ジャズミュージック
「これで、この時代に干渉が入ることはない。ひとまず初仕事お疲れさん。」
そう言われると、一気に気が抜けた。だが、自分の中で落とし込めていない部分がまだまだいっぱいあった。
「なぁ、タイムロックってなに?」
単刀直入にメイジーが言っていた言葉の一つを突きつけてみた。
「タイムロックは、タイムロックだよ。」
カイはいつものように、またはぐらかした。今まではそれでも良かった。だが、今回の事件、そして前回の事件を合わせても、今ここに存在しているのが奇跡なくらいに、命を落としかけた場面が数多くあった。
「もうそうやってはぐらかすのはやめてくれよ!」
その気持ちのおかげでようやくカイに本音をぶつけることができた。
それに対してカイは、少し困った表情を浮かべた。
「別にはぐらかしたつもりはないよ。タイムロックはタイムロックだからなぁ。その時間で起きる現象を一本化することって言ったらわかるか?」
そう!その説明が欲しかったのだ。
「それが、この旅の目的なのか?」
「そうだし、違うとも言える。」
また今度は意味深な答えだ。
「そっか!まだこの話してなかったっけ?」
カイはただ忘れていただけなのか、それともはぐらかしていたが、指摘されたから忘れたふりをしたのか分からないが、ガムを一つ口へ放ると話を続けた。
「これからこの地球に起こる悲惨な現象に通づるかもしれない時代にいき、その時間を悲惨な未来へとつながらないように修正しタイムロックする。それが僕が今やっている仕事だよ。」
悲惨な現象と言うのは恐らく、地球が侵略されるという話のことなのだろうか?
「じゃあ、その目的を達成すれば、その悲惨な未来は起きないってこと?」
カイは難しい顔で黙った。何を考えているのか?悲惨な未来が起きるか起きないかを試算しているのか?あるいは、現実をこちらに突きつけるための言葉選びをしているだけなのか?
「さぁ?どうだろうね?質問は終わり?」
いやまだあと一つ残っていた。
「僕らは彼女に負けたの?」
彼女はあの場で死んだ。なのに僕らが負けというのはどうしても納得ができない。だったら、あの処刑はただのこちらの八つ当たりみたいに感じる。
だがこの件に関してカイは、あっさりと答えを出した。
「いや?」
「じゃあ、あの彼女の最後の悪態はなんだったんだ?」
多分、あの悪態はしばらくあの津波の夢のように、睡眠の邪魔をしてくるのではないかと思っている。
「何をもって勝ち負けを決めるかにもよるけど、少なくとも僕はこの戦いには勝利したと思っているよ!」
確かに今の言葉は僕が聞きたい答えだ。だがなぜか素直に喜べない自分がいる。
結局カイの真意はいまだに掴みきれていないままだ。このまま彼に着いていって良いのだろうか?
少し迷いが生じた。
「さぁ次だ!次、次!」
カイに差し出されたイヤホンを耳につけると、カイはメガホンレーザーを操作した。メガホンレーザーから青い光が放たれ我々を包み込むと、みるみるうちに外の景色が崩れていき、次の目的の様相へと変化していった。
さっきまでは、朝日がこちらを照らしていたが、再び辺りが暗くなり、月明かりと街灯に照らされた小さな町へと変わっていった。
今度は少し時代が先へと進んだようだ。
「お!今度は1938年10月30日!やっぱり僕はこの20世紀という時代が大好きだ!」
カイは周りの様子を見ながら深呼吸をしていた。前回もそうだが、このタイムトラベルはカイの意思でも誰の意思でもなく、メガホンレーザーが勝手にその時代、その場所へと導いてくれる。
まぁ言ってみれば、メガホンレーザーの意思ってやつなのかもしれない。
「場所は・・・。アメリカだ!」
カイは白くて大きな無機質な建物の一番上の部分で風になびいている星条旗を見ながら呟いた。
「州まではわからないけどここで一体何が起こるんだぁ?」
カイは目を輝かせながら、少年のようにはしゃいでいる。
1938年・・・。どこか見たことがある数字の羅列だった。10月30日という日付も気になる。ハロウィンの前の日・・・。その時点で何か良くないことが起きそうなものだ。
ようやく、外の景色が完全に造られた。
二回目のタイムトラベルだが、今回もしっかり体調を崩した。
「だから、鼻つまめって言ったじゃん。」
言われていない。耳がキンとなるしか言われていない。
だが、すぐにこちらの心配を切り上げ、周りの様子を眺め始めた。
「この匂いは・・・ニュージャージー!」
一体なんの匂いがしたのかは不明だが、ここがどこなのかは分かった。あとは、なぜメガホンレーザーは我々をここへ連れてきたのかだ。
その時、頭の中でジャズミュージックが流れ始めた。どこから聞こえているのかはわからない。何せ、今いる場所はニュージャージーだが、もっと細くいえば、人っこ一人いない町の交差点で、真ん中に吊るされている小さな信号機が、緑に光っている道の真ん中に我々はいる。
つまり音の発生源の疑いをかけるものがそこにはない。だがしっかり頭の中で、レコード特有の細かい雑音付きでしっかり流れている。
「なぁ?これって正常?」
言葉でどう説明して良いかわからない。もし、この状況がカイにも起こっていれば、分かってくれるはずだ。というより分かってくれないと困る。
「ああ、ここはラジオがある時代か!」
「ラジオ?」
カイは、聞き返した言葉を聞いて、急に何かを思い出したかのように、説明を始めた。
「そう、このメガホンレーザーのタイムトラベル機能の原理は、電波に我々の体をのせて、時空間を移動させてるんだけどまぁ詳しいことは、ダイナー星人に聞いて!」
ダイナー星人というのは、よっぽど優秀な種族のようだ。
カイの説明はまだ続く。
「だから、タイムトラベルしたばかりの時は、今飛んでる電波と、自分がまだ一体化ているからそうやってラジオの音が頭の中でなるような現象が起きるんだよ。まぁそのうち消えるから。」
これが一生流れるのはごめんだ。
「でも僕はラジオが大好きでね。ちょっと聞いても良いかなぁ?ダメって言われても聞くけど。」
そう言うとカイは、メガホンレーザーをいじり始めた。すると、メガホンレーザーの文字通りメガホンの部分から、頭の中で流れていたジャズミュージックが流れ始めた。
「それで、これからどうするのさ?」
「さぁ?今のところはまだ何も起きてないみたいだし。とりあえず、何かが起きるのを待つしかないんじゃない?」
とは言うものの、この場所で起きるとも限らないし、どこかへ移動するべきではないのだろうか?
その時、急にジャズミュージックが途切れた。気がついたら、耳の中ではもうラジオが流れていない。
すると、今度はメガホンレーザーから低めの声のアナウンサーの声が聞こえてきた。
「番組の途中ですが、ここで先ほどから入っております、宇宙人関連のニュースをお伝えします。」
ただ事ではない物言いに、我々は思わず顔を見合わせた。
1938年・・・。何かが僕の中で引っかかっていた。
ジャズってなんか切ない感じがするのは僕だけでしょうか?
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




