スライムの粘液
白光で視界が爆発し、満天の星空が割れ地中へと聖なる力が降り注いだ。
一時の嫉妬、それが原因でした行いながらもう取り返しがつかない。
怒涛の如く眼前に突き立った聖なる力。
それは、容易に地下下水道の天井を崩し、サイゴをそしてスライムモルドの身震いする身体を串刺しにした。
天より打ち据えられた断罪の破城槌。
粉塵が飛び散り、粉々に砕けた石材が四方へ弾け飛ぶ。
頭上からの紫の光の奔流が直撃した俺。
キーンと耳の奥で鳴り響く警鐘と、この攻撃を契機に潜在していた力がその破壊力に耐えうる強靭さを引き出していた。
傍らにはキノコのクッションの上で微睡むような笑顔で半ば放心状態のリム。
西郷不知火は破壊魔法の直前、咄嗟に突き飛ばしたリムに駆け寄り介抱する。
「リム、リムいったいどうなったんだ。大丈夫か」
心配そうに尋ねる。
「あ~ん、おにいちゃん。わたしもうダメ。助けて」
舌舐めずりして抱きついて来ようとする。
そして、またビクビクと身体を捩らせ身悶えている。
「ふっ、くぅ~。ん、ん。がぁは、ぁぁあ、あぁ~ん」
身体に何らかの異常をきたしているのは確かだ。
クソっ、フノスはどこだ。
リムを治してやらなければ!
「私はここですよ」
背後に佇む冷たい視線のフノス。
「ああ、良かった。フノス無事だったんだね」
安堵の表情を浮かべる西郷不知火。
その表情にチクリと胸を衝かれる。
やっぱりサイゴは私の事を一番に考えてくれていたんだと、だがそれは直後に裏切られる。
「リムが大変なんだ、フノス、毒消しの呪文を頼む」
心に特大の氷塊を埋め込まれたかの様な痛みがズキリと走る。
出会った時からもしかしたらとか思っていたが、モンスターとの戦闘中に私を放って二人でイチャイチャとちちくりあうなど言語道断、リムという存在が危険に思えてならない。
そうは言っても仮にも神官。アラハバキ重装甲の兜で西郷不知火には見えないが無表情の仮面を被り、治療に専念する。
ん?
「サイゴ、これはただの毒じゃないわ」
「え、じゃやっぱり麻痺か幻惑?」
そんな会話の最中もキノコをズルズルと音を立て舐め幸せそうにしているリム。
「これは…催淫系の麻痺毒だわ」
そう言ってフノスはリムがしゃぶっているキノコを奪い取って投げた。
足腰も立たない状態まで悪化しているリムの目がその放物線を追う。
かなり、悪いキノコの様だ。
フノスの清澄な歌うような声、それは優しさと慈しみに溢れている。
「神聖なるかな、黄金の聖水。あらゆる苦しみを解き放て」
呪文を唱え息切れを起こして倒れるフノスを西郷不知火が慌てて支える。
「フノスさん、しっかり」
フノスが抱きしめられた喜びに浸る前にその腕が離れていく。
「リム…」
「あ~ん、おにいちゃん抱いて!ハグしてチュッチュッして~。おにいちゃんの添い寝抱き枕になるからお情けをちょうだい、ちょうだい」
その抱き締める力だけは半端ない。
回復はしてるのか…しかし、この状態は?
「フノスさん、これは!」
リムが恥ずかしそうに答える。
「あの、これはですね。理性は取り戻したのですが溜まりに溜まった性衝動が抑えられないというか欲情して」
底冷えするフノスの声。
「ええ、サイゴが気に入らないなら今のうちに頭を砕きましょう」
え、何?
「そうすると治るのか!」
「ピクリとも動かなくなります」
to be continue
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