びのと覧、ステータスの開示請求をされる
「どうした? 勇者なのにステータスも見せられないのかよ?」
「えっと……」
言葉につまる僕。
いや、そもそも、この世界に来たばかりなんだから、そんなことわかるわけないじゃないか。
「ステータスですね?」
覧が訊き返す。
え? 覧、分かるの?
「そうだよ、ステータスだよ、ステータス!! 10歳の誕生日に確認するだろ?」
「もうしわけございません。ステータスに関しては、個人情報ですのでお見せするわけには……」
覧は、申し訳なさそうにお断りの申し出をする。
お、いいぞ、覧。
この調子で、話を有耶無耶にしてしまおう!
「ごちゃごちゃ言ってないで、いいから見せろよ、ステータス」
激怒する王子様。
はい、有耶無耶作戦、失敗。
どうするの覧?
僕はちらっと覧の顔を覗き込んだ。
微笑みを浮かべる覧。
「わかりました。お見せしても良いのですが、勇者びのは異国よりこの国に着いたばかり。異国でのステータスはありますが、こちらのステータスの言語表示と異なると、正確なステータスを見せることができないのでは?」
「ん? ここと異国では、表示が違うのか、大臣?」
「そのようなことは聞き及んでおりませんが……」
困惑しながら王子様の質問に応える大臣。
なんだろう、この大臣。
何かにおびえるように、おどおどしてるというか、何か違和感がある。
僕達を前にして、無理してるのかな?
「この国には、この国の言語でステータスを表示できるものはないのですか?」
「こちらで用意いたします。個人情報を気にされているようですから、魔法使いを呼ぶよりは、スクロールのほうがよろしいですかな?」
「はい、そうですね」
覧は笑顔で応えていた。
「少々お時間をください」
それだけ言い残すと、大臣はどこかへと行ってしまった。
「覧、ステータスのこと、分かったの?」
僕には全然分からなかった。
「いや、全然」
「じゃあ、どうして、ステータスのことを訊かれたとき、すらすらと応答できたの? 魔法使いとか、スクロールとか」
「ボクは、英語で訊き返して、総合的に判断しただけ。魔法使いもスクロールもよく分かってないよ」
「ん? どういうこと?」
「王様は、最初、ステータスを見せろと言った時、『お前たち』とは言わずに、『びののステータス』と『覧のステータス』と言ったことから、個人のことを訊いているのだと直感的に思った」
「うん」
さすが覧だ。質問ひとつにも抜け目がない。
もし僕たちをひとくくりにするなら、お前たちというはずだ。あの王様なら。
「だから、覧は、英語で訊き返したんだ。体力などの能力を数値化したものですかって?」
「そんなこと言ってたの?」
「ほら、この世界では、英語で話しても、びの君には日本語に聞こえるでしょ?」
「ああ、だからか。僕には覧が『ステータスですね?』……って確認しているように聞こえたってこと?」
「うん、そうだと思う。そしたら、王様が『そうだよ、それだよ、それ』……って言ってたでしょ? ステータスの具体的な数字なんて分からないし、言語も違うだろうから、そちらで確認してくださいという意味をこめてお願いしたんだ」
「なるほどね。さすが覧」
「魔法使いとスクロールに関しては、大臣が勝手に判断してくれた感じだね。おそらく、ステータスは魔法使いが魔法で見るか、スクロールで出すかの、どちらかしかできないんじゃないかな?」
さすが覧。少ない情報から、そこまで推理するなんて、すごすぎる。
覧と会話をしているうちに、大臣が箱の中に入れた古めかしい巻物を何本か持って戻ってきた。
「お待たせいたしました。それでは、是非ステータスのチェックを」
「念のための確認なのですが、使い方は?」
「えっと、どうするんだっけな、大臣?」
「ただ、そのスクロールを持って、『ステータスよ、出ろ』と強く念じていただければ良いだけでございます」
「そうそう、この巻物を持って、『ステータスよ、出ろ』と念じるだけでいいんだ」
王子様、そのセリフ、さっき、大臣がほぼほぼ言ったよね?