祐武side 1
祐武side
次の日。
足取りが重いまま学校へ向かった祐武は衝撃を受けた。
学年の廊下で女子たちが祐武の顔を見てヒソヒソと噂話をしていた。
『1組の安良川って、唯と付き合ってんのに元生徒会長と浮気してたらしいよー。』
『うっわ……最低。ってか元々新垣先輩と安良川って付き合ってたんじゃないの?』
『浮気とか最低じゃん……。』
『それに唯今日学校来ないって由美がLINE来たって言ってたー!』
祐武は気にせず教室に行き、視線を痛いくらいに浴びながら自分の席に着いた。それと同時に着席のチャイムが鳴り、担任が入ってきた。
「えー。欠席を確認するぞー。峰崎は体調不良のため欠席で、高橋は遅刻かな…。他にいない人いるかー?」
祐武は噂話をしていた女子たちのことを思い出し、バツが悪かった。
朝のHRが終わり、1時間目の支度をしていると、鬼の形相で隆貴が来た。
「祐武!ちょっとこい!」
クラス全員が祐武の方を向き、またヒソヒソと話し始めた。
祐武はできるだけ目立ちたくなかったので、渋々隆貴に応じた。
連れて行かれたのは人通りの少ない階段の下の少し空いたスペースだった。
「おい、どういうことだよ。」
「なにが?主語がなければわからない。」
隆貴はとても怒っていたが、祐武はあくまでも冷静だった。
「朝から女子たちが話してることだよ!お前唯ちゃんのこと好きなんじゃねーのかよ。付き合ってんじゃねーのかよ!ふざけんな!」
「……隆貴に何がわかるんだよ。」
祐武はボソッと言い放った。
「俺と唯のこと、何がわかるんだよ。知ったような口聞かないでくれるか?俺だって悩んでんだよ!真剣だ!真剣に悩んだ結果、こうなっちゃったんだ…。仕方ないだろ……。ほっといてくれよ……。」
祐武はカッとなって言いすぎたなと後悔した。
祐武だって隆貴だって唯だって大人ではない。でも決して子供でもない。とても複雑な時期である。お互いに嫉妬くらいするし、難しいのだ。
「ごめん、カッとなって言いすぎた。」
「いや、俺もそっちの事情とか知らないで突っ込みすぎたわ。ごめんな。」
「うん…。」
「あのさ、俺、昨日唯ちゃんに告ったんだ。唯ちゃんね、ちゃんと、祐武と付き合ってるからごめんって言って断ったんだぜ?」
「……っ!」
「だからさ、お前らが喧嘩して、別れるとかなったら俺、救われないじゃん……。それに、もし別れるとかなったら俺と唯ちゃん付き合っちゃうかもよ?」
「俺は唯がそれでいいならいい。」
「もー!すぐそうやって唯ちゃんがいいならとか唯が望むならとか、自分はどうしたいのさ!お前がどうするかじゃないの?特に今回は!お前がやらかしたんだろ?謝るしかないじゃん!早く仲直りしてくんないと、俺が嫌だ!」
「隆貴、お前超自己中だな。」
「おうよ!自己中万歳!」
そう言い、さっきまでの雰囲気は何処へやらという感じでお互いに笑いあった。