表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロの技術屋、学園の裏支配者になる  作者: 八坂 葵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/40

第39話 模範的な演劇

 完璧な嘘とは、真実の中に一滴の「失敗」を混ぜることだ。


 あまりに清廉潔白すぎれば、かえって怪しまれる。

 だから私たちは、監査官ギルバートのために、涙ぐましい「更生の物語」を演じて見せる必要があった。


 ◇◆◇


 最終査察の日。

 実技演習場には、張り詰めた空気が漂っていた。


 ギルバートが腕を組み、生徒たちの魔法を見定めている。

 焼却炉という「膿」を出した後、生徒たちがどれだけ健全な状態に戻ったかを確認するためだ。


「......次。ミリア嬢」


 指名されたミリアが前に進み出る。

 彼女の右手首には、私が調整した義手型の魔導回路が装着されているが、今日はあえて包帯を外し、痛々しい傷跡を晒していた。

 傷はメイク上手の(フィオナ)作だ。


「始めます」


 ミリアが杖を振る。

 放たれた火球は、以前のような轟音を伴う砲撃ではなかった。

 ボッと小さく燃え上がり、的の手前で消える、未熟で不安定な魔法。


「......くっ、申し訳ありません。まだ、感覚が戻らなくて......」


 ミリアが悔しそうに唇を噛む。

 演技だ。

 彼女は今、私の作った出力制限装置を最大にして、わざと「必死にリハビリ中の元天才」を演じている。


 本来なら、あの的ごと壁を吹き飛ばせる出力を、指先一つで制御しながら。


 ギルバートの表情が緩んだ。


「......良い。以前のような異常な魔力は見られない」


 彼はミリアの姿に、自分の求めていた「挫折と更生」の物語を重ねたのだ。

 これこそが教育のあるべき姿だ、とでも言いたげに。


「次、下級生のグループ」


 続いて、私の顧客である生徒たちが魔法を披露する。


 彼らもまた、指輪やブレスレットに仕込んだ「抑制石」を作動させ、額に汗を浮かべながら、拙い魔法を放ってみせた。

 時折、失敗して尻餅をついたり、杖を落としたりする演出付きで。


「......ふむ。泥臭いが、これが本来の実力か」


 ギルバートが手帳に何かを書き込む。

 合格だ。

 彼は「完璧な優等生」よりも「欠点だらけだが真面目な生徒」の方を信じる。

 その真面目さが、全て私の脚本通りだとも知らずに。


 私は観客席の隅で、遠見の水晶板越しに指示を出していた。


『よし、全員合格ラインよ。最後はフィオナ、あんたが締めて』


 イヤリング型の通信機から、フィオナのため息が聞こえた気がした。


 彼女が優雅に歩み出る。

 その杖には、あえて何の細工もしていない。

 彼女だけは「本物」を見せつける必要があるからだ。


「――氷結」


 一言。

 演習場全体がダイヤモンドダストに包まれ、全ての的が一瞬で氷像へと変わった。

 圧倒的な実力。けれど、そこには以前のような「不自然な魔力上昇」はない。

 純粋な才能の輝き。


「......見事だ」


 ギルバートが初めて素直に称賛した。

 これで証明された。

 この学園には、努力する凡人と、一人の真正な天才しかいない、と。

全校生徒による一世一代の大芝居。 完璧な「弱者の演技」は、堅物の監査官すらも欺きました。


次回、第40話「去り際の種明かし」

嵐は去りました。しかし、去り際の彼が残した言葉は、セレナの背筋を凍らせます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ