変わりゆく歴史
町外れの雑木林。まさかここも綺麗さっぱり何事もなかったように、木々が空に向かってそびえ立っているとは思っても見なかった。
ここまでのことができるのは、少なくとも地球人ではないのは明白だ。
「この辺りか?」
もう、どこが現場だったかなんて、見ただけでは何一つわからない。一応、ATシールドを見抜くために、懐中電灯で周りを照らしながら進んでいるが、日の光のせいで、申し訳程度にしか機能していなかった。
すると息子くんが、地面をじっと見つめている。
「これって?」
普通の土にしか見えなかった。だが、息子くんには何かが見えているようだ。
「二、三個、道ができてますね。」
「ええ。」
「ごめん、おじさん全然意味がわかってないかも。」
かもではなく、分かっていないのだ。すると、息子くんが説明をし始めた。
「あの船の素材のカテリエルと、この地球の恐らく空気が化学反応を起こして、別の素材になり、それが地面に落ちてます。これを辿れば、目的地を見つけることができると思います。」
もしかしたら、酸化のことを言っているのかもしれない。だが、そんな残骸、こちらは肉眼で確認できない。
まぁ息子くんが見えているのであれば、息子くんについて行くまでだ。
だが、道が二、三本になっていると言っていた。つまり、あの船が二、三機・・・。奴らはまだこの地球にいるのだろうか?
我々は、カテリエルの酸化反応を頼りに、カイたちを探した。
しばらく、歩いていくと、急に息子くんが立ち止まった。
「どうかしたか?」
「この辺り、随分と多いです。」
見た目には、やはり全く違いが分からない。だがここがその酸化反応が多いということは間違いなく、ここが昨夜カイと別れたあの場所だ。
だが、周りを懐中電灯で照らしてみても、ATシールドが貼られている痕跡はなかった。
「あいつどこいったんだ?」
すると、茂みから明らかに人が枝葉を踏みつけた音が聞こえた。
絶対誰か来る。
相手がこちらに気づいていていなくても、とにかく隠れる必要がある。幸いにも周りには、匿ってくれる木々がたくさん生い茂ってくれている。
だが、残念ながら、相手にはどこに隠れているかなんてお見通しだった。一目散に音の正体は、我々が隠れている茂みに手を伸ばし、胸ぐらを掴んできた。
「貴様は、どこにいたんだ。少しはじっとできなかったのか?」
鬼の剣幕のカイの鼻の穴しか見えていない。
「だって場所がわからないって思っていたから。」
「町外れのモーテルだろ?分かるよ。君が考えていることくらい。」
いや、でもそんなのこっちはわからないし。
「すまん。」
大人の対応をした。だが、カイの怒りは収まらなかった。
「すまんって、お前この有様を見ろ。何が見える?」
カイの示した方向には、何事もなかったかのように、木々が生い茂っていた。
「何も見えません・・・。」
「そう、何もだ!昨夜の痕跡は何一つだ。」
どうやら正解だったようだ。
「いいか?こんなことを地球人ができるわけがない。そこまでは分かるか?」
黙って頷いた。
「だったら、IGTOかゲルダファのどちらかの仕業だ。まぁこんな大々的にやるのはIGTOだが、もし仮にどちらかが分からなかったとしても、なぜ、君はこの子を連れて、外をぶらぶらして安心だと思えるんだ?君の頭に危険のきの字もなかったのか?」
カイは、大変ご立腹だ。
だが、そんなことを気にせず、息子くんがカテリエルの酸化反応が激しかった部分で佇んでいた。
「ご両親は、立派な人たちだったよ。」
カイは静かに、息子くんの横に立ち、つぶやいた。しかし、息子くんは何も言わなかった。
僕もカイの横に立った。
「奥さんは?」
カイの耳元で囁くと、カイは黙って首を横に振った。
息子くんは気持ちの整理がついていないようで、なんとも言えない表情で一点を見つめている。
「寂しいよな。」
カイは天を仰ぎながら言った。
大切な人が一瞬でいなくなる気持ちはよくわかる。認識は出来ているはずなのに、頭の中で整理しきれない。いや、整理してくれないのだ。
もうこの世界にいないと分かっているのに、家に帰ったら、出迎えてくれると思ってしまう。僕は少なくともいまだに、みんなはまだ旅行に出掛けていて、帰ってこないだけだと思う時がある。
急に、自分の家族に会いたくなった。
すると、カイがゆっくりと俺の肩を掴みながら、息子くんのそばを離れた。
「いいか!問題はもう一つある。」
一つはどれのことなんだ?
「IGTOは昨夜、こんな大掛かりな仕事を、誰にも見られずにやり切った。」
「そんなこと出来るのか?だってあの場には、軍や政府の連中がうじゃうじゃいたじゃないか。あいつらが、そう簡単に諦めて帰るとは思えないけど。」
「ああ、だが奴らはやり遂げた。なぜかわかるか?」
最近頭が冴えている。
「ATシールド。」
カイは頷きながら話を続けた。
「しかも、性能が少し違う。」
ATシールドといえば、あのレットストーンの一件の時に何者かが使用していたが、IGTOは白昼堂々と外を通っていた。つまりIGTOがATシールドを使ったわけではない。
「歴史が変わりだしている。」
それが何を意味しているのか?いまいちピンとこなかった。
「なら、どうするんだ?」
「とりあえず、この子はここには置いていけないから、別の時間に送る。まずはそこからだ。」
そう言うと、カイはメガホンレーザーを取り出し、息子くんを呼んだ。
「すまんが、君のお父さんとの約束があるから、君を安全な場所へ連れて行く。いいね?」
息子くんは黙って頷いていた。そして、ケイが最期を迎えたであろう場所の地面に手をついて、恐らく両親に別れを告げ、再び我々の元へ戻ってきた。
そしてカイが、メガホンレーザーを押すと、ハロウィンのニュージャージーの景色が揺らぎ、都市伝説になるであろう不思議な事件が起きたこの街を後にした。
そして周りの景色が一気に見覚えのある場所へと様変わりする。
「東京?」
それにしてはやけに人が少なかった。
「ああ、2020年4月だ。」
次に我々がたどり着いたのは、コロナ禍真っ只中の日本だった。
「今の時代なら、人との関わりも少ないし、気づいたらいた子供みたいな感じでいけそうだな。」
普段なら、何が行けるんだよだの何だのつっこむワードが出てくるのだが、今は別のことで頭がいっぱいだった。
この先数キロ離れたところに、母さんがいる。
次回新章?
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




