旅の目的
しばらくすると、コンビニに一人の女性が入ってきた。見た感じ彼女と同い歳か少し下くらいの学生っぽい見た目だった。
「あ、ごめんごめん。急なにありがとう。」
そう言いながら、二人はバックヤードへと入っていった。
普通裏口から入るものじゃないのかと思ったが、この際どうでもよかった。何せ、もうすぐ母親に会えるかもしれない。
だが、問題はそう簡単に面会ができないということだ。別にあの当時も病院へいかなかったわけではない。何度も病院には足を運んでいた。
だから、今だって別に病院へ行ったからといって、面会できる保証なんてない。せいぜい母親が入院している病棟を眺めて終わるのがオチだろう。
しばらくして、私服姿の彼女が現れた。
「本当に大丈夫なんですか?」
「あー平気、平気。店長に怒られるのは慣れているし、逆にあの子が彼氏とデートするってなって、代わりに私が出勤したこともあるから、お互い様よ。」
今の若い子達はこんな感じなのか?
「早く行くよ。」
そう言い残し、彼女はコンビニから出て行った。僕は、自然とその言葉について行ってしまった。
彼女のスクーターの後ろに跨がった。多分このスクーターって二人乗りできないのでは?と思うほど小さかった。
「しっかり捕まっててよ。」
そう言われるとかなり照れくさかった。そして普通は逆だろ!なんて思ってしまった。多分、心のどこかで、逆だったらよかったのに、なんて思っていたのであろう。
「手、震えてるよ?」
彼女の腰に捕まった手が、どうしても震えてしまっている。彼女も多分それを茶化しているのだろう。
それからの道中はどうやって母親と面会するかをずっと考えて、イヤらしい気持ちを押し殺していた。こんな提案をしてくれて、自分のために行動をしている人に対しても、下心を抱くなんて最低だと、自己嫌悪に陥っている。
そして、母親が入院している病院へ到着した。彼女の方向音痴のせいか、それとも僕のナビ能力が低かったせいか、到着まで想定の何倍も時間がかかった。
「それで、どうしたらいいんですかね?多分行ったところで、面会できるかどうか?」
だが、彼女は自信満々な顔をしていた。
「私に任せて!実はこの病院なら、ちょっとしたコネを使えるかもしれない。」
たとえコロナでなくても、今の時間だったら、面会時間が終わっているくらいの時間だった。
「本当に大丈夫なんですか?」
すると、彼女はサムズアップととびきりの笑顔で答えると、病院の中へ入って行った。まぁしばらくしたら、ダメだったとしょぼくれた顔で帰ってくるだろう。
その時、どこか聞き覚えのある電子音みたいなものが聞こえた。これは確か、タイムロックした時の音か?気のせいの可能性もある。何せタイムロックの音も、聴き慣れた音すぎて、タイムロックをしたから発せられた電子音だったのかと聞かれれば、自信を持って答えられるわけではない。
だがもし、タイムロックをした音だったのなら、恐らくカイは、息子くんの住む場所を見つけたのだろうか?
その時ふと、さっきのカイの言葉を思い出した。
「くれぐれも、余計なことはするなよ?特に歴史を変えるようなことは厳禁だ。そして、過去にとらわれないことだ。君は振られたし、死んだ者は生き返らない。以上!がんばれ!」
過去にとらわれない・・・。死んだ者は生き返らない・・・。
「おーい!」
彼女がなんととびきりの笑顔で帰ってきた。
「行っても良いって!でも今回が特別だからね。だから、他言無用でお願いします。」
そう言いながら人差し指を口の前に当てていた。
まさか、本当に今から母親に会えるのか?そう思えると、もうそれ以外のことは頭から離れていった。
カイにタイムトラベルの話をされた時に、いつかはこの瞬間が来るのではないかと、期待している自分がいた。いや、むしろこの瞬間のためにあの時、カイについていく決心をした。
僕は病院の中へ入った。だが、彼女はついてこない。
「一緒に行かないんですか?」
すると彼女は笑顔で答えた。
「家族水入らずを邪魔したくないし。」
本当に彼女には感謝しかない。
「本当にありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそ。本当にありがとうね。」
今の彼女の言動に多少の違和感を感じたが、それよりもあの日からの悲願がついに叶うのだ。
会って何から話せば良いのかわからない。この時代にいる僕だったら何を話すだろうか?そんなことを考えながら、病室へと向かうエレベーターに乗り込んだ。
やはり病院のこの匂いは好きになれない。
そしてエレベーターが到着の合図を鳴らすと、扉が開いた。母親が入院している号室は今でも覚えている。一度も行ったわけではないが、あの日、自分の身分を名乗る時、何度も言ったセリフの中にあったのだ。
そしてついにその号室の前に立ったが、母の姿はなかった。名札はあるのに。
母は重篤患者だ。そんな野晒しの場所にはいないのだ。
だがそれよりも、いま、病室の窓の外で繰り広げられている光景に目を疑った。
なんとカテリエル製のあの球体に足が生えたような乗り物が何十体、いや何百体も街中を歩いているではないか。そして、周りの建物にレーザー光線のようなものを照射している。
そして一機の乗り物が発したそのレーザーがこちらの方角に飛んできた。
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




