アクシデント
「さて華凛も終わったことだし次は俺の番だな」
「うん!いってらっしゃい」
華凛に見送られまだ固まって水晶を覗いてるシルビアに声をかける。
「あの~」
「ひゃい!?」
「おおう!?」
ビクッと震え変な声を出すシルビア。それに釣られて俺も一緒に変な風になってしまった。
「つ…次俺なんだけど大丈夫そう?」
「は…はい…申し訳ありません…こんなに驚いたのは生まれて初めてなので…」
「それだけ凄いってことだろ、だったらそうなってもおかしくないんじゃないかな?」
「そう…ですね…女王たるものいかなる時でも取り乱したり慌てたりしてはいけませんね、ではどうぞ水晶に手を」
「了解っと」
そして水晶に手を向ける。
バキッピシピシピシ…パリンッ!
なんてことでしょう…水晶が粉々になってしもうたではありませんか。
「………」
「………」
「………」
俺とシルビアはお互いに固まり沈黙した。
クラスの皆も何故か黙る
唖然と粉々になった水晶を見つめるシルビア。
あれ?さっき女王たるものがどうとか言ってませんでしたか?
「…え~と…これはどういうことですか?」
「………」
反応がないまるで屍のようだ…。
「シルビア…さん?おーい?」
「…へ?…あ…はい…」
「あ…はい」
(なにこれ!?なんでこんなに気まずいの!?俺なんかした!?いや確かに水晶に手向けたら砕け散ったよ!?え?でもしょうがなくね?もしかしてあれってお高い…物?そういや代々伝わるとか…)
色んな事を考えてると…
「すいません…どうやら…水晶が何らかの…負荷で壊れてしまったみたいです…大変申し訳ありません…」
「いや…こちらこそすいません…」
(どんだけ気落ちしてるねん!?さっきまでの気品も欠片もないよ!?)
「いえ…そちらに非はありません…代々長くこの国にあったものですから…物にも寿命というものがありますのでそれが今だったのでしょう…」
(まんまかよ!)
「皆様お疲れでしょう…この後の説明は明日行います…使いの者に部屋に案内するよう手配します…それとお食事の時間にはお呼びします、入浴はお好きな時間にお入り出来ます…では部屋でゆっくりしていてください…」
(おっふ…本当に申し訳ねぇっすシルビアさん!)
その後使いの者が来て二人一組で部屋に案内された。
もちろん俺は俊と部屋に入るはずだったんだが…華凛に約束のことで強引に一緒の部屋にされた。
使いの人もお互いが良いのなら構わないと言っていたので決定されたのであった。
男女が一つ屋根の下ですよ!?もっと止めましょうよ!
まぁ…嬉しいような悲しいような…。
それからご飯食べたりお風呂にはいったりなんやかんやで時間は過ぎ今はふかふかのベッドの中にいる
「双ちゃんおやすみ!」
「あぁ…おやすみ」
ちょっと離れたところにあるベッドからお休みの挨拶をする華凛。
(さて華凛はもうちょい寝るまでかかるだろうし居なくなったらまずいだろう、ここから偵察するか…『影眼』発動)
自分の意識視覚を影の中に向け影を伝いながら城を見ていく。
(影が多いほど強く暗い場所や夜ほどこの目は便利だな)
(さて王様の部屋探すか…朝見た感じだとかなり広いからなぁ 魔法使ったら…万が一感づかれたらやばいし、しゃあないめんどくさいが…『解析眼』発動)
今回は魔力だけを見るそれ以外は全て透視をしたかのように薄くなる。
一番上の右端の方だな中々の魔力が2つあるな…他にもあるがとりあえず行ってみるか
「…です……はい…えぇ」
(ん?話し声が聞こえるな…さてどういう話か聞こうじゃないか)
「そうですか…」
「はい…水晶が壊れてしまいまして…大至急用意しないといけません…」
そこにはシルビアと女騎士が話し合っていた。てか水晶の話ですか…。
「壊れた理由など分かりましたか?」
「いえ…詳しくはただ推測ですがユニークや伝説級が連続でましたので、その結果負荷が大きかったのかと…」
「大きい情報量で壊れた…ということでしょうか」
「そんなところだと思います…この話はひとまず置いておきましょう」
「っは!」
ビシっと敬礼をする女騎士。
「そんな固くならなくて良いのですよ?今は私とユーリの二人なのですから」
「ですが…」
「今はこの国を守る騎士としてではなく友人としてお願いしてはダメですか?」
「ですが…いえ…そうだな…シルビィ」
ふむふむ…女騎士の片はユーリ、シルビィ?多分あだ名か何かか…この二人は友達なのかね…てか世間話ばかりであまり良い情報もないしなぁ…。
「あ!それと明日は勇者様方に手ほどきをお願いしますね」
「ああ、分かっているさ、しっかり鍛えてやる少しの間だがな」
「お願いしたいたしますね」
(ふ~んあの騎士様が俺等を鍛えるのか強そうだな…解析眼で調べてみるか)
目を使おうと意識を集中させる。
「…!?何奴!!」
女騎士が反応し剣を抜刀する。
(は?まじかよ…気配に感づかれた?そんなこと…一旦引くか)
「どうしたのですか!?」
シルビアがオロオロとしている。
周りをくまなく見渡し…
(魔法?いやそれにしては何も感じなかった…まさかな…)
「いえ…申し訳ありません、視線を感じたもので…ですが勘違いでした」
「そう…ですかビックリしました…」
その後はユーリとシルビアは他愛ない話を続けた。
その頃自分の体に意識を戻した双樹。
(ん~まさか…見破られたとはなぁ…甘く見過ぎたか?結局王様の部屋も見つかんねぇし…はぁ…明日またやればいいか)
そう言い寝ようと思ったらベッドの中に潜り込んでくる気配がした。
「ん?…華凛かまだ起きてたのか…てかちゃっかりベッドに入ってるし」
「ふぇ?双ちゃん起きてたんだ…うん不安で眠れなくて…」
(そりゃそうか…表面は普通でもやっぱ見知らぬ場所に来たんだしな…当たり前か)
「一緒に寝ちゃダメかな?」
少し赤くなりながら聞いてくる。
(く!だからその顔反則だって!)
「ま…まぁいいよ…不安なら仕方ないだろ」
「うん!」
言うないなや…すぐ隣に移動する華凛。
「ち…近くないっすか?華凛さん?」
(真横やん!…それに腕組んでるし!胸当たってるし!ええ匂いするし!)
「ん?そうかな…この場所が安心できるから…」
「そ…そこがいいならいいけどよ」
(静まれ!ポーカーフェイスだ!)
「双ちゃん顔赤いよ?大丈夫?」
(全然ダメでした!)
「ちょっと…熱いだけだから時期治る治る」
「そっか…」
「おう」
「ねぇ…双ちゃん聞いてもいいかな?」
「なんだよ?どした?」
「あの水晶?だっけ壊れたのってやっぱ…双ちゃんが異能者だったから?」
そう…華凛は知っている俺が…いや俺の家族が異能者ってことと俺もその力を受け継いでいるということも…とある事件のせいで知ってしまった。
「どうだろうな…まぁ水晶が壊れようが壊れまいがどうでもよかったけどなぁ…俺強いし~?」
「ふふ…そうだね」
「ぐ…まぁ何も心配することねーよ」
「うん…」
「明日も早いんだし、そろそろ寝ようぜ」
「そうだね…おやすみ…双…ちゃん…」
「あぁ…おやすみ華凛」
すぐに規則正しい寝息が聞こえてくる。
「たく…安心したような顔で寝やがって…守ってやるさ…何が合ってもな」
そして眠りについた。
こうして異世界での最初の夜が終わったのだった。