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八百屋な少年は蒼炎を燃え上がらせる3

ジークは天馬の背に跨っていた。アリスが迎えに来たのは馬車では無く天馬でだった。

アリスの腰を掴んでジークは大空へと飛びだった。


ジークは怖がるタイプではなく楽しむタイプだった。


シルバリオンの街を上空から見下ろす。

大きな城を中心に円を描いていた。


「街ってこんな風になっていたんですね!」


「奥様。あまり体を乗り出さないでください。落ちてしまいます」


「その奥様ってやめてくれませんか? 今日全力でお断りする予定なので!」


「左様ですか・・・ではジーク嬢と御呼びします」


「まあ違うけどいっか」


嬢と付けられても困る。ジークは男だ。


「?」


「それよりもいつなら話せますか? 王子さまの手紙にはアリスさんといっしょに話を聞かせると書いてあったのですけど」


「了承済みです。このまま天馬で城の上層へ行くので、問題ございません。殿下も一応ジーク嬢への配慮として三人だけでお会いするつもりなのです」


「そうだったんですか。わかりました」


「いえいえ説明の配慮が足りていなかったようで申し訳ありません」


「いいよいいよ。てゆうか王子様居なくても別にいいんだけどなぁ。先にアリスさんに今ここで聞いていいですか?」


「なんなりと。本日は全ての質問にお答えしましょう。今なら誰もいませんので可能です」


「なら・・・あの邪竜を倒したのは聖剣ですよね?」


「左様でございます。私の聖剣エクスカリバーによって葬りました」


「逆に言うと聖剣じゃないと倒せなかったんですか?」


「はい。その通りです。ジーク嬢がお持ちの聖剣でも可能かと思われますが」


「う~ん。無理だと思うけどな~ えっと失礼かもしれないけれどスイマセン。アリスさんは一度死にましたか?」


「いいえ。私の場合は死んではいません。そのあたりは殿下がお話し下さるかと・・・ぶっちゃけますと私あまり頭脳がいい方ではないので難しい話は苦手なんです」


「え?」


「生まれてから一度もペンを握ったこともお金を握ったこともないのです。握っていたのは聖剣だけなので」


「・・・」


いったいどんな家庭で生まれ育ったのか。ジークでもなんとなく察しはついた。

騎士の家に生まれ聖剣に選ばれた少女アリスの物語はシルバリオンで有名だからだ。


「同僚にはよく脳筋怪力女と言われております。ですが脳まで筋肉で出来ているだなんて強そうじゃないですか?」


「アリスさんそれ皮肉られてるんですよ! 自慢する事じゃないですって!」


「え? 褒め言葉じゃないのですか?」


「違います」


「・・・そんなぁマリアの馬鹿」


「まあ俺も我利我利亡者なんて友達に言われたこと有りますから、落ち込まないで」


「ガリガリモジャ? ジーク嬢は痩せてはいますがガリガリではないですし、毛が濃いようにも見えませんが?」


「あーえっと、我利我利亡者っていうのは痩せてることや毛が濃いことを言っているのじゃなくて、お金に汚いと揶揄している言葉です」


「へぇー ジーク嬢は語学に堪能ですね」


もうジークは絶句するしかなかった。

天下の聖騎士アリスは残念な子だったのだ。脳筋・・・きっと剣を握ったら性格が変わるんだろう。

ジークは心の中で絶対にアリスが剣を持っているときには近づかないことを決心した。


「母にたたき込まれました」


「すごいですね! 私もたたき込めば賢くなれるでしょうか? ジーク嬢私にたたき込んでくださいませんか?」


間違いなくアリスの言うたたき込むは物理的なことを言っているのだろう。

ジークはのっかった。


「えい! これで語学を叩き込みましたよ!」


前に座っているアリスの背中をポンと手で押した。


「わぁ! ありがとうございますジーク嬢。なんだか賢くなったような気がします!」


「ははは・・・良かったですね!」


「何かお礼をっ」


「いえいえ結構です! こうして天馬に乗れたことだけでも、シルバリオンの人たちはお礼以上の事をしてもらっているほどありがたい事なので!」


「?」


どうやらアリスはジークの言ったことえお理解していない。首をかしげている。

ジークはもっと分かりやすく説明し直そうとしたが、遅かった。


「私にしかできないお礼をお返ししますジーク嬢!」


嫌な予感がして仕方がないジーク。

ごくりと生唾を飲み込む。


「剣術もとい聖剣術を叩き込みましょう! ですが私はジーク嬢みたいなたたき込みは出来ないので、特訓と言う形でお礼させていただきますね!」


「結構です結構です! 間に合ってます!」


「殿下とのお話合いがあるのでね。その後にいたしましょう! ああ嬉しいですっ 訓練って楽しいですよね!」


こんなに嬉しそうな聖騎士を見たのはこのシルバリオンでジークが初めてだったかもしれない。


「・・・そうですねわーい」


何処から話が屈折してしまったのかを非常に悔やむジークだった。

でも聖剣術を学べるなら悪くないかもとポジティブな考え方をするしかなかった。


話していると城にすぐ到着した。

最上層のジークが最初に掴まっていたあの部屋だっ。

天馬から窓へと飛び移り中に入るとアースレイは二人を待ち構えていた。


ジークはアースレイと目が合うと開口一番宣言した。

そしてソファーにドカッと座ってソッポを向く。


「結婚はぜったいにイヤです!」


「はっはっは相変わらずつれないね」


「先ほど振りです殿下」


「うん。ジークのお迎えごくろうさま。アリス君にも教えなきゃいけないことがあるからそこに座ってくれ」


「承知しました」


アリスは片膝を付いていたが、アースレイに座るように命令されたのでジークの隣に腰を下ろした。

アースレイは二人の向かいに座る。


「じゃあさっそくだけど約束通り話をしよう」


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