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ミスター・ブルーズ 〜目覚めたら誰もいなかった〜  作者: マフィン
美女と野獣とモンスターハンター

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恋の終わり

 差し出した銀の矢は、まっすぐとメイジーの方を向いていた。


 初めて会った時の恐怖の顔や、作戦が成功した時の喜びの表情。もし彼女がこの矢を受け取らなければ、それらは全て嘘だということになる。


 確かに自分は彼女に惹かれているのかもしれない。だが、そんな感情は抜きにしても、見抜くことができなかった彼女の嘘が、嘘であってほしくない。


 だが、そんな期待とは裏腹に、メイジーの目の輝きは、だんだん漆黒に変わっているのがわかった。


 「君は本当に魔女なのか?」


 確信せざるを得ない状況だったが、わずかな希望を込めて尋ねた。


 だが、彼女の表情はこちらの希望の光を闇で包み込んだ。


 彼女の笑い声が、屋敷に響いた。

 

 「なんで悪い奴って笑うんだよ。」


 カイがつぶやいている。


 「そうよ!私が悪い魔女よ!だったらどうする?私を殺すの?坊や。」


 最悪な豹変の仕方だ。


 「早くやつに銀を!」


 カイの言われた通りにしたい。でも出来ない・・・。


 メイジーは余裕の表情でこちらを見ている。


 「どうした?」


 カイが何かを言っている?


 「なんの呪いだ?」


 カイの鋭い眼光がメイジーに向いた。


 「私は何もしてないわ!彼の意志よ。」


 そうなのかもしれない。動かそうと思えば動かせる。だが、動かせないのではなく、動かしたくない。


 「全部あんたの策略なのか。」


 「私、頭使うのは得意なの。唯一の誤算はあんたが私の正体に気づいたことよ。」


 「僕も頭を使うのが得意なもんでね。」


 二人がこんなに見合っているのは初めてかもしれない。


 「それでいつから気づいてたのよ?」

 

 「君があのセラーにいた時からなんかおかしいなぁとは思っていたけど確信を持てたのは、彼の名前がジキルって分かったからかな?」


 どういうことなのだろうか?もうメイジーはこちらに視線を向けてくれなくなっている。


 「ボウガンね。」


 メイジーはすぐになんのことだか分かったようだ。


 「ああ、てっきり君の名前だと思ったのに、全然違うからねぇ。」


 そう言われてみれば確かにあの時カイは、彼女のことをずっとジャッカルと呼んでいた。


 「一瞬しかボウガンに書かれた文字が見えなかったからジャッカルと呼んでしまったけども、ボウガンを無くしたハンターの名前がジキルと分かれば、自然と彼が持っていた銀の矢が装填されたボウガンを君が奪ったと点が線になったよ。」


 メイジーは笑った。


 「賢い男は嫌いじゃないわ。」


 「いやいや、彼には負けますよ。」


 なんか気を使われている気がする。だが、カイの求めていないフォローは、メイジーには届いていない様子だった。


 「あの男がしつこく私を追うもんでね。娘の仇とか言ってね。しかも、どこで知ったんか弱点の銀の矢を撃ってきたとなれば、こちらとしても黙っちゃいられないじゃない?」


 「それでボウガンを奪ったのか?」


 「結局今度は知恵を働かせて、銀の銃なんか持ってきたけどね。だから、怪物にして知恵を働かせないようにしたってわけよ。」


 怪物になっているジキルはメイジーを睨みつけた。怪物になってもジキルのおっさんがちゃんといるようだ。


 「あなたばっかり質問してちょっと不公平じゃない?」


 僕はまだ銀の矢を構えている。攻撃してこないと思いながらも、警戒しているのかこちらに向かってくることはなかった。


 「確かに、それはそうだ。」


 カイはわざとらしく今気がついたように振る舞った。


 「まぁなんでこんなことをしたのか、そもそも君は何者なのか聞きたいことは山ほどあるけど、ずっと僕が質問をし続けても観客の皆さんが退屈してしまうからなねぇ。」


 その観客たちは、ずっとメイジーを睨みつけている。


 「あら、私たち随分と気が合うのね。私もあなたが何者なのか気になっていたのよ。」


 「もしかしたら、君と僕は近い存在なのかもしれない。」


 「教えてくれないようね。それは残念・・・。」


 さっきまで一歩も動きを見せなかったメイジーが、急に動きを見せた。


 「だったら、話はこれでおしまいよ!」


 そう言うとメイジーはこちらに何かを投げつけてきた。顔が焼けるように熱く、目に激痛が走り開けるなんてもってのほかだった。


 「早くやつを探して!」


 カサンドラの声が聞こえる。


 「おい、大丈夫か?」


 カイの声の方が近く聞こえた。自分は一体何を吹きかけられたのか?


 「本当は使いたくなかったけど・・・。」


 カイの一言が聞こえた瞬間、視界が少し青くなった。恐らくメガホンレーザーを使ったのだろう。


 「こりゃまた・・・。」


 「どうしたらいい?」


 「水かなんかで洗えば大丈夫だろう。」


 随分信憑性がなかった。だが、思っていたほど痛みが尾を引くことはなかった。


 視界が元に戻ると、メイジーとカミーラ、ドリゼラの戦闘が繰り広げられていた。


 とは言っても、カミーラとドリゼラの攻撃を、メイジーが華麗にかわし、時々メイジーが火を出したり、煙で撒いたりしていた。


 ジキルも戦闘に入ろうとしながらも、どうやら娘のエレナが心配なのか、同じところを右往左往しているだけだった。


 メイジーもさすがに化け物じみた力を持った存在にここまで追い詰められたとなれば、さすがに穏やかな表情ではない。


 「この魔女め!」


 カサンドラの憎悪にまみれた声が聞こえてきた。声のする方を見ると、メイジーはカサンドラに背中をとられ、しっかりと拘束されていた。


 「さぁどうしてくれようかね?今の私たちはアドレナリン豊富な血液のおかげで、力がみなぎっているわ!」


 カミーラとドリゼラも笑みをうかべながら、拘束されたメイジーのもとへじわじわと近づいた。


 「そう。ならもっと力をあげるわ。」


 メイジーがそう言い放った瞬間、カサンドラがドスの利いた声で喚き始めた。


 「姉さん!どうしたの?」


 隙を見てメイジーはカサンドラたちから離れた。だが、逃がすわけにはいかない。すかさず手に持っていた銀の矢を彼女に向け、行く手を阻んだ。


 「私なんかより彼女に使った方がいいんじゃない?」


 メイジーは、カサンドラを指さしている。カサンドラはのたうち回りながら、妹たちを薙ぎ払ってどこかへ走り去った。


 「言っておくけど、私はモンスターハンターでも魔女でもない!」


 月明りによって作り出された、カサンドラの影がだんだんと人の姿から、逸脱した姿に変わり始めている。


 関節のきしむ音が痛々しく鳴り響く。


 「私は科学者よ!」


 勝ち誇った顔でメイジーは叫んだ。だが、すぐにその顔は苦悶の表情へと変わった。


 銀の矢が刺さった彼女は、僕の腕の中に倒れこんだ。僕の初恋はこうして終わりを告げた。

ちなみに僕は書いているときメイジーは超可愛い子で想像してました。でも周りの人はそう思わないかも・・・。


評価、ブックマーク等もしていただけるとかなり嬉しいです!

よろしくお願いします。


感想も待ってます。


記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1

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