オレンジ色の髪で…以下略。冥竜編
「最近聖女や勇者といった風な者を作った事はないか?」
「は?」
冥竜が好きそうな、なめらか抹茶プリンを二人で食べていると突然そんな事を言われた。
こたつに座る洋風美形。美形はやっぱ美形だよね、とか間抜けな事を考えつつ食べていたので間抜けな声が漏れた。
「え、なにそれ。ゲーム…の、事じゃない…よね?」
スプーンにすくっていた分を取りあえず口に入れ、眉を寄せて一生懸命思い出そうとしたがゲーム以外に心当たりはない。
冥竜は納得したように頷いて私と同じようにプリンを一口食べた。
「やはり貴方ではないか。面倒臭がりな貴方が世界に手を出す筈がないと思ってはいたが…」
「何があったの?すっごく気になるんだけど」
僅かに眉尻を下げて深い溜め息を吐いた後、冥竜が呆れを含んだ声で説明してくれた。
簡単にまとめると、太陽に選ばれし勇者と聖女、その仲間達が魔王をぶちのめす旅に出て各地で魔物や魔族を虐殺している。という事だった。
太陽に選ばれし?
まっったく、これっぽっちも覚えがない。
「魔の者と聖の者、殺し殺されバランスをとっていたが、魔の者が極端に減ってはバランスがとれなくなってくる。このままではいずれ聖の者も滅びてしまう」
紫がかった黒髪長髪イケメンの憂い顔も美しいね!
いやそうじゃない。
「天竜は?」
「魔の者の被害を減らすべく加護をかけてくれている。いくら人間相手とはいえ、流石に貴方の力を奪う事は出来なかったそうだ」
うーん、確かに世界を構成するのに私の力は入っているけど(作成を手伝ったりしてないが月が私の力を借りて作ってた。この道具借りるね、的な感じで)個人に与えた記憶なんて本当にない。
世界の管理は八竜がしてるし下級神とかそんなのは存在してない…と思う…ん?私が知らないだけ?
考えながら、プリンがぬるくなる前に全部食べて空になった器を消す。
冥竜も食べ終わったようなので冥竜の分も同様に。
「先に月に話してみたのだが、「たまには太陽に働いて貰ったらいいんじゃない?」という事だったぞ」
「えー…面倒な…覚えないのに。いや、やるけど。冥竜、勇者様一行の様子とか出せる?」
思わず嫌そうに顔をしかめてしまったが、どこか縋るような顔をした冥竜に負けた。
軽く勇者様とやらを探してみたが、力が小さ過ぎて見つけられないので冥竜に頼んでみる。
心得たと頷いた冥竜は空中に勇者様一行の様子を映し出した。
『これで貴様の野望も終わりだ!』
『ぐ…下等な人間の分際で…我を滅ぼすなど…認められるかあぁぁ!!』
血まみれで倒れる魔王らしき人物に、血濡れた剣を突きつける勇者らしき人物。周りには魔族らしき死体と勇者の仲間らしき人物達が居た。
丁度クライマックスだったらしい。
姿を確認できたので勇者様一行に流れる力を全て引き上げる。
細かい作業が苦手なので一気に引っこ抜いちゃったけど、まぁいいよね。
『なっ!力が…』
『っ!くらえ!』
『いやっ!勇者様あぁ!!』
とどめをさそうとした勇者が戸惑った瞬間、魔王が勇者の胸をその爪で貫いた。
中心となっていた勇者の死に動揺したのか一瞬全く動けなくなった聖女と仲間達。
魔王にとってその一瞬は十分過ぎる程の時間だったらしく、あっという間に勇者様一行は全滅されられた。
「よし、これで魔王は生き残って勇者様一行は終了。この後人間は数を減らされバランスがとれる、と」
「ああ。手間をかけさせてすまなかった」
頷く冥竜に、気にするなと笑顔を返す。
しかし、何で私に選ばれたとかそんな意味不明な事になってたわけ?
「理由は簡単だ。太陽の力は魔を滅する。その力が殊更強いのは選ばれたからだ、と」
「うーん…あの程度、力の内に入らないような…」
「貴方と比べてしまってはあまりにも脆弱だろうが、下の世界では中々に驚異だったのだ」
「なるほどねー…。ま、とにかくこれである程度は元に戻るでしょ」
その後、冥竜がお礼を、と言ってくれたので三○無双の協力プレイをお願いした。
やー、やっぱ覇王様のシナリオはいいね!