ドラゴン
こんなことになったのは自分のせいだ。さっさと銀の矢で彼女の体を貫いていたら、こうはならなかったかもしれない。
しかし、ずっと彼女とあのコンビニ店員を重ねてしまっていた。
彼女は前回の事件で命を落とした。助けると約束していたのに・・・。彼女も頼ってくれていた。助けを求める電話をしてきたのに、話に夢中になって気づくのが遅くなってしまった。
僕はいつもそうなんだ。いざというときに出遅れてしまう。そうやって母さんも一人で死なせてしまったのだ・・・。
今回もそのせいで取り返しのつかないことが起こり始めていた。
腕の中に倒れこんだメイジーは笑顔だった。この笑顔は果たして彼女の本当の笑顔なのか?もう何も信じられない。
彼女をそっと散乱したテーブルを起こし、その上に寝かせた。
カミーラとドリゼラが必死にカサンドラに呼び掛けている。
「姉さん、大丈夫よ!私たちはここよ!」
「姉さんもよ!姉さんもずっとそこにいるのよ!」
だが、その呼びかけにカサンドラはうなるような声で返した。
「彼女どうしたの?」
カイの手には、もう隠す気もないかのように、メガホンレーザーが握られていた。
「姉さんにあの魔女が何かしたのよ!」
「あんな苦しんでる姿、初めて見たわ!」
カミーラ、ドリゼラの順番で、二人は目に涙を浮かべながら、藁をもすがるようにカイに訴えかけた。
カイがカサンドラの方にメガホンレーザーを向けた。メガホンレーザーは青い光を放出し、何かを探り始めた。
「そもそも君たちは、どうやってそう・・・、」
「怪物?」
カミーラが悲しそうな口調でカイの言葉を遮った。
「僕は言ってないからね。君が言ったんだ!」
カイは必至に弁明している。
「知らないわ!どうしてそうなるかなんて!」
「あの女の呪いじゃないの?」
「いーや!彼女ははっきりと、科学者を名乗った。ということは、君たちがそうなるにも、何かしら原因があるはず。」
「科学者って?」
「あの変わり者のヴィクターみたいな人たちのことじゃない?」
「ヴィクターってヴィクターフランケンシュタインのこと?ってことは私たちいよいよ怪物じゃない!」
カミーラが駄々をこねている少女のように不平を漏らした。
二人がそんな話をしている時、カイはふとメイジーが横たわっている方を見ながら、顔をしかめていた。
すると突然、大きな音と衝撃がこの屋敷を襲った。衝撃の火種の方を見ると、荘厳なメインホールの階段が、瓦礫の山になっていた。
砂埃に隠された影が、怪しく動いている。砂埃はだんだんと収まっていき、影の正体を露わにさせた。
大理石のように硬そうでゴツゴツとした皮膚、鋭い眼にワニのように前に突き出た口。そして何よりもその巨大な身体。
「姉さん・・・。」
ドリゼラの問いかけに、吹き飛ばされそうなくらい大きな雄叫びで返してきた。
どうやらカサンドラはドラゴンへと姿を変えられてしまったようだ。
「こりゃまたどうしたもんかねぇ?」
カイがそう言いながらメガホンレーザーを向けた。
「私たちもこうなるの?」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょう!」
「分かってるけど、姉さんを傷つけられないわよ!」
二人の痴話喧嘩を聞いて、ふとこの三姉妹の末路を思い出した。
カサンドラだけ魔女狩りで処刑されるという顛末。他の姉妹がいない理由がこれなのかもしれない。
姉妹の絆が悲惨な結果を招いたのだ。だが、幸いにもまだ起こっていない現実だ。
こんなことになった責任を取るためにも、彼女をどうにか止めなければならない。
「お嬢さんたちに二、三質問したいんだけどいいかなぁ?」
ドリゼラとカミーラはポカンとした顔でカイを見ている。
「あの催しってやつは一体なんために?」
「お酒を飲ませた状態で走らせると、心拍が上がるでしょ?そのくらいしないと、血を吸いきれないのよ。」
意外と彼女たちは柔だった。
「狼人間にウェイターたちを襲わせたのは?」
カイの反応的にこの話とはあまり関係がないのだろう。だが、命を狙われた身としては、聞かないわけにはいかなかった。
「ああしないと、私たちの言うことを聞かないのよ。」
「逆にああしたら言うことを聞く?」
カイの表情が鋭くなった気がする。多分、何か分かったのであろう。
「ええ、簡単な指示しか聞けないけど。」
「なるほど・・・。」
そう言っている間、ドラゴンになったカサンドラは屋敷を破壊している。いや、ただのたうち回っているのだけなのかもしれない。
「早くなんとかしてあげなきゃ!」
「村に出ていっちゃったらもっと大変なことになるぞ!」
カイはぶつぶつと何かを言っている。まだ何か考えているようだ。
「カミーラ、こうなったら腹を括るしかないわよ!」
「分かったわ・・・。」
カミーラは乗り気じゃなさそうだった。
カミーラとドリゼラは一斉にカサンドラに向かって攻撃を仕掛けた。
鋭い爪でカサンドラの喉元に切り込んでいく。
「あれ?」
ドラゴンの皮膚は、びくともしないどころか、ドリゼラの爪を粉々に砕くほど硬かった。
するとドラゴンは背中から巨大な扇型の羽を二つ、関節が軋む不気味な音を立てながら生やした。その二つの羽を大きく動かし、襲いかかった二人を突風で吹き飛ばした。
二人は悲鳴をあげながら、トイレに流されるかのように円を描きながら飛ばされ、大広間の円卓に落下した。
「いったー!」
そんな感じで済む衝撃ではなかったはずだが、命に別状はなさそうだった。
「ワインでドレスがびしょびしょよ!」
カミーラのドレスの裾の部分から半分少しくらいが紫色に染色されていた。それはそれでいい味出してるデザインに見えた。
その瞬間、急にカイが手を叩き大きな音を出した。
「そうだ!ワイン!分かったぞ!」
ドラゴンの姿をしたカサンドラの口元が何か怪しげな動きをしている。
「もしかしてドラゴン特有の?」
「嘘でしょ?」
だが、カイは嬉しそうだった。
ドラゴンが火を吹くメカニズムってなんなんだろう?
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




