第2話 勇者~2~
身体が重い。
いや、違う。
身体が定着していない、と言うべきか。
天井の豪勢なガラス絵から日光の心地よい光が差す。
自分が寝ていたゴツゴツとした石造りのベッドに身の覚えが或る。
あぁ、またか。
既に三回の死亡であった。
ベッドを囲むように立っている、死神のようなペストマスクをした者達を見るのもこれで三回目であった。
「勇者様、お帰りなさいませ。」
1人のペストマスクがプログラムされたような平坦な口調で語りかける。
しかし、見渡しても見渡しても仲間は居なかった。
苦楽を共にした仲間は、もう居なかった。あの肉塊は夢ではなかった。
この現実が認められなかった。
「なんで、なんで、俺は、俺だけは生き帰るんですか」
勇者は分かっていた。自分は完全に死ぬことが出来ないことを。
そしてペストマスクがどう答えるのかも知っていた。只、言葉がこれしか見つからなかった。
「、、、当然、、世界を救うためでございます。勇者殿。お仲間様達のことはお悔やみを申し上げます。しかし、あなたがなしでは世界の夜明けはないのです」
異世界転生、そんなもの夢と現実はかけ離れていた。
もう、あの時、トラックにはねらたときに俺の人生は終わっていてよかったのかも知れない。
勇者は明日には旅立たなければならなかった。
世界を救うという使命を果たすために。
勇者の命はそれまで燃え尽きない。