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日米の情報力

 英語のIntelligenceとInformationの違いがわかるだろうか?もちろんそれぞれに色々な意味があるのだが、自衛隊では便宜上Intelligenceを情報、Informationは情報資料と分けて訳している。では、情報と情報資料の違いは何だろうか?

 「複数の異なる手段で収集した情報資料を併せて分析して、導き出された答えが情報になる。」

 だ。

 たとえば、航空写真に敵の防御陣地らしきものが写っていたとする。これだけでは、ただの情報資料である。その地域へ潜入させた偵察部隊から、敵兵が頻繁に出入りしているとの報告を受ける。この報告も情報資料だ。このふたつの情報資料を併せて、「はたして敵がここで防御する戦術的妥当性があるのか?」というフィルターを通して分析し、出てきた結論、「ここで敵が防御をしている。」が情報になるのである。

 したがって情報と情報資料では、その位置づけにおいて全くの別物だ。アメリカではこのようにこの2つをしっかりと区分しているのだ。こういった言葉の使い分けもしない日本人。情報などタダだと思っている日本人。こういうところに日本人の情報に対する意識の低さが表われているのではないだろうか?

 一般に軍隊では情報を扱うセクションを第2科とか第2部などと「2」で呼称する。そして、米軍では「2」に属する兵士は優秀な兵士と決まっているそうだ。当然そこのトップはすこぶる優秀な将校が就くことになる。もちろん、全兵士が優秀ならば、人選に特別な配慮などする必要性もないのだが。残念ながら日米とも現実は違う。このあたりの事情は、大人ならわかるだろう。

 日本人が作っている組織である自衛隊は、やはりアメリカ軍とは違う。ある日米のパーティーに参加したときの出来事だ。

 「こちらが2科長です。」

 と紹介すると、すかさず米軍の将校たちが「オー!」と歓声を上る。続けてこう叫ぶ。

 “He must be smart!”(彼は賢いに違いない、“smart”とは頭がいい、賢いという意味)

 ここで、この2科長が米軍の2科長のようにスマートな方だったならば、自ら英語で一言こう返したのだろう。

 「いや、それほどでもありませんよ。」

 と。

 だが、この2科長は何を言われているのかさっぱりわからず、しばらくキョトンとしていた。しかし、これを隣で聞いていた2科長の上官にあたる副連隊長が突然大笑いする。

 「2科長がスマートだぁ??ぎゃはははあ~、こりゃ、傑作だ~あ。」

 これで、ようやく2科長も自分が米軍の将校から「スマート」と表現されたことだけはわかったようだ。そして、おもむろに自分の体をさすりながらこう応える。

 「スマート?確かに、私はスマートだが・・・?」(この科長は、スマートを体が細いことと勘違いしていたのだ。)

 2科長のボケもあってか、しばらく副連隊長の笑いは止まらなかった。この間、米軍の将校たちはなぜ副連隊長が大笑いしているのかがわからず、ただポカンとしているだけであった。すぐ隣にいた私も、2科長本人を目の前にして、英語だから本人には気付かれることはないとわかってはいても、こんなことは口が裂けても言えなかった。

 「この2科長はぜんぜんスマートじゃないんです。アメリカとは違うんです。」

 ちょっと古いが、大韓航空機撃墜事件を覚えているだろうか?金賢姫の大韓航空機爆破事件ではない。大韓航空機は撃墜されたり、爆破されたりとたいへんなのだ。 

 1983年9月に民間航空機である大韓航空機がサハリン上空でソ連の戦闘機により撃墜された。当初、ソ連側は事件への関与そのものを否定していた。しかし、自衛隊はソ連の戦闘機が滑走路路を離陸するところから、ターゲットである大韓航空機を発見と報告して撃墜し、再び基地に帰還するまでの管制官とパイロットの間の一連の交信をすべて傍受・録音していたのだ。そして、このテープをソ連軍による大韓航空機撃墜の動かぬ証拠として国連に提出したため、ソ連が撃墜の事実をしぶしぶ認めたという事件だ。

 「日本の『2』もすごいじゃないか!」

 いや、これは日本がアメリカとの情報戦に負けた結果なのだ。なぜなら、自衛隊がソ連の戦闘機の交信を傍受していたのは、日本への攻撃に備えてのことだ。したがって、自衛隊はこの撃墜事件について、傍受していたことすら一切公にする気はなかった。これを公にしてしまえば、ソ連は傍受されていたという事実を知り、対策を講じてくるからだ。

 ところが、なぜかアメリカ政府から日本政府に対して公表するように圧力がかかる。

 「自衛隊が傍受に成功していることはわかっている。録音テープを出せ!」

 どうしてアメリカは知っていたのか?自衛隊はソ連を傍受していたのだが、アメリカは青森の三沢にある通称「象の檻」(象が入るぐらいの巨大なアンテナ群)を使って自衛隊の電話回線をも傍受していたためだと言われている。

 「アメリカは汚い!」

 それは違う。最高のIntelligenceを導き出すためには、最高の人材を揃えてあらゆる手段を使い、可能な限りのInformationを手に入れる。これが世界の常識だからだ。ここでは、同盟関係などという甘えさえ許されないのだ。

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