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ミスター・ブルーズ 〜命運を握る背中のあざ〜  作者: マフィン
ラジオと嘘と宇宙人

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強くて賢く、そして正しい

 寝台に一家三人が横たわり、それを我々二人はただ眺めいていた。三人とも症状は同じ。軽い咳、40度近くの高熱、そして朦朧とした意識だ。


 今、エイリアンのハイテク機器が三人の患者を徹底的に調べ上げ、そしてある程度の治療を施しているところだ。


 彼らは常に防護服に身を包まれていたはず。なのになぜこんな事になってしまったのか?もしかして、やはり僕のせいなのか?


 その時、寝台付近にあった機械のモニターが、何かを訴えるように、電子音を鳴らしていた。カイは急いでモニターの前へ移動した。


 「やはり、ただのコロナウイルスごときでこれか。」


 コロナウイルスといえば、数年前に世界中で大流行し、地球人の生活を変えてしまうほどのとんでもウイルスではないか・・・。


 「それじゃあこうなっても仕方がないな。」


 すると、カイが不思議そうな顔を一瞬した後、全てを理解したあの顔になった。


 「君が思っているコロナは、地球暦でいうところの2020年に大流行した新型コロナのことだと思うが、これはそれよりもずっと前からある、誰しもがなったことがあるであろう普通のコロナウイルスだよ。」


 なるほど。確かにあの当時も、新型という枕詞みたいなものに、少し違和感を感じていたが、理由はこれだった。本当にメディアというのは、説明不足だと思う。


 カイの説明は、さらに続いた。


 「普段は、喉や鼻の炎症で済む話だが、ここまでになってしまうとは・・・。」


 「これも抗体がないからっていう話なのか?」


 すると、カイは意識が朦朧としているケイのところへ近づいた。


 「ケイ、君たちがこの地球に来てから、最初にこの船を降りたのはいつだ?」


 するとケイは、ゆっくりと答えた。

 

 「ついさっき・・・、君たちと会った時が初めてだ・・・。」


 「となると、ウイルスを吸ってから病気が発症するまでの時間と抗体完成まであと3時間を考えると・・・。」


 急に、カイは黙った。


 「考えると何?」


 カイは軽くため息をついた。


 「大人は平気でも・・・、あの子はどうなるか・・・。」


 奇跡を願うしかないような、表情だった。すると、その言葉が聞こえていたケイが、無い力を振り絞って、カイの腕を掴んだ。


 「頼む・・・。息子だけは・・・。この地球に・・・。」


 カイは答えなかった。いや、答えられなかったというのが正しいだろう。


 正直、カイでも病気については何もできないはずだ。この時代、ペニシリン・・・いわゆる抗生物質なるものの先駆け的なものは存在していたが、それが大量生産され、医療現場で頻繁に使われるようになるまでは、あと数年は必要だ。


 それこそ、今はこの場所が一番治療の最先端を行っているに違いない。


 とにかく抗体完成が間に合うことを祈るしかない。だが、我々にできることはそれだけなのか?


 すると再びあの警告音が操作盤から聞こえてきた。


 「奴らが戻ってきたぞ。」


 カイが呟いた。


 「どうしたらいい?」


 この質問は、どう行動したらいいかを聞いたわけではない。逃げるためにはどうしたら良いかという趣旨だ。


 カイも幸い理解してくれた。我々はすぐに操作盤の方へと駆けつけた。


 「俺はこの乗り物の操縦に関してはプロだ。俺に任せろ!」


 そう言うと、すぐに操作盤をあれやこれやと動かし始めた。


 「君はモニターをチェックしてくれ。なんか変な警告とか出たら、俺に伝えてくれればそれで良い。」


 「わかった。」


 「後もう一つ!」


 カイが、人差し指を掲げている。


 「僕もプロだが、相手もプロだ。だから、少々荒い運転になるから、しっかり捕まっててね。」


 カイがそう言うと、乗り物が急に振動し始めた。どうやら全部のシステムが始動し始めたようだ。


 「ふぅ、懐かしいなぁ。」


 カイはそう言うと、操作盤を忙しく操作し始めた。乗り物は、最初は右へ左へとゆっくりと動いていた。


 しかし、カイがいつもと少し違う操作を施しているのが見えると、乗り物にいつもと全く違う衝撃が襲ってきた。


 「ねぇ、これ今どうなってるの?」


 「僕にもわからない。」


 すると、操作盤から声が聞こえてきた。恐らく相手はIGTOだ。しかし、途切れ途切れで、何を言っているかはわからない。


 「さすが!ATシールド全開だ!」


 あまりそう言うことは言わないで欲しいものだ。


 外の様子を見ると、IGTOの船は、全くこちらに追いついて来れないようだ。


 本当に彼らはプロなのか?


 気づけば我々は街の真ん中に佇んでいたが、ATシールドのおかげもあってか、町の静寂は守られている。


 「ここまで差をつければ、奴らも見失っているだろう。」


 外は静かなニュージャージーの夜だ。


 すると突然、どこからともなくラジオ放送の音楽が流れ始めた。出どころは操作盤のようだ。


 「何これ?」

 

 しかし、カイは険しい顔をしているだけで、返事はなかった。


 サックスやトランペットが奏でる旋律と、ドラムやベースが刻むフォービートのリズムが、乗り物の中に響いていた。


 すると、その曲をバックにアナウンサーの語りが始まった。


 「今宵はとても、不思議な夜でしたね。」


 あのラジオドラマのアナウンサーの声にそっくりだった。


 「今夜は、この宇宙に我々以外にも生命体がいるということが、証明されました。彼らは、敵なのかそれとも信頼できる友なのか?それは、慎重に判断するべきことです。」


 意味深なラジオ放送を、カイは黙って聞いていた


 「だが、我々は時に臆病になってしまうことがあります。それは、人間の・・・いや生物の正常な防衛反応なのです。それを責める必要はない。秩序を侵害してきた、彼らがいけないのです。我々は強い、賢い、そして正しいのだ!」

 

 「嫌な予感がする。」


 すると、周りの風景が少し歪んだ気がした。どうやらATシールドが破られてしまったようだ。


 「やっぱり、このATシールドには欠陥があったんだ。」


 いやそんなことより、病人を三人乗せた宇宙船が、街の真ん中で佇んでいるのを、町中の人間が視認している状態になってしまった。

ちょっとこの辺りから急展開です。ごめんなさい


評価、ブックマーク等もしていただけるとかなり嬉しいです!

よろしくお願いします。


感想も待ってます。


記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1

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