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婚約破棄と解消と保留、そしてする予定はありませんけど?  作者: みのみさ
第二部 婚約するのも大変です

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エリゼーヌの最初の縁談1

エリゼーヌが9歳のお話です。

 エリゼーヌに縁談が持ちあがったのは9歳の誕生日を領地で祝ってもらった直後の事だった。

 従兄弟のユベールが相手と聞いて、エリゼーヌは内心ではイヤだな、と思った。しかし、素直にそれを言うワケにはいかない。だから、口実に祖父を持ちだした。

「お父様、おじい様からは何も言われていないわ」

「それは・・・、父上にはまだこれからで」

 イヴォンが言いづらそうに目を逸らして、エリゼーヌは呆れてしまった。


 子爵家の当主はイヴォンだが、名前だけだ。領地の運営も子爵家の実権も未だ先代・ファブリスがしっかりと握っている。

 ファブリスが当主の座を譲ったのは魔術師団勤務になる息子を思いやってのことだった。イヴォンは並の魔力で特筆すべきものではない。古語の知識を買われての魔術師団入りだ。実戦では役に立たず、他の団員から侮られるのを回避するため、当主を名乗らせて箔づけしたのだ。

 ファブリスは勝手に跡取りから降りた息子に失望してはいたが、息子が母の思い出の多い領地に帰りづらかったのはわかっていた。イヴォンの学院入学直前に馬車の事故で妻は亡くなっている。

 手紙だけの連絡が郵便配達事情のせいで届かなったのは仕方がない、と何とか己の思いと折り合いをつけたのだ。

 だが、イヴォンは妻マドレーヌの言いなりで当主らしさは期待できない。祖父が嘆いていたのを知っているエリゼーヌはじぃっと父を見つめた。


「お父様、おじい様がいいという相手でなければイヤです」

「それは、もちろんだ。父には後で知らせるよ」

「後からではおじい様がお怒りになります」

 エリゼーヌはなぜ父はこんな単純なことがわからないのかな、と不思議だった。

 祖父は息子にはもう何も期待していないが、孫娘に関しては別だ。跡取りはエリゼーヌなのだから、祖父の意見を無視するのは悪手だろう。

「・・・わかった。父には知らせるから」

 渋々とイヴォンが頷いて、エリゼーヌはほっとした。

 祖父ならば、横暴な従兄弟との婚姻に頷くワケがないと思ったのだ。


 だが、数ヶ月間領地と手紙のやり取りが続き、ファブリスが商談で領地から出るのに合わせてイヴォンも出向いて話し合い、事態は進んでしまった。ファブリスのだした条件をユベールが呑むならば、婚姻を認めると言うのだ。


 エリゼーヌはガッカリした。


 ユベールとは気が合わないというか、苦手な相手だった。

 従兄弟は騎士に憧れる活発な子供で、将来は騎士になるのだと幼い頃から剣術もどきで棒切れを振り回していた。読書と刺繍が趣味のエリゼーヌとは当然活動範囲が被らない。あまり交流はなかった。

 ミルボー伯爵はマドレーヌの体調不良で預けられるエリゼーヌ()を気の毒に思ってよくしてくれたし、夫人や長女のイレーヌも娘や妹ができたみたいだとエリゼーヌを可愛がってくれた。ただ、ユベールだけはそれが面白くなかったようで、顔を合わせる度にエリゼーヌは苛められてきた。

 何かと子爵令嬢のくせにと嘲り、『マドレーヌ()に似ていないから、子爵が愛人にでも産ませてマドレーヌの子だと偽った』とか、『叔母上は男の子を欲しがっていたのに、エリゼーヌ(女の子)だったから、お前はいらない子供なんだ』とか、酷いことを言われてきた。

 たまたま通りがかったイレーヌお付きの侍女がそれを耳にして報告したから、伯爵に大目玉を喰らってからはユベールは大人しくなったが、反省はしなかった。却って、エリゼーヌのせいで叱責されたと恨んでいるようで睨みつけられたりするから、関わらないようにしていたのに、婚姻だなんて冗談ではなかった。


 長男のユベールが婿取りを望むエリゼーヌのお相手に急浮上したのはイレーヌの婚約者のせいだった。

 イレーヌは学院内でお相手を見つけるからと婚約者がいなかったのだが、彼女が見つけた相手は10歳年上の教師だった。在学中に婚約するのは外聞が悪いので、卒業後一年猶予を設けて婚約することになった。婚約期間は一年の予定で今年で卒業のイレーヌは二年後に結婚式を挙げる。

 相手の教師は侯爵家の次男で、王家から降嫁した四女の嫁ぎ先・オベール公爵の甥だった。

 ミルボー家としてはイレーヌを嫁にだすよりもイレーヌの婿として迎え入れた方がメリットは大きい。ユベールは騎士になると公言して領地経営には興味がないから、イレーヌを跡取りにする事になった。

 それで、跡取りから外れたユベールを娘婿にとマドレーヌが望んだのだ。


 エリゼーヌは学院の冬季休暇から一週間ほど経ってから、ミルボー家へ預けられた。マドレーヌは冬に体調を崩しがちでいつもの事だ。

 学院の寮に入っているイレーヌが帰郷して家族団欒を過ごし終えた頃だとお邪魔したのだが、イレーヌと両親は婚約内定の顔合わせをしに相手の侯爵家へ出向いていて留守だった。数日後に戻る予定だと聞いて、エリゼーヌは大人しく待つ事にした。


 ファブリスが出した条件は『子爵家当主となるエリゼーヌを尊重し、支え守るために騎士団入りを諦めると誓約すること』だ。


 ファブリスは孫娘が従兄弟に苛められていると情報を得ていたから、遠回しのお断りとしてこの条件をつけてきた。さすがに格上の伯爵家相手にこちらから縁談を持ちかけておいてただでは断れないと、ファブリスはユベールが承諾できない条件をつけたのだ。

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