ポリフェノール
カイは瓦礫の山にメガホンレーザーを充てて、再び何かを探しているようだ。
「ところで今は何を?」
「おいおい、質問が多いなぁ。どっちを聞きたいんだ?」
カイは乱暴な口調で、メガホンレーザーを瓦礫に向け続けていた。
確かにカイの言う通りだった。このまま、いろんな話を同時に聞いてしまったら、この小さい脳みそがキャパオーバーを起こして、何もかもシャットアウトしてしまうかもしれない。
とりあえず今は、さっきまでの話を聞くことにした。
「わかった。じゃあ、ポリフェノールがなんだって言うんだ。」
カイは、メガホンレーザーをしまうことなく、説明を続けた。
「カサンドラやジキルの身体を調べてみたら、血圧がかなり高かった。これは慢性的な高血圧とは違って、運動をしたときに分泌されるアドレナリンによって引き起こされるものと同等だ。」
いつそんなことを調べたのか聞きたかったが、そうなるとまた説明が進まなくなる。
「じゃあ、これらの現象は血圧の上昇が引き起こしているってことなのか?」
カイの説明はまだ続いた。
「ところが、これはあくまで仮説だが、血圧が上昇し代謝が活発化すると、彼らの筋力が高くなるのと比例して、逆に知能が下がって理性が効かなくなってしまう。」
「それをメイジーは知っていたのか?」
「恐らくな。なんならそれを目的にしていたのかもしれない。」
ますますメイジーの目的が気になる。
「だが、ここで想定外のことが起こった。なんと自我を保つ存在が現れた。」
カサンドラ、ドリゼラ、カミーラの三姉妹。彼女らはメイジーにとっては想定外の存在だったという事か・・・。
「でもなんで?」
「そこでポリフェノールの登場だ。彼女たちは日ごろから、あのパーティーの時でさえも、常にワインに見せかけてブドウジュースを飲んでいた。ポリフェノールたっぷりのね。」
確かに、ポリフェノールには血圧を抑える効果や、アドレナリンを抑える効果があるのかもしれない。だがそれが、体や脳に変化が出るほど、体に影響を与えていたのかとなると、疑問が残る。
「まぁ、詳しいことはわからんが、恐らく彼女たちが力を得ながらも、理性を保てたのは、このブドウジュースに含まれていた、ポリフェノールが原因だったのかもしれない。」
「かもしれない?」
自信満々の口調とは裏腹に、漠然とした言葉が飛んできて、想定以上の大声を出してしまった。
「ああ、これはあくまで全て僕の仮説だ。だが、僕の仮説は当たる。」
ある程度のメカニズムが分かったとて、まだまだこの事件の疑問は山積みだった。
「もし、その仮説があっているなら、あのパーティーが意味するものはなんだったんだ?別にあんな回りくどいことなんかしないで、さっと襲ってさっとメイジーに復讐をすればよかった話じゃないのか?」
ただの復讐にしては、かなり芝居かかったやり方だった。
「恐らく復讐の相手はメイジーだけじゃない。」
「え?どういうこと?」
こんな会話をしている間に、カイの目標にだんだんと近づいているようだった。
「実はヴァインズ家は一度、先代、つまりエドワード・ヴァインズの時に、社交界から追い出されている。」
「なぜ?」
「市場を拡大するために、輸送ルートを増やそうとしたが、社交界の圧力で頓挫して屋敷の改造費やらなんやらがかさんで倒産しかけた。
なんとなくこいつだろうなというイメージが、脳裏に浮かんできた。あの場にいたほとんどの客はやりかねないだろう。
カイの話は続く。
「そのストレスからなのか間もなくしてエドワードが亡くなり、彼の遺言で、長女のカサンドラ・ヴァインズがワイン製造を引き継いだ。そして彼女がヴァインズ家の名前を今の地位まで引き上げた。」
「彼女の原動力は、この日のためだったのかもしれないな。」
彼女の・・・彼女たちの復讐心が、ヴァインズ家の華麗なカムバックを実現したのだ。
「そう、だから自分の父親を死に追いやった社交界の人間を客人として、事件に関与していた貿易会社や貿易船の船乗りたちをウェイターとして、この屋敷に招き、そして復讐を果たした。」
カイがこんな情報を手に入れたのは、何週間かの潜入の時だろう。
そんなことを考えていると、急にカイが一人で話し始めた。
「いや、もしかしたら・・・これはなるべくしてなっているのか?つまり・・・。」
カイの暴走タイムが始まった。
だが、そんなことよりこちらは頭がごちゃごちゃになりそうだった。とにかくあのパーティーは、ヴァインズ三姉妹が復讐を果たすための物だったことがわかって脳みそは満足してしまった。
そうなるとそれ以降のカイの話をシャットアウトしてしまう。だが、仕方がない。それが人間だ。
「それでほかに何か気になることは?」
いろんな事象が起こりすぎて、もう何が何だか・・・。とにかく、真相は解明しちゃんと説明できたはずだ。
だがその真相が分かったとはいえ、まだこの事件の解決には至っていない。
「でも、ブドウジュースでどうにかなるにせよ、本当にカサンドラに浴びせるだけで良いのか?接種させる必要があるだろ?」
「問題ない、さっきも言ったかどうかわからんが、彼女らは体の構造を書き換えられてしまっている。そのせいなのか、彼女の皮膚は何でもかんでも過剰に体内に吸収してしまう体になってしまっている。」
これまた、都合のいい話だ。だが、カサンドラがあんなに苦しそうなのには納得がいく話だった。
そんなカイが興奮して話しそうな内容なのにも関わらず、本人の顔は険しい表情を浮かべていた。
彫りの深い目元がなお一層、事の深刻さを物語っている。
「恐らく、この一連の事件は彼女が行っている実験のせいであることは間違いない。つまり、何がどうだったかは知らないが、少なくとも、あれだけ僕を翻弄させた彼女が、ドジを踏んだということは何か彼女にとって想定外なことが起こったことは事実だ。」
彼女というのがメイジーのことを指しているのはすぐに分かった。
「ただ、彼女はなぜこんなことを・・・?」
「そう、それを確かめるまでは、我々はこの時代から出ることはできない。」
我々の視線の先には、一人の女性が立っていた。容姿はカサンドラのように見えるが、その正体が誰かはすぐに分かった。
ドラゴン退治を描きたかったが、彼らにとってはこっちの方が大事なのでね!
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




