襲われた朝
「サイゴー、おはよ〜...」
フノスの明るい声と共に勢い良く西郷不知火の泊まった部屋の戸は開けられた。
「ん〜」
西郷不知火のベッドの横でナイが気だるそうに身動きする。
(あ、コレはヤバイシチュエーションかも知れない。)
ナイさんの豊満で魅力的な肉体に抗えず真夜中のエクササイズに励んでしまったと思われる、咄嗟に思い浮かんだのはそんなことだった。
フノスの顔色が一瞬で蒼白になる。
めきょ。
強烈な平手が物凄い質量でもって、右から左へと高速で振り切られ、鳴ってはいけない音がした。
避ける暇もなく、モンスターの頭を熟れた果物の様に砕く一撃がサイゴを襲ったのだ。
うん、死体の出来上がりだな。
さて、仕切り直し。
笑顔でポーズを決め、白い歯が煌く。
「フノス、おはよう。オレは無実だ。」
その瞬間に意識を狩り取る拳が左から右に迅り顎をとえる。
むきょっと首の骨が強制的に正常な位置に修正された。
今日は気分が良い、今までで1番頭の回転も良さそうだ。
だからと言って回る頭で言い訳をしたらドツボに嵌るのがわかるぐらいには賢さがあるはずだった。
「おはよっす。フノス、リム。」
もう挨拶がおかしくなってる気がするし、3度目だ。無限ループするのかと思いきやリムさん参上に期待感が募る。
「フノス、オレは襲われただけなんだ!」
しゅぴっと高速の手刀が駆け。
パンパンに腫れたほっぺがじんじんする。
そして、清々しい朝は過ぎ..
サイゴが口を開こうとするとぶん殴る。
サイゴが目で訴えると往復ビンタ。
サイゴが...
朦朧とした意識の中で思う。
そもそも、昨夜。食事を終えたサイゴらにフノスが部屋数があるからと、各々に一部屋づつ割り振ったのがいけなかったのだと。
ナイはオレを襲う機会をうかがっていたのだ。
サイゴは半ば意識を手放し、言い訳する気力を失っていた。
フノスの呼吸音が聞こえる。
やられるのかも知れない。
裏切った様に見えたんだろう。そうだよな、そう見えたろうな。
「私の家で寝所にナイさんだけ呼ぶなんて信じられないよ!」
え?
なんて言った?
だけっってどういう事?
フノスさんも一緒に寝たかったのか..
「もう!次は私も呼ばないと、またペンペンだよ!」
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