闇のなかの八つの眼。
初めての方はお初にお目にかかります。
ゆんやです。
楽しんで読んで頂けたら幸いです。
モンスターや冒険に関わる汚い表現、スプラッターな戦闘シーン等には十分お気をつけて下さい。
蟠扁桃と名付けた果実を目一杯腹に詰め込み、人心地ついた生きる屍、腐った死体である西郷不知火。
魔王城のある魔都のお膝元からそれほど離れていない河口付近から河を遡上して森林地帯を抜け、滝壺までやって来た。
そして、果実を貪った。
排尿も排泄も未だ行っていない身体に、ものを詰め込むのは如何なものだろうか。
とは言っても腐臭を放っていた身体から甘い匂いがするようになったのは悪い気がしない。
あ、これはフラグだ。
ヤバイ系のフラグ。良い匂いって旨そうだって事じゃね。
そう思って、周囲を見回して見るに何かが潜めそうな場所は幾らもあり、突然、襲われるという事もありえた。
闇のなか滝壺へと落ちる水音が、先程までは心地よく耳に届いていたが、警戒心を増している今の状況下では、その雑音が鬱陶しい。
何か来た!
銀の糸が放射状に物音がしたところから放たれた。
そんな物を全く予想していなかった俺は、対応出来無かった。
放射状に広がる蜘蛛の糸に身動きを抑制された四肢を捻るうちに、背後に迫る八つの赤い光。
純真無垢なほど真白い牙がてらてらと滑り肩口にガブりと食い込む。
痛てー、痛烈な痛み。
「ぎゃー痛いよ、痛いよ」泣き叫んでばかりの今日この頃、身体の痛みというよりももはや精神的な想像痛という方が妥当かも知れないと思いながらもその痛みは引かない。本来の身体であれば痛いはずだという事を精神が訴えるのだ。
甚だ疑問なのは腐った死体が食い物として成り立つのかどうかだが、そんな事はお構いなしに強度と柔軟性を併せ持つ粘着性ある糸で簀巻きが出来上がった。
ズリズリ、ずりずりっと引き摺られ巣穴へと運ばれる。
毛の生えた外骨格のフォルム、八本の巨大な脚、2つの大きな眼とそれを縁取る6つの眼。
俺がこの蜘蛛と同じ怪物だとしたら仲間じゃなかったのか、そんな事を今更ながら考えていた。
今すぐ喰おうとかは考えていない様だが、蜘蛛は獲物に毒液を注入して、身体の内側をどろどろの液体に溶かしてから吸飲したりしたのでは無かっただろうか。
想像するだけで気持ち悪い。
蜘蛛の糸に絡み取られ、腹が減った時に食べるおやつとして保存される腐った死体。
シュールな光景だな。
お読み頂いて誠にありがとうございます。
フリガナふれるのかお試し回。
そして、即座に終了する戦闘を描きました。
今後とも御贔屓にお願い致します。