正解
僕は、本当は超絶的な平和主義者だ。
この世の中から、競争なんかなくなってしまえばいいと思う。
でも、人生には戦わなければならない場面が多々あるわけで。
僕らは、それぞれの立場の正義のために、戦っている。
僕も、平気な顔をしているけど、本当は震える足を叩きながら戦っている。
何が正解かなんて、きっと誰にもわからないと思うんだ。
僕らは位置について、横一列に並んでスタートを切る。
出遅れたり、転んだり、ぶつかっている人。
そんな人たちを見て、内緒で小さくガッツポーズしたりする。
やがて、一本道のその先に、海が見えてくる。
目の前には、先が見えない程の、暗く大きな海が広がっている。
僕らは、少しためらいがちに、その暗い海に飛び込んでいく。
一度海に飛び込んだら、ひとところには留まれない。
沈んで溺れてしまわないように、精一杯もがいていく。
光。
手を伸ばす。
やっとつかんだ。
そう思った瞬間だった。
手のひらの中の小さなその光は、指の間からこぼれてしまう。
指からこぼれだしたその光は、瞬く間に暗い海に吸い込まれて、やがて消えてしまうんだ。
陸に上がる。
ひざを抱えてうつむく。
風にのって、遠くの方から歓声が聞こえてくる。
今度こそ。
そして、またひとり、正解のない海を泳いでいく。