スクーター
カニ・・・。
緊急事態宣言の外出自粛が謳われている日本において、カニを見つけ出すのは至難の業だった。4月から約1ヶ月間発令された緊急事態宣言。あの時、日本中が外出自粛を余儀なくされた。
正直、あそこまで日本中が静まり返る日が、自分が生きている間に起きるとは夢にも思っていなかった。
この1回目の緊急事態宣言では、ありとあらゆるお店や施設が休業状態となり、歩いている人の数もかなり少なかった。中には逆に外を歩いているだけで、非国民と言わんばかりに、SNSに晒せれる者もいた。
そんな状況下において、カニというまぁまぁ高級食材を探し求めるのは、やはり至難の業だ。
カニピラフが美味しい近くの海鮮丼屋はシャッターが閉められ、緊急事態宣言の張り紙が貼られ、
大きなカニの手足が動くオブジェが一際目を引く、カニ料理のお店もカニはどうやら眠っているようだった。
男二人、しかも一人は外国人と、子供一人の組み合わせは、人が少ないせいで、一際目立っている。そもそもあの瞬間、日本に外国人が減ったのもまた一つの要因だったのかもしれない。
「すまんなぁ、コンビニ飯で我慢してくれるか?」
カイの提案に息子くんはコクリと頷いた。幸い近くにあったコンビニは時短営業とはいえ、営業はしていた。
中に入ると、店員の姿はなかった。まぁ恐らく裏にいるのだろうが。
自分はあまりお腹は空いていなかったが、息子くんとカイは、相当お腹が空いていたのか、大量の食事を買い物かごに放り込んでいた。
まぁ、何も食べないわけにもいかない。サラダチキンあたりでも食べればいいか、と思った時、最高にいいアイディアが頭に降りてきた。
「カニカマ!」
思わず声に出してしまった。今の自分には、カニカマスティックが輝いて見える。
「君、まさかカニの代わりに、カニに似せた魚のすり身をこの子に食べさせる気か?」
カイは人聞き悪い言い方をした。
「そうは言ったって仕方がないだろ?無いんだから。」
どうにか息子くんには聞こえないように、小声で話した。
カイはどこか浮かない顔をしていたが、ひとまず大量のコンビニ飯をレジに通し、コンビニを出た。
「それで、これからどうするの?」
「ひとまず、この子の住む場所を探さないといけないなぁ。」
コンビニの外で話しているだけで、通行人は若干嫌な顔をしていた。まぁ、ほとんどマスクで顔が隠れているから、本当に嫌な顔をしているかはわからないが。
それに我々はマスクをしていない。
「里親を探す?それとも養護施設とか?」
「地球人じゃないんだから、この子は一人で生きていけるさ。」
「でも学校とかもあるだろ?」
「地球人と同じ教育を受けて、バカになられたら困るだろ。」
なんとも酷い言い草だと思う。
「そんなことはないだろ?」
そう言いながら、息子くんのために、カニカマスティックを袋から開けた。不思議そうにカニカマスティックを一口かじっていた。その時ふと、ある人物の面影が頭の中でチラついた。
まさか・・・。いやぁ・・・。
すると、カイは話を続けた。
「でも、この子がバカになったら、あの時、シールドを解除することができなくて、レットストーンを奪われていたかもしれないぞ?」
やっぱりそうなのか?
「それは、どういう意味?」
大体の想像はついていた。だが、はっきりとした答えをちゃんと言及してもらうために、あえてストレートな質問をした。
するとカイは全てを見透かしたような表情を浮かべた。
「そうだって、君が思っている通り、この子はカニカマだよ。」
なんてこった。こんないい子があんな汚いおっさんになってしまうのか?
いや・・・。だとしたら、歳がおかしくなる。あの時から5年しか遡っていないはずだ。なのに・・・、こんなに変わってしまうものなのか・・・?
「だったらカニカマがいたあの辺りに連れて行けば良いってことになるんじゃないのか?」
「良いかい?ミスターブルーズ。世の中はそう簡単に物事は動いていないのよ。あの場所に彼がいた経緯がわからないと、安直にその場所に住まわせても、別の可能性が消えたり、色々と問題が出てくる。それに、今はただでさえ、歴史が変わってしまってる。こういう時こそ、慎重にことを運ぶ必要があるんだよ。」
の割には、我々はここまでの道中、かなり安直に歴史を変えてきている気がするが・・・。
息子くんは、見事にカニカマスティックを平らげていた。
そんな話をしている時に、一台のスクーターが我々の横を通り過ぎ、コンビニの駐輪場に止まった。
なんかどこかで見たことがあるような気がする・・・。スクーターの持ち主は、スクーターから降りると、ヘルメットを外した。
「カイ・・・、見ろよ・・・。」
その顔を見て、思わずカイの肩を叩いた。
「なんだよ!」
少し癇に障ったようだが、そんなことを言っている場合ではかった。
「あの子・・・。」
カイもそのスクーターの持ち主を見ると、目を見開いていた。
「メイジー・・・。」
「いや、メイジーではない。だが、何か関係はあるかもしれない。」
カイは、非常に興味深そうに彼女を目で追っていた。多分、彼女は少し気味悪かったのだろう。一瞬こちらに視線を向けた途端、再びこちらに視線を向け直した。
「あら・・・、またいらしたんですね!」
彼女は多分、自分に向けて話しかけてきたと思う。
「これまた実に興味深いことになったなぁ。」
カイの言う通りだった。だがここへきて、やらなければいけない事が二つも増えてしまった。いや、僕にとっては三つかもしれない・・・。
カニカマスティックはローソン派です
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




