ヴェロキラプトル
黒い煙が上がっていた場所は、爆音を聞いた場所からそう遠くはなかった。あの後はその爆発のせいか、恐竜の姿を見ることはなかった。だが、常にいろんなところで種類はわからないが、肉食、草食限らず遠吠えのような声が、聞こえている。
可能な限り、その声の主たちには会いたくないと思った。
だが、ここへ来るまでの間、常に背後で僅かな気配を感じていた。あたりを見渡しても、何かを視認できるわけではない。あくまでただの気配だ。
でも、気のせいとは思えない。とりあえず、背後への警戒は怠らず、爆発現場へと向かった。
そこは、さっき身を隠した金属の筒と同じ素材の建物が並んでいた。つまり、恐竜ではない、文明を築ける知能を持った生物がここにいたということになる。
いや、もしかしたら、まだいるのかもしれない。それこそ、今も常に感じる気配の正体の可能性もある。
そして、そこにもやはり、「ダイナー」という文字が書かれている。
しばらく、歩き回っていると黒煙にだんだんと近づいてきた。いったい何が爆発したのか?もし、人為的に爆発していたのなら、その爆発を引き起こした何かが近くにいるかもしれない。
こんな時に、メガホンレーザーがあれば心強いのだが、残念ながら今は丸腰だ。なのに体が自然と歩みを進める。
まぁここで何もなければ、それはそれで詰んでいる。一か八かの精神なのだろう。
真っ黒い濃い煙は収まるどころか、どんどんとまるで何かを隠しているかのように立ち込めている。だが、そよ風のお陰で僅かな煙の隙間から白くて楕円形のなにかが見えた。
「卵・・・?」
なぜ、卵から煙が上がっているのだろうか?いや、そもそも卵ではないのではないか?そんなことを考えていると、やはり何かに見られている気配を今度は強く感じた。
勢いよく後ろを振り返ると、ようやく物理的な反応を視認することができた。そう、何かが勢いよく通り過ぎたのが見えたのだ。
「なんだ?」
こいつはなぜ逃げるのか?もしかして囮なのか?奴に気を取られているうちに、後ろから別のやつが襲ってくる。それこそ、映画と同じ展開だ。なら、相手は中型の肉食恐竜で、身体的にも知能的にも優れた種、「ヴェロキラプトル」の可能性が高い。
もしこの憶測が正しければ、どこへ逃げても一緒かもしれない。それこそ、ここに文明の跡だけ残っている原因も、奴らなのかも知れない。するとまた、気配を感じる。
だが、今度は気配だけではなく、足音まで聞こえてきた。やはりこの速さは、ラプトルに違いない。他にもいるのか?
「なんだよ・・・!いるなら出てこい!」
通じるわけもないのに、恐怖のあまりまるで、威嚇するように大声で叫んだ。するとその声に反応するかのように、また見失った方向から、足音が聞こえてきた。
もしかして、一匹なのか・・・?
自分で言うのもなんだが、こちらを襲うには絶好のチャンスのはず。だが、奴はただこちらの周りをぐるぐると回っているだけだ。
だったら、逆にこっちからやつを捕まえるのもありかもしれない。そう考えていると、その考えに賛成の意を表すかのように、お腹が鳴り出した。
その間も不定期に奴は、周りを走っている。こちらを襲う気がなく、そして一匹しかいないのであれば・・・。タイミングを測って、その軌道に・・・。
意を決して行動に出た。だが動き出した後から、もし相手の目的が狩猟じゃなかったとしても、激しい抵抗に遭うかもしれない。それはそれで大怪我をする可能性が頭をよぎった。
正直後悔した。だが、もうあとは運命に身を委ねるだけだ。
すると、何かが勢い余ってこちらに突進してきた。こちらも耐えきれずにその体当たりをモロに受け、お互いに吹き飛ばされてしまった。
全身に激痛が走る。だが、生きていた。体勢を少し変え、奴の方に視線を向けると、奴はまだ蹲っている。もう、ここまできたら意地だ。
奴よりも先に起き上がってやる。
恐る恐る体を動かす。だが、目立った痛みはなく、フラフラと起き上がることができた。
まだ、奴は動かない。死んでしまったのか?やはり見た感じ、こちらの推測通り相手はラプトルだ。やつらは賢い。もしかしたら、動かないのも罠かもしれない。
僕は恐る恐る近づいた。すると、かすかにやつの呼吸を感じる。やはり生きている。だが、まだ動こうとはしない。そのまま手を伸ばして、やつの体に触れた。
すると、奴は叫び声を上げながら、その場で飛び上がった。突然の出来事に心臓が数メートル飛び出したかと思った。
「ジーブス!食べないで!」
なんと奴はしゃべったのだ。しかもしゃべるどころか、メガネまでかけているではないか。
「食べるって何を?」
「私に決まってるじゃない!お願い、命だけはお助けを!」
やつ・・・いや彼女は、日本語で命乞いをしている。
「食べないですよ?」
「え?」
若干の嘘はあるかもしれない。とは言っても、食べたかったからこんなことをしたわけではない。それにあんだけ自分の言語を喋れられたら、食べようとしても食欲が失せそうだ。
「ジーブスって野蛮な生き物だから、私てっきり食べられちゃうかと思った。でも、こんな至近距離で見れることなんてなかなかないし、そもそも何でジーブスがこんなところにいるのかも気になったから、つい近くで見ちゃってたのよ。」
よく喋るラプトルだ。どうやら彼女は何かと勘違いしているようだ。
「あなたは一体何者なんですか?」
すると彼女は立ち上がり、首を少し上に振りながら、器用にメガネを元に位置に戻した。
「私はダイナー星の技術開発本部長兼元IGTO宇宙科学部門局長のブルターです。以後お見知り置きを。」
なんかすごい肩書きが並べられていた。
ブルター・・・、ダイナー星・・・。今までの旅で時々出てきた名詞だ。
いまさらだけど権利で怒られないよね?
評価、ブックマーク等もしていただけるとかなり嬉しいです!
よろしくお願いします。
感想も待ってます。
記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




