表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミスター・ブルーズ 〜目覚めたら誰もいなかった〜  作者: マフィン
ラジオと嘘と宇宙人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/102

メッセージ

 現在の時刻は、夜0時を5分ほど過ぎたところ。こんな真夜中にもかかわらず、今日のニュージャージーは不安と恐怖に支配されている。


 町外れの雑木林付近には、いよいよ軍の車と装甲車しか視界に入ってこなかった。今までよりも一段と強いサーチライトが当たりを照らし、正確なシールドの位置は、いよいよ地球人にまで暴かれてしまった。


 「メッセージを再生します。」


 周りの景色が揺らいでまもなく、ケイの息子の防護服の無機質な電子音がそう告げた。すると、息子のお腹のあたりにケイのホログラム映像が現れた。


 我々は予期せぬサプライズに、ケイのホログラム映像が何を言い出すのか、注目した。


 「やぁ。これが流れているということは、無事に抗体を息子に摂取することができたみたいだね。」


 ケイは、よろよろとよろめき、辛そうな咳を交えながら話していた。多分あの町中を飛び回りながら、ラジオの電波塔を目指していた時に、撮っていたのだろう。


 「抗体の中にはコロナウィルスを混ぜてある。だから、すぐに息子は良くなるはずだ。だが、妻に・・・謝らなければいけないことがある。」


 奥さんはゆっくりと、ホログラムの映像を見た。

 

 「何?」


 届かぬ過去の旦那に語りかけた。


 「この星の病原体はあまりに強すぎた。君の分も作るとなると、二人とも中途半端な抗体にしかならない。だから、君には少しでも自力で抗体を作れるように、薬は投与しているが・・・。だが、息子を救うためだと思って許して欲しい。」


 奥さんは、何度も頷いていた。僕はこのホログラム映像を最後まで見れる自信がない。


 「それにカイ。僕の意思を尊重し、実行してくれて本当に感謝している。君との出会いは、遠い昔だ。それはそれはいろんなことを共に学び、共に語りそして共に経験してきた。君との思い出は数知れない。」


 カイは、まっすぐとホログラム映像を見ている。


 「こうなったのは、君のせいではない。どうか自分を責めないでくれ。やつ・・・。ゲルダファの方が一歩上だったというだけのことだ。奴が、ATシールドの弱点を把握していた時点で、こうなることは決まっていたのかもしれない。」


 カイは何も反応しない。


 「だから、僕は奴の一歩上を行く。奴は、僕が自分自身を犠牲にする度胸はないと思っているに違いない。だからこそ、この作戦は成功するはずだ。だが、それには最後に君の力を借りなければいけない。最後のわがままを聞いてはくれないか?」

 

 その時、再び周りの景色が歪んだ。すると、一斉に光量最大のサーチライトが、ケイを乗せた船を照らし始めた。


 「まずい!」


 このままここにいたら、我々まで巻き添いを喰らうかもしれない。しかし、カイは微動だに動かず、友人の依頼に耳を傾けていた。


 「心配するな。こいつは馬鹿じゃない。愚かだけどな・・・。」


 すると、地球人からの攻撃が始まり、無防備の船にもろ直撃した。だが、爆音に対して、衝撃がこちらに襲いかかってくることはなかった。


 すると、ホログラムケイが話しを続けた。


 「気づいているかも知れないが、今、息子から半径3メートルの範囲に、ATシールドを張っている。小規模だが、事が終わるまでは、ここに身を隠していられるだろう。」


 もう一発大きな爆発音が鳴り響いた。船が大きな音を立てて今にも倒れそうになっている。


 「ATシールドは船と一緒に破壊されるはずだ。それはこれからゲルダファがやろうとしている計画には、かなりの痛手になるはずだ。だがATシールドは完全にこの世から消えるわけじゃない。つまり、今張られているこのATシールドが、この世の最後のものになる。だから・・・。」


 すると、今度はさらに激しい爆発と共に、あたりが一瞬だけ、昼間のような明るさになり、ケイの船は文字通り木っ端微塵に吹き飛んでしまった。


 カイ以外は、吹き飛ばされた船を、ただ茫然と眺めていた。


 だが、カイはまだホログラムをじっと見つめている。


 「このシールドだけは守って欲しい。」


 予想外の要求に、再びホログラムへ視線を戻してしまった。


 「そして、このシールドを息子に託して欲しい。この子は僕よりも賢い。それに僕のノウハウは全て息子に託した。病気が治ったら、この装置を息子に渡すだけでいい。あとは息子がうまくやるはずだ。」


 本当にこの家族は、全て覚悟の上で準備をしていたのだろう。これだけの技術者となれば、こうやっていろんなところから狙われるからだ。


 木っ端微塵になった船は、もはや真っ黒のただの鉄の塊のようになっていた。そして、軍はこの辺りの調査をすることなく、撤収していった。恐らく、ここまでの執着と攻撃性はゲルダファの洗脳が原因だったようだ。


 自分の作戦の逆をつかれてしまい、奴もさぞかしご立腹だろう。それが唯一の救いかもしれない。


 「そして君たちに警告する。今回の僕の作戦はただの時間稼ぎにしかならないだろう。奴は何らかの手を使って、この星を取り戻す。」


 何とも報われない警告だ。


 ホログラムの奥は、かなり悲惨なことになっていそうだ。確かに、あの時はとんでもなく、揺れていた。


 「そして最後に初めましての君。ミスターブルーズだったかな?いかにもだな。」


 まさか自分が語りかけられるとは思っておらず、変な声が出てしまった。


 「君には本当に感謝しきれない。君がいなければ、息子を救うことはできなかったし、この作戦は成功できなかった。」


 少し照れた。まだ、メッセージは続いた。


 「君は近いうちに、過去を清算するチャンスが巡ってくるかもしれない。だが、これだけは忘れないでほしい。過去は過去だ。変えることはできない。」


 一体なんの話をしているのか、今のところはまだわからない。


 すると、恐らくスイングをした時なのだろう。映像が左右に大きく揺れだした。そして、ケイはさらに鋭い目つきに変わった。


 「君のそのあざはただのあざじゃない。それは・・・。」


 だが、最後まで言い切らず、ホログラムの再生は終わってしまった。


 「全部お前が持っていったな。」


 なぜケイはあざのことを知っていたのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ