洗脳
すっかり胃の中は空っぽだ。それでスッキリしたわけではないが、酔いはだいぶ治った。その間も、カイは険しい顔で外を眺めていた。
「どうしたんだ?」
そう言いながら、原因がある外の様子を眺めた。
「地球人がおかしい。」
「どういうこと?」
外を見ると、地球人たちが、姿を消した未確認物体を、血眼になって探している。すぐ目の前に我々はいる。だが、彼らに姿形は全く見えていない。
「そりゃ、あんだけの人数に見られながら、追跡劇を繰り広げれば、そう簡単に彼らだって諦められないものじゃないの?」
秩序と安寧を守る。そしてこの時代でいえば、色んな意味での技術競争が激化している。得体の知れぬ技術であれば、取り入れようと血眼になるのは、当たり前かも知れない。
しかし、カイの考えは違うようだ。
「だが、あそこまでの執着を見せた地球人は初めて見た。」
結局のところやっぱりカイは、何かがおかしいと言いたいのだろう。
その時、一人の迷彩服に身を包んだ男の懐中電灯が、こちらを照らした。最初は偶然だと思えたが、それにしてはかなり長いこと、その光はこちらに留まった。
「近づいてくるけど?」
カイは無言だった。すると、その男は一旦その場を離れたが、すぐに別の人間を連れて、再び戻ってきた。
そして、こちらにライトを向けたり外したりしながら、何かを説明している。その内容はこちらには届いては来ない。
説明が終わると、もう一人の男も懐中電灯でこちらを照らしながら、今までで一番近い距離まで、距離を詰めてきた。
そして、自らの手でその感覚を感じようと、手を前に出して恐る恐るまた距離を詰めた。
「バレたな。」
「でもさすがに、彼らはシールドを破壊できないだろ?」
「ああ、確かにそんなことは問題じゃない。問題は、彼らの執念と今新たに得た知識だよ。」
カイの言ったことを考えた。ライトで照らす・・・。彼らは光がATシールドを通さないことを見破ったということだった。
「なぜだ。そんな知能が地球人にあるとは思えない。」
カイはまた一人でぶつぶつ話し始めた。
「でもそれって、偶然じゃないのか?今だって、彼らはこの辺りに消えたから、この付近をくまなく捜していただけだし、夜ならライトを使うだろ?」
「いくら偶然でも、その結論に至る時点で地球人らしくない。僕は長いこと地球人を見てきたが、こんなことはあり得ない。」
まぁ確かに、光が先を照らしていなかったとしても、光力が足りないとしか思わないかも知れない。
「我々は、強くて賢く、そして正しい・・・。」
カイが、今度は意味不明なことを口にしている。だが、そのフレーズに聞き覚えがあった。さっきラジオでアナウンサーが言っていたセリフだ。
「なるほど!」
どうやら何かわかったようだ。
「何かわかったのか?」
いつものように、カイに尋ねた。
「ああ、やはり彼らは洗脳されている。」
「洗脳?もしかして、あのラジオか?」
「さすが!」
まぁ、それ以外考えられないが。
「あのラジオは最初から、このあたりの人々を恐怖と自信で支配していたんだ。」
外がまた騒がしくなってきている。
「これも奴の仕業なのか?」
「ああ、こんな芸当思いつくのは、ゲルダファぐらいしかいないさ。」
「でもなんのために?」
謎が解けて、色んな事象の点が、真実という線で結ばれていく。
カイにとっては最高の時間のはずなのに、彼がずっと落ち着いた口調で話していることが、逆に気になってきた。
「地球人には、宇宙にも生命体がいるという証拠を示してはいけない。IGTOが定めた条項の一部だ。そうだろ?」
弱々しいケイの声が聞こえた。
「ああ。そういうことだ。」
カイは静かに頷いた。
「そんなことより、大丈夫なのか?」
「抗体が・・・完成したんだ・・・。」
今にも死にそうな声だ。
「わかった、わかった、もう喋んなくていいよ。」
あとは全てカイに説明してもらえば良いだけの話だ。だが、ケイは言うことを聞いてくれなかった。
「もう、我々の負けなのか?」
「いや、まだ策はあるさ。」
カイは励ましの言葉はかけてはいたが、心ここに在らずな雰囲気だった。
「いや、君はいつでもその中に最適解を出している。そんな君でも思いつかないということは・・・。」
「ちょっと待ってよ。負けってどう言うことだよ。」
話の展開が早すぎて、さすがについていけない。だが、こちらの言葉は、まるでエイリアンたちには届いていないようだった。
「それに君はなんでも分かっているんだろ?だったら、それに従うまでさ。」
本当にちょっと待って欲しいと思った。正直、勝負はこれからだと気合を入れていたところだったのに、なんか万策尽きて、早めの葬式状態になっている気がする。
ケイはそう言うと、白い手のひらサイズの卵形の装置をカイに渡した。
「これを息子に必ず打ってくれ。息子だけでも・・・。」
「ああ、必ずな。」
カイはそれを受け取ると、真っ直ぐにケイの息子の元へと向かった。
「おい、どういうことだよ。」
「説明はあとだ。早くしないと、奴らがくる。」
「奴らってどれ?」
話が急すぎて訳がわからない。
「とりあえず、今は息子をこの船から救出することだけを考えろ。話はそれからだ。」
カイの表情は無だった。
自分だったら、ライトの光が伸びてない=何かがあるって思うかなぁ?
評価、ブックマーク等もしていただけるとかなり嬉しいです!
よろしくお願いします。
感想も待ってます。
記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




