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2日目のメタイ

ポイントで評価&ブクマしてくださった方、アナタは神様です。



「なぁ、エイミー」


「なんだい?」


 相変わらず暇な時にはすぐに本を読むエイミーに話し掛ける俺。


 今日は思い切ってこの作品のためにもメタイことを言おうと思う。


「この小説ってギャグを目的とした小説なんだけどさ、主人公の俺の名前決まってない上に、主人公である俺の肢体が動かないじゃん? それってつまり、俺の活動範囲が部屋の中だけに制限されて、第三話にしてもうネタ切れ直前って訳なんだよ。でも例え一念発起して外に出たとしても敵に襲われたら主人公らしい活躍もないまま貪り食われて肥やしになるのがオチじゃん? どうすればいいと思う?」


「大丈夫だよ。ネタはボクが作るし、君の代わりにボクが敵を倒して見せ場を全部独り占めしていつかは主人公に成り代わってあげるから、安心して」


「どこも安心出来ねぇじゃねぇじゃねぇか」


 何気に俺なんかより相当主人公に向いているエイミー。


 イケメンで、運動出来て、頭もいい(本を読んでるから多分頭良い)。


 これで魔法が全属性使えたりとかしたら俺よりよっぽど「なろう系」主人公に向いている。


 はっきりゆって俺の戦闘力なんてそこら辺のモブより弱いもん。


 戦闘力:測定不能(0のため)って出るもん。


「……ふぅ。しょうがない。そんなに言うなら君の見せ場とやらを作ってあげようじゃないか」


 パタンと本を閉じて立ち上がったエイミー。しかし、


「はあ? そりゃ作ってくれんのは嬉しいけど、どうやって見せ場なんて作るんだよ。敵相手に文字通り手も足も出ない俺だぞ?」


 自分で言ってて悲しくなってきた。


 けど、現実問題として俺は首より下が動かせないのだから敵を倒そうにも誰かが俺を武器として装備するか、首が届く範囲内でのめっちゃしょぼい頭突きとか、それぐらいしか出来ないのだ。


「ふっふっふ、『俺くん』は分かってないな~「エロゲーの模範的な名前付けなy…」確かに小説やアニメでは戦闘シーンこそが主人公の見せ場ではあるが、それだけが読者を惹きつける魅力な訳じゃないのだよ」


「それだけが魅力じゃない?」


 なぜか人差し指を立てて、カッコつけて説明するエイミー。


 だが、俺には戦闘シーン以外の魅力となると戦いの後の日常シーン以外に思いつかない。


 しかし、例え日常シーンそもそもこの小説自体が日常系ギャグなのだからそれもボツだ。


 なら、いったい他にどんな手が――、


「そう、つまり、戦闘シーンだけで小説やアニメが売れている訳じゃない。なら、いったい読者は作者にどんなシーンを求めているか、それはズバリ――『お色気シーン』だ!!」


 「「お色気シーンだ!!(エコー)」」


 自信満々に人差し指を俺へと突きつけた美男子。残念な美形だ。


「…。……。………。お前、実は馬鹿だったの?」


「なぜかな?」


 首を「こてん」と傾げるエイミー。


 あーはいはい、カワイイ、カワイイ(棒読み)。とりあえずカワイイアピール止めろ。


 そんな暑苦しいエイミーに対し、俺は当然といえば当然過ぎる正論で返す。


「どこに女がいんだよ。美女がいんだよ。美少女がいんだよ。

 こんな男二人のムサい空間で『お色気シーン』なんて発生する訳ねぇだろ。もはや『男異露毛おいろけシーン』になっちまうだろ。そんなの読者が求めてる訳ねぇじゃねぇか。一部の腐女子が喜ぶだけじゃねぇか」


「…。……。………。君の方こそ、馬鹿なんじゃないかい?」


 なぜか無表情で返すエイミーに、「こてん」と首を傾げる俺。


「何でそんな怒ってんだよ」


「はぁ…。もういいよ。それよりも――」 


 唐突に地べたに這いつくばり、俺のベッドの下をガサゴソと漁るエイミー。そして、当然のように狩猟用の弓を取り出した。


「何でそんなとこに弓が入ってんだよ!! このベッドの下って実は四次元ポケットだったの!?」


 俺の動揺をよそに、弓の具合を確かめたり、弦を引いてみたりするエイミー。そして、ポーズを決めてこう言った。


「美少女がいないのなら、狩ってみせよう――ホトトギス」


「お前は戦国武将かなんかか!? そんな弓で打ったらハート打ち抜く前に心臓撃ち抜いちまうだろうが!!」


 そもそも奇跡的に矢が外れて女の子が助かったとして、この部屋に誘拐したとしてもその女の子に好感持たれる前に殺意を持たれちまう。そうなったら恋愛までいくのはかなりの難易度だ。


 いや、最悪『殺し愛』に発展してもおかしくない。←言いたかっただけ。


「はぁ……、我が儘な上にどうしようもないニート主人公だな…。じゃあ、君に何か案があるのかい?」


 エイミーの言にも一理あった。代案を出さないで他の人の意見だけを否定するのは不合理だし、俺も考えてみることにする。



*************************************************



 そして、こうなった。


「君はこれで本当に良かったのかい?…その、あまりにもこれは…」


 エイミーが悲惨なものでも見たように、ポツリと、そう漏らした。


 まあ、確かに俺もこれはあんまりだと思う。


 ――俺の案、というのは、色んな物語の主人公の要素を取り入れる、だった。


 そんで、身体をちょっとエイミーに改造して貰ったら、


 ――髪にはピョコピョコ動くアホ毛が付いて、目は車輪眼になって、眼鏡付けて、口にはマスクが付いて、スライムになって、下半身は人魚になった。


 ナンダコレ。


「……惨すぎる……」


「おい、同情の視線は止めろよ!! てゆうか、色んな物語の主人公の要素足したらもはや人間ですらなくなっち待った!!」


 結局これじゃあ主人公としては目立てても人気投票では最下位になっちまうよ!


 しかも地味に人魚の脚に蟹が引っ付いてんだけど。ハサミで尾ひれをちょん切ろうとしてんだけど!!


 俺猿じゃねぇし!! 柿を取った覚えもねぇよ!?


「……いや、でもある意味これで正解かもしれないよ。ショッカーの本部で改造された改造人間並みに準主役級の存在感が出てるよ。

よし、あとはヒーローに倒されるだけだね。ボクに任せてくれたまえ。苦しむ間もなくってあげるから」


「結局お前が主役に成りたいだけじゃねぇかああぁぁぁあああああ!!」



 そう叫んだ午前だった。 





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