表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

4 予定は未定で



 二人乗りのバイクは、夜の街を疾走する。


「角を曲った、潰れたゲーセンの裏で止めろ」

 大牙(たいが)の背中から、命令が飛んだ。


「お前は何様だ?」

「知りたいか」

「いや……、やっぱいい」

 こっちの仕事はバレている。〈回収屋〉を知っている時点で、裏の住人だ。


 指示された通りに、大牙は閉店したゲームセンターの店舗の裏でバイクを止めた。少年が下りる。


「このまま振り返らず走れ」

「そーさせていただきますー」

 言われるまでもない。

 

 大牙はすぐにバイクを発進させた。硝煙の香りと殺気が、風に吹き飛ばされていく。

 遠くで、パトカーのサイレンが聞こえた。






「なんだったんすか、あれ!」

 ばん、と大牙がカウンターを叩く。

 床にいた定春がびっくと身を震わせ、商品棚の陰に隠れた。


「落ちつけよ、大牙。ほら、定春(サダハル)がビビってんだろ」

 ブラインドタッチでパソコンを操作しながら、店長がいさめる。大牙が振り向けば、顔だけを覗かせた定春がにゃーと鳴いた。


「……ごめん、定春」

 にゃー、と定春が大牙の足元に擦り寄った。

 しゃがみ込み、喉を撫でてやればゴロゴロと甘えた音を立てる。その体毛の柔らかさと温かさに、苛立った気分が解れていく。


「当初の予定だったら、お前が納品した武器で標的を処理するはずだったんだが、他の組織とダブルブッキングしたようだ」

「そんなこと、あるんすか?」

「そんなことあるから、この業界は怖いんだよ。なんやらかんやら、紅山幇(ホンシァンバン)のボスや幹部たちに懸賞金が掛かったみたい」


 店長がパソコンの画面を大牙に見せる。どこかの裏サイト。

 顔写真と共に、金額がドルで掲載されていた。


「懸賞金狙いが、横槍を入れたって感じだな。もうちょっと調べてみるが、本来ならこれはウチの仕事だ」

「当然っすよ」


 満足したのか、定春が大牙の手からするりと抜け出す。身軽に棚と壁を駆け上り、神棚で丸くなった。


「それで、大牙が運んだ少年だが。あれは、本部の人間だ」

「……〈殺し屋〉ってことっすか」

 感じた殺気が蘇り、両腕の肌が粟立つ。


 ふう、と店長が息をついた。椅子の背もたれに身体を預ける。


「取り敢えず、今日は帰って寝ろ。急ぎの仕事もないし、明日はバイト休んでいい。鈴香(すずか)ちゃんに会いに行ってこい」

「……わかりました。ありがとうございます」

 へらりと店長が笑う。

 神棚の定春が、にゃあと鳴いた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ