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八百屋な少年の厄日3

投下!

昼食を終えると、外が騒がしくなってきた。


ゲオルが様子を見に行き、ジークはお留守番で、フレイにお勉強させられている。

フレイは語学が堪能で、さらにかじる程度に魔法も使うことができるのだ。


「だめよ、これは書き直し」


「えー もういいじゃん」


「まだだめよ。この後はエルフ言語にドワーフ言語と魔法基礎のお勉強です」


「死んじゃう」


「勉強しすぎて死んだなんて聞いたことないから大丈夫よ」


「はいはい」


ちなみに今ジークがしているのは古代語の書き取りだ。

もう嫌々やっている所為で姿勢も悪ければ字も汚い。ちなみに勉強そしているのはリビングだ。自室でやらせるとジークは100%サボるのでフレイが付っきりだ。


フレイは勉強をさせ続ける。芸は身を助けるという言葉があるが、フレイはそれを語学に置き換えて口酸っぱくしてジークに言い聞かせている。


外の様子を見に行っていたゲオルが帰ってきた。

ここぞとばかりにジークは勉強から逃げ出す。


「ただいま」


「どうだった父さん!」


「おかえりなさい」


「信じられないほど大きなモンスターを解体ショーをしていたぞ」


スゲーとはしゃぐジークの横で大人二人は落ち着いて話し合う。


「あら? それでは市の再開は無理そうなのね?」


「明日からは当分、公園を使うらしい。少し遠いが店ができないよりはましだろう」


「そうね。収入が0にならなくて良かったわ」


「ああ。そうだジーク! 解体ショー見に行くか?」


野菜以外に興味を示すジークを珍しく思ったゲオルは見に行くか誘ってみた。


実はジークの演技であるなど気づいていないだろう。本当のことをいうとさほどジークは解体ショーなど興味はない。ただ単に勉強から逃げる理由を作っただけだ。


「行く! 見てみたい!」


「わかった連れて行ってやろう」


「ダメよ。あなたはそんなもの見に行くぐらいなら明日から勝手が変わるのだからその準備ぐらいしなさい。ジークも見に行きたいと言うのならお勉強を終わらしてからにしなさい」


「「はい」」


母は偉大なり。ジークの魂胆などお見通しだった。

ついでに怒られてしょんぼりするゲオルの背中がやけに小さく見えた。


勉強を終わるともう夕飯時になっていた。


「もう見に行ってもいいわよ」


「いいよ。終わってると思うし」


ジークは自室に戻って『たからもの箱』から先ほど拝借したドラゴンの鱗を一枚取り出した。


「これでなんか作る方が面白そうだもん」


真っ黒なのに光に当てるとキラキラと七色に輝く鱗の虜になっていた。

このまま売っても高く売れるかもしれないが、上手に加工すればもっと高く売りつけられるだろう。


指先で弾くとキンッと金属のような音がする。


「ただこれ硬いよな。ナイフで削れるかな?」


『たからもの箱』から一本のナイフを取り出した。

ずっと隠していたナイフだ。刃物を持っているとフレイに取り上げられるから此処に隠していたのだ。


験しに鱗の端に傷をつけてみようとしたが、上手くいかなかった。

まるで金属をこすり付けているような嫌な音がする。


「だめだ。逆にナイフが悪くなっちゃいそう」


自分の道具では手も足も出なさそうない。

こういう時、ジークは父方の祖父母の元へと駆けこむのだ。


「よしっ じーちゃんのとこで工具借りよ!」


じーちゃんこと祖父マズールは鍛冶師なのだ。ジークの住まう家から近いところに鍛冶屋を営んでいる。

フレイに内緒で何かするときは必ずマズールのところへ駆けこむのだ。


「母さーんちょっとじーちゃんのとこに行ってくる!」


「夕飯までには帰ってくるのよ」


「うん!」


「また何かやらかす気ねあの子は・・・」


とうぜんのようにそんなこともお見通しのなのが母だ。

ただフレイも祖父母の監視下でジークが何かをやらかす分にはもう妥協していた。



マズール鍛冶屋はシルバリオンでもかなり有名な鍛冶屋で、店構えはものすごく豪華だ。

ジークみたいな子供が出入りするようなお店ではない。


しかし、ジークはそんなこと気にもせずに、店のドアを勢いよく開けて駆け込み、ドタドタと許可も無く奥の作業場へと入っていく。


「じーちゃん! 来たよー! 工具かしてー!」


作業場ではマズールが大きな剣を研いでいた。マズールの見た目はゲオルと同じでムキムキのおっさんだ。

ただ少し身長が小さい。遠い先祖にドワーフが居たその影響だ。種族は人族だがドワーフのような力自慢で酒豪なのだ。


「んん? ゲオルのとこの孫か・・・いいじゃろう。今日は何をやらかすつもりじゃ?」


「ふふんっ これみてじーちゃん!」


ジークはドラゴンの鱗を自慢げに見せた。

するとマズールの表情が一変する。


「まさか表のドラゴンから取ってきたんじゃなかろうな?」


「えっへん! 引っこ抜いてきた!」


マズールは信じられないものを見る目でジークを黙って見つめる。


「・・・」


「だめだった?」


「いや・・・だがどうやってドラゴンからその鱗を剥がしたんじゃ? 落ちていたのではないのか?」


「ううんっ こう! グイって引きちぎったよ! あとね牙もお家にあるよ!」


マズールは絶句した。ドラゴンの鱗は強く皮を繋がっていてよほどの技術や力がないとドラゴンから鱗や牙を引きちぎることはできないのだ。ドワーフのような力自慢でない限りは、そんな芸当は不可能である。


「お主はドワーフの血が濃かったかの?」


「さー? 母さんの方の血は濃いとは言われたけど?」


ちなみに、フレイもマズールのように遠い先祖にエルフが居たのだ。

ゆえにあれだけの美貌を兼ね揃えているのだ。ジークもその血統をフレイほど濃くは無いが継いでいる。

二人とも人種は人族だが魔法が少し使えるのもその血統の影響なのだ。


「まあいい。工具は自由に使っていいが、元の場所に戻すんじゃぞ」


「はーい!」



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