ダイナソーパニック
今、僕はこの世に生きている人間が、人生においてどんなに頑張っても経験できない体験をしている。
人によっては、羨ましいと思うかもしれない。いや、この状況においては、誰もそうは思わないかもしれないか・・・。でも、テンションが上がる人はいると思う。
目の前に自分の顔の二倍、三倍は大きい葉っぱが行手を阻む。だが、そんなものに引っ掛かって、足を止めている場合ではない。止まれば最後、それは死を意味する。
僕は目の前の葉っぱを掻き分け、死に物狂いで熱帯のジャングルを走っている。後ろから迫り来る足音は地面を揺らし、確実に近づいてきているのが分かる。
そう、僕はいま、恐竜に襲われているところだった。しかも相手は、恐竜の中でも秀でて凶暴だと名高い、ティラノサウルス・レックスではないか。
やはり、映画や図鑑で見た通り、鋭い牙に大きな口、そして何よりその巨体から発せられる咆哮は、体の芯まで振動させるほどの大きさ、いや、音の大きさというより、あれはもはや物理的攻撃だ。
しかも、想像以上に汚い声だ。
ところが、幸いにもティラノサウルスはあまり足が速くないようだ。そのおかげで走りにくい場所でも、追いつかれることはなかった。だが奴はどこまでも追いかけてくる。一体いつになったら諦めるのか?
こちらの体力もそろそろ限界に近づいてきている。ティラノサウルスの生態とは一体どんなものなのか?もし、映画の通りであれば、鼻は良さそうだが、目はあまり良くないのではないか?
となれば、匂いをどうにか誤魔化さなければならない。距離は広がってきたが、やはりまだ着実にこちらに近づいてくるのが、足音でわかる。
僕は、マラソンの授業をサボりがちだった自分を恨みながら、近くに泥のぬかるみを見つけた。
僕は、ぬかるみの泥を全身に塗ったくった。こうすれば人間の匂いが泥でかぶさり、やつを欺くことができると、映画が言っていた。
全身泥まみれになった僕は、念の為さらに走り出した。すると、確かに足音がだんだんと小さくなっていくではないか。
「ありがとう、ハリウッド!ありがとうスピルバーグ!」
僕はのちに生まれる文化とその巨匠に敬意を表した。
もう当分やつが追いかけてくることはないだろう。
その時、目の前に巨大な何かのしっぽが勢いよくこちらに向かってきた。そのまま尻尾に振り払われた僕は、数メートルは吹き飛ばされたであろう。そして、思いっきり体側から着地した。
その時、とても嫌な音がメガホンレーザーがある内ポケットから聞こえた。恐る恐る中を見ると、そこにはみるも無惨な姿のメガホンレーザーが姿を表した。
「マジかよ・・・。」
正直、そんな言葉で済む話ではない。もう現代に戻れない・・・。この場合は未来というべきなのだろうか?
頭の中でカイとの別れ際の会話が再生されている。
「君が生きていれば、この戦いに勝機はある!だから・・・、死ぬな!」
「この状況でもその言葉を言えるか?」
当てもなく、言葉を投げ捨てた。隣で、さっきこちらをふっとばしたしっぽの持ち主の恐竜、大きな襟飾りに3本の角が特徴のトリケラトプスが牛のような雄叫びをあげながら呑気に歩いている。
どこかに守ってくれそうな恐竜はいないのか?というより、帰り方を知っている賢い恐竜はいないのか?
まぁいるわけなんてない。
すると突然、爆発音があたりに響き渡った。あちらこちらで、牛のような大きな声が聞こえてくる。どうやら、見えていなかっただけで、この辺りは草食の恐竜がうじゃうじゃいるようだ。
爆発の音はそう遠くない。僕は、辺りを見渡すと、明らかに爆発したと主張するように、黒煙が狼煙のように上がっている場所を見つけた。
なんで、こんな文明の発達もしていないところで、爆発なんてものが起こるのか?もしかしたら、何かあるかも?少なくとも野晒しにならないような場所があるかもしれない。
淡い期待を抱きながら、黒い煙の方角へ歩み始めた。向かい側からは、トリケラトプスや、ステゴサウルスと言った名の知れた恐竜から、それに似たパチモンみたいな恐竜がわんさか、こちらに向かってくる。
向こうもパニック状態なのか、全くこちらは無視で突進してくる。まぁ精神的には、歩きスマホで前を見ていない連中よりかはマシだが、肉体的にはこちらの方が脅威だ。
しかも、相手は巨大な生物だ。いきなり目の前に現れても、向こうが避けない限り、避けきるのはかなり至難の業だ。
そして、こちらへ向かってくるのは、恐竜だけではなかった。あれは大木か?いや大木にしては、色味のない感じだ。金属に見えるが・・・。なぜこんな時代に金属なんてものがあるんだ?
その物体は大型の草食恐竜に引っ掛かっていたのが取れて、その勢いで転がっているようだったが、だんだん摩擦抵抗のおかげで、止まりかけていた。
よく見たらやはり金属で、立方体の中は空洞になっている。これがなんなのかはひとまず置いておいて、とりあえず、この騒動が治るまで、この筒の中に隠れることにした。
中に入ってから、二、三回中型の恐竜っぽいのが、体当たりしただけで、ほとんど無傷の状態で、恐竜たちの足音が収まった。
外は、何事もなかったかのように静かで、空を飛んでいるプテラノドンのなり損ないみたいなやつも、悠々と飛んでいる。
黒い煙はまだ立ち上っている。だが早くしないと、収まってしまったら目印がなくなってしまう。
だが、筒から出た時、その筒に見覚えのある言葉が目に入ってきた。
「ダイナー。」
もしかして、ダイナー星のことか?
ん?なんで書いてあることがわかるんだ?
誰かいるのか?
そう考えると確かに、視線を感じる気がする。
物語は我々に知識を与えてくださる
評価、ブックマーク等もしていただけるとかなり嬉しいです!
よろしくお願いします。
感想も待ってます。
記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




