交渉
彼女の手を離してしまって本当に良かったのか?妙な胸騒ぎが襲ってきた。
別に恋人でもなんでもない。なのにもう彼女は戻ってこないのではないかという訳のわからない心配が、頭の中を駆け巡る。これがいわゆる恋というやつなのか?
彼女への心配は次第に彼女のスライドショーへと変わっていった。
今までの人生において、恋愛は無縁のものだった。人を好きになることもなかったし、その逆も残念ながらなかったと思う。あったとしても、もしかしたら無意識に拒絶する態度をとってしまっていて、誰も寄ってきていなかっただけなのかもしれない。
そんな奴が大人になって急にこんな気分になることがあるのだろうか?正直そこに驚いている。
そんな悩んでいることなどつゆ知らず、カイは今までの鬱憤を晴らすかのように、地面に横たわる従者の男をメガホンレーザーの光に晒している。
「いやぁ、便利便利!ありがとうメガホンレーザー。ありがとうダイナー星。」
カイが嬉しそうで何よりだ。
「何かわかったのか?」
「すべてが分かったよ!」
食い気味の力強い答えに圧倒された。
「ひとまず屋敷へ向かうぞ。」
カイはそのまま屋敷の方向へ、意気揚々と歩き始めた。
「待てよ。この人は?」
「あー。」
そう言いながらカイはメガホンレーザーを、撃たれた肩の辺りに集中して光を当てた。
「これで良し。肩の銃弾は跡形もなく消えたぞ。血もそのうち止まって、傷も塞がるだろう。全部こいつのおかげー。」
得意げにメガホンレーザーを見せびらかして再び屋敷へ歩き始めた。
どうしてもこのまま寝かしておくのは忍びないと思い、気持ち茂みの中に押し込んだ。多分起きた時、数分はパニックするだろうが。
中庭から屋敷に忍び込むのは簡単だった。さっきの催しで、狼人間に派手に破られた窓から侵入すれば、一番広いパーティー会場に辿り着ける。
パーティー会場は月夜に照らされ、うっすらとその様相が見える。
まるで地獄絵図だ。テーブルやグラスと同じように床には萎れた客人の死体が散乱している。
「あのさっきのゾンビの正体はこれだな。」
確かにそう言われてみれば、そう見える。ということは、こいつらも動くのか?
そして窓のそばには、ウェイターたちの死体が転がっている。こちらは狼人間たちにやられたのだろう。首の辺りから血が流れ落ち、生気のない虚な目がぼんやりと開いている。
もしかしたら、自分もこうなっていたかもしれない。さっきカミーラがけしかけていた狼人間は、本来ここにいるウェイターたちを殺した狼人間のように僕をあの場で殺すはずだった。
「カサンドラ!どこだ!」
カイは大声で叫んだ。
「いるんだろかわい子ちゃん!」
カイは果たして何を考えているのか?今この状況で三姉妹が揃ってしまえば、ここに横たわるゾンビが動き出し、外にいる狼人間たちも恐らくここに来るだろう。とてもメガホンレーザーが有能でも人数的に太刀打ちできるとは思えない。
するとどこからともなく、女性の笑い声が三人、四方八方から聞こえてき始めた。あの三姉妹の声だ。
「あら、ハンサムさん。私をお呼びかしら?」
気づいたらカイの背後にピッタリとくっついていた。
「あら、そこにいたのねべっぴんさん。」
すると、カサンドラの顔が鬼の形相に変わり、長く鋭い爪をカイの首元に突きつけた。
「よくも私の妹を痛めつけてくれたわね。」
だが、カイは怯むことはなかった。
「君もそうなりたくなかったら、大人しくしておいた方がいいぞー。」
メガホンレーザーをカサンドラに突きつけている。
「君たちの弱点は分かっているよ、野獣ちゃん。」
「弱点って何のことかしら?」
その瞬間カイは、イタズラな顔でメガホンレーザーのスイッチを押した。
「分かった、分かった。狙いは何よ。」
「まずは僕の友人を解放してくれるか?」
「何のこと?」
カイはメガホンレーザーをこちらに向けてスイッチを入れた。こちらには何も害はないが、自分の両サイドから悲鳴を上げるドリゼラとカミーラが姿を現した。
全く気が付かなかったことで、後から恐怖が押し寄せてきた。
「分かったわよ。」
カサンドラはそういうと二人にこっちに戻るようにハンドサインを送った。
カミーラは不敵な笑みを、ドリゼラは恨みのこもった睨みをこちらに残して、カサンドラの方へと向かった。
「それでそのあとは?まさか私たちを痛ぶったりするんじゃないでしょうね?」
カサンドラは余裕の表情だ。
「ああ、君たちにそんなことはしないよ。」
聞き違いか?今カイははっきりとそう言った。
「だったら何よ。吊るし首にするのかい?」
「君たちには手伝ってもらう。」
「何をよ!」
「君たちの復讐を!」
一瞬場の空気が止まった。カイは一体何を言っているのだろうか?
「どういうこと?」
カサンドラはポカンとした顔で尋ねた。後ろでもドリゼラとカミーラが不思議そうな顔でお互いを見合わせている。
その時、今度は男の悲鳴が聞こえてきた。
一同は一斉に声のする方を一見するとすぐに、我々は三姉妹の方を見た。
「何でもかんでも私たちのせいにしないでくれます?」
自分たちには分かっていなかったが、多分相当疑いの眼差しを送ってしまっていたようだ。
そしてそれを止めることができなかった。
「私たちじゃないって、信じてよ!」
すると、声のする方角からとてつもないどデカい半裸のおじさんが走ってきた。
「ありゃなんだ?」
「あんな趣味が悪いもの。どう考えても私たちの仕業じゃないわ。」
耳と鼻は悪魔のように尖り、髪はボサボサでまるで巨大なワカメを乗せているようだった。
歯はガタガタに生えており、一つ一つが尖っている。
「まるでウニだな。」
「そこまでか?」
「あんた、どうにかしなさいよ。このままじゃ、私たちの復讐どころじゃないわよ!」
カサンドラはカイの腕を揺すりながら訴えた。
もしかして彼女・・・。
「ああ、狼人間たちと原理が一緒なら・・・。」
その時、視界の端にメイジーが見えた。無事であることに安堵していると、どうやらカイもそれが見えていたようだ。
「メイジーを止めろ!」
しかし、その時にはすでに遅かった。メイジーはボウガンを構えており、そのボウガンから矢がすでに発射されていた。
放たれた矢は銀色に輝きながら、怪物の胸元に向かってまっすぐに飛んでいった。
ボウガンの事を調べていたらサバゲーが出てくるのですが、サバゲーのボウガンって絶対痛いと思うのですが・・・
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




