庭鳥の朝餉
朝食はきちんと摂りましょう。
幾夜この荒涼とした荒地で過ごしただろうか。
砂漠の様な砂が混じり風が強く吹いた後は衣服の隙間にジャリジャリとした砂の感触がある。
鳥だ。
目覚めてまず思うのはそれだった。
フノスの言う庭鳥に毎朝の日課の様に襲われていた。
そして今も急降下してくる庭鳥が鉤爪でオレを裂こうとしていた。
いや、あまりに毎度のことになってしまって感慨は希薄だ。
オレが相手をして、寝ぼけ気味のフノスがアラハバキ重装甲で一撃で倒す。
庭鳥の羽根をナイが根本から、何か不思議な事をしてむしり取る。
そこで、俺が用意した焚き火とフライパンの出番だ。
フノスの持っているお酢の小瓶が隠し味。
美味そうに、いの一番に頬張り歓声を上げるリム。
「ん、リム。お前なんか食ってるだけじゃないか?」
「ほんらこと、ありぃますん」
「ほらほら、ちゃんと食べてから喋るんだ」
頬についた肉汁を拭いてやる。
毎朝のこの稽古でオレの剣の技量も少しは上達していると実感はある。
それよりも、フノスの操るアラハバキ重装甲の動きの滑らかな事と言ったら流水の如きだった。アラハバキ重装甲には魔力を注ぎ込み遠隔操作出来るという特徴があるのだ。
リムの頬についた肉汁を拭いてやったサイゴにフノスは不満だった。
「ズルい、どうしてリムちゃんだけ面倒見てあげたりするんですか、やっぱり女は若くて何も知らないような感じで、世話をして、助けてあげたくなるような弱さを持っている、こんなぷにぷに頬っぺが愛らしいんですか?」
フノスの言っている意味がわからない、リムはこんな見た目でも実は俺たちの中では一番の年長者だろう。そして、頭脳も相当切れる。なんて言ったって魔導士で賢者、武術としてはアーチェリーまでこなす才媛だ。
しかし、優れた者が全てに於いて長けてるわけではない。出来無い事も多いし、無い所は全くない。いや、リムの胸とか見てないからね。本当だよ。
料理でもそうだ、全く手伝わないで最後の最後にちゃっかり食ってるだけだからな。
「ぷにぷに頬っぺちがふ」
おいおい。
まったく、手がかかるな。
オレの手はまたリムに伸びそうになる。
それを遮ったのはナイだ。
「私はこの頬っぺは十分にぷにぷにだと思いますよ。それはもう始祖様に誓って」
おーい、ナイ。火に油を注ぐんじゃないよ。それにシソさまってなんだよ。
リムがむくれて串焼きを頬張っている。
隣で頬を突くナイ。
「それは、止めてあげて..」
「あ、あれ?」
リムどうしたんだ。
未だにモギュモギュと焼き鳥を食っているリムが指差した先には何やら建物らしきものがあった。
「あ」
フノスさん、「あ」ってなんだよ。
「私の家ですね」
「あれがそうなのか!」
皆の顔に笑顔が浮かんだ。
やっと、地平線の彼方ではなく視界内に現れたフノスの家に向け一行の歩みは逸るのだった。
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