上だったが、領内で一番の美少年であるユベールに憧れていた。平民の女の子のほとんどがミルボー家の坊ちゃんと懇意になりたいと望んでいた。アンヌは最初は見習いだからムリと断ったが、再度請われると下心もあって髪染めの仕事を引き受けた。

 イレーヌお気に入りのデジレが乱入してきてユベールの企みは途中でご破算になったが、泣きじゃくる従姉妹に長年の溜飲が下がって気分は最高だ。

 デジレはすぐには再度の髪染めはできないとほざいていたが、イレーヌに知られたらデジレだって咎めがあるだろう。両親たちが戻る前日にでも命じれば染め直しするはずだと思っていたのに、邸に戻ったユベールは焦った。予定より早い帰宅で両親と姉はもうすぐ到着だと使用人に告げられたのだ。


 なんとかイレーヌを脅して、と画策する間もなく、ミルボー家の馬車が到着してしまった。

ユベールはお山の大将、井の中の蛙ですね。容姿だけでなく、性格も叔母似。だから、マドレーヌと気が合うのです。

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