カテリエル
宇宙人に出くわしたのは2回目。得体のしれないものに関しては3回目。もう流石に慣れた。ただ、登場の仕方がいつもと違うところだけは、少し動揺したがすぐにその物体への興味へと変わっていた。
火星人は独特の音を立てながら、一心不乱にどこかへ移動している。もしかして、まだ見られていないと思っているのだろうか?動じている様子はない。
そしてこの独特の音。聞き覚えがある。IGTOが乗っていた、あの妙な乗り物も同じような音がしていた。
「カテリエルだ。」
カイが覚え出せなかった物質の名前を呟いた。
「これって、あの組織の・・・。」
「ああ、IGTOが乗っている乗り物のプロトタイプだ。」
そう言われたが、我々がこの間見たやつとの違いはあまり分からなかった。
すると、逃げ惑うニュージャージーの住民の一人が悲鳴をあげた。そこからまるで感染力最強の病原菌が蔓延したかのように、悲鳴は次々と連鎖していった。
「宇宙人が俺たちを殺しに来たぞ!」
一人のおっさんが余計なことを大声で叫んだせいで、火星人への視聴率が鰻登りになり、それに比例して、住人たちのパニックがさらに加速してしまった。
そりゃ、得体のしれない宇宙人らしきものがしっかりと自分たちの目の前に見えていたら、悲鳴の一つや二つ上げるだろうが。
さらに今度はパトカーのサイレン音ときらびやかなランプが数台、火星人に向かって集まり、そこから出て来た警官たちが小さなピストルを構えた。
果たして、そんな性能が悪いアンティークのピストルで勝てるのだろうか?だが、その疑問を抱いたあの時は、地球人の圧倒的技術力に、IGTOはなす術がなかった。だが今回は流石に応援の警官が欲しい戦況な気がする。
「おっと。小さな戦争が始まるか?」
カイは両掌を擦りながら、その様子を伺っていた。
「僕らも少し離れたほうがいいんじゃない?」
ここまで過酷な戦いを生き延びて来たのに、こんな小さな小競り合いで死にたくないというのが本音だ。
「バカ言うなよ。こんなの特等席で見ないで、どこで見るって言うんだよ!」
どうやらカイの本音はそうではなかったようだ。
「それにしても妙だなぁ。」
「何が?」
正直、もう全ての出来事が妙すぎる。
「あいつ、こんなに注目されているはずなのに、全くこちらを見向きもしてないぞ。」
「もしかして、まだ見られていることに気が付いてないのか?」
まぁ、そうだとしたら、向こうも向こうで、愚かな種族なのかもしれない。
警官の一人が、発砲許可を求めている怒号が聞こえる。この緊急事態でも、上に許可を取らなければ発砲できないとは・・・。これぞ、役人の宿命ってやつなのか?それともこの警官が臆病なのか?
その時、一発の破裂音が夜の町の空気を震わせた。どうやらあの警官は臆病なだけだったようだ。
別の警官が一人発砲すると、他の警官も続いて火星人を集中砲火した。
「お!地球人らしい。」
撃たれた部分からも独特な音が轟いていた。さすがに火星人も気づいたのだろうか、歩みを止めこちらを眺めているかのように、球体の頂点の部分から光が出てきた。
まるで球体の目のように、警官たちを眺めるとすぐにその光と4本の足が球体へと引っ込み、ただの金属の球と化した火星人は、ゴロゴロと大きな音を立てながら、逃走を図った。
「撃ち方やめ!」
果たして誰がそんな指示を出し、なんの義理でか分からないが、一斉に集中砲火が止んだ。
正直、想像していた結末ではなかったが、大ごとにならなくてよかったと内心ほっとしていた。
「どうしますか?追いますか?」
一人の警官が恐らく上司であろうもう一人の警官に指示を仰いだ。上司の警官は火星人が転がっていった方を見据えながら、指示を出した。
「いや、ひとまず住人たちの避難を解除しよう。あれなら我々で対処できる。」
的確な判断だと思う。警官たちはパトカーに乗り込むと、拡声器を使って住民たちに安心するよう呼びかけ始めた。ひとまず、事件は解決・・・と行くわけがない。
「よし、警官さんたち。あとは僕らが引き受けた!行くぞ!」
カイは元気に飛び出し、火星人の足取りを追った。金属の球体は農村地帯を横切り、近くの竹林の奥へと入っていったようだ。かなりの大きさと重さのおかげで、足取りはくっきりと地面に掘られた跡と、なぎ倒された竹で容易に追うことができた。ところが、しばらくすると、忽然とその跡が消えてしまっていた。
「どこ行った?」
追った先の竹林の竹は何事もなかったかのように、まっすぐと月に向かってそびえ立ち、静かに揺れていた。そもそも、アメリカに竹というイメージはあまり無く、その光景にどこか日本を懐かしく思う気持ちを抱いてしまった。
「飛んだのか?」
だが、見上げても真上には竹の枝葉が生い茂っている。
カイはまたメガホンレーザーを照らし始めた。
「さっきの原理で行けば・・・。ほらきた!」
また目の前の景色が揺らぐと、さっきまでの何事もなかったかのような、静かな竹林が一変し、円形に伐採された広場にポツンと一つ金属の球体が置かれた景色に様変わりした。
「みーつけた!」
カイは、そう言うとメガホンレーザーをポケットにしまい、球体に向かって歩き出した。
「待てよ!」
「何?」
カイは、楽しみを邪魔されてご立腹の顔でこちらを睨みつけた。
「どんな奴らが乗ってるか分からないじゃないか。」
「いや?大体見当はついてるさ。」
カイがそう言いながら球体に近づいていると、今度は球体から勢いよく蒸気が吹き出し、球体の左側が割れ始めた。どうやら、誰か出てくるみたいだ。
さすがのカイも歩みを止め、その様子を伺っているが、やはり楽しそうだ。
蒸気に包まれながら、大小三つの影がこちらから確認できる。球体の中からこちらに向かって発せられている逆光のせいで、はっきりとは見えない。だが、だんだんと蒸気が消えていくと、見覚えのある服装の人間が三人いた。
「カニカマか?」
その三人はカニカマと初めて会った時に身につけていた防護服を着ていたのだ。
「敵意はなさそうだな。」
カイがそう言った途端、三人のうちの一人が、何か銃のようなものをこちらに突きつけてきた。
「前言撤回。」
だが、逃げるには時すでに遅いようにも思える。
見当ついてたんじゃないのかよ!
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




