お呼ばれして食事
お腹減ってたの?
天使かぁ...
俺にとって神の使いだろうが、天使だろうが、人で無かろうが、神そのものだろうが全く驚愕には値しない。
関心事は俺を腐った死体から治せるか、治せないか、それだけだった。
そもそも、有能な神官であるフノスが治せない時点で、もう望み薄な気がする。
さらに、この世界の教会初体験の俺にとって、教会には神の使いやら、天使がうろついていると言うのが事実でそれ以外の何事でもない。
そう、腐った死体がふらふら歩いてる事が異常であり、それ以外の何があろうと何も不思議なことはない。
ついこの間などは、ドラゴンに喰われて吐き出されたんだか、ドラゴンが爆裂したんだか、わけのわからない事があったし。
さらには言えば、地面に突き刺した蛇口から水が吹き出してくる世界なのだ。
もう、何でもありの不思議世界がここだ。
また、リムが言う天使らしき人でない存在が俺たちを覗き見していようと全く気に...
じーっと見つめられるのが気にならないわけではないが、極力無視する事に決めた。
ウザすぎる。
「はい、はーい。お食事できましたよ。」
パッと咲いた花のようなフノス笑顔に心が浮き立つ。
そうそう、コレが本当の天使だよ。
俺はひとり納得する。
天使は地上界にいたんだ。
お家に招待して食事を作ってくれるフノスさん。
コレは彼女と言っても過言ではないのではないだろうか?
さて、リムが少し手伝った様だが、フノスが食事の支度をしてくれた。
案内された部屋には木製の食卓、陶器の皿、銀の燭台、質素に見えて貴重品らしき重々しい調度品がある。
フノスに導かれるままに俺たちは食卓に着く。
食事は質素で、家庭的に見えた。
ポテトを潰して揚げた団子。
香辛料のピリッと効いたオイルに絡めた生野菜。
サシが入り口の中で蕩ける炙り肉。
絶妙な酸味と苦味がバランスよく調和したタレが用意してあり好みで付けて食す。
食ったことは無いが、これが高級料亭の味か..
「フノスの将来の旦那さんは幸せ者だな.. 」
俺はぽつりと呟いた。
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