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ミスター・ブルーズ 〜目覚めたら誰もいなかった〜  作者: マフィン
美女と野獣とモンスターハンター

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催し

 六人のウェイターが集められている。だが会場で見かけたのは三人しかいなかった。残りの三人は今までいったい何をしていたのだろうか?


 六人それぞれ同じ白いシャツに黒のベストを身につけたウェイターの服装にも関わらず、それぞれの事情が滲み出た様相をしている。


 一人は何日髭を剃っていないのか気になる程顎髭をこしらえたおじいさん。彼がつまみ食いの犯人だ。


 それに人相の悪い、明らかに犯罪を犯してそうな背の低い中年の女。


 ほかにも、筋骨隆々で日焼けのせいか、顔が真っ黒な男が二人。恐らく近くの港で働いているのであろう。こいつらは、現場でもよく働いていたイメージだ。


 そんな男達の隣には、逆にワインボトルなんて持ったら、折れちゃいそうな腕をしている楊枝みたいな男もいた。


 隣が隣のせいでより一層細く見える。


 そして僕だ。果たして自分は周りからどう見られているのだろうか?特に感想を持たれていないのが正解だが・・・。


 六人の間で会話は一切なかった。気まずい沈黙が流れている。なんか会話をするべきなのだろうか?


 就職試験の集団面接を思い出す。あの時は確か意識高い系のやつが、話を振って場の空気を作っていた気がする。


 あの時は正直ウザいと思ったが、今はそういうやつが欲しいと思ってしまう。


 すると、突然なんとも言えない良い香りが漂ってきた。


 なんとも言えないが、なんの匂いかは分かっている。間もなくして、香りの素が現れた。


 「ウェイターの皆さん、お待たせしました。」


 現れたのは、さっきの口上の時に満月がなんたら言っていた三姉妹の一人だった。


 「遅ればせながら、このパーティーを主催しました、カミーラヴァインズです。どうぞよろしく。」


 少し幼稚さが残る喋り方と、豊かな表情から恐らく末っ子な気がする。彼女も魔女なのか?


 「早速なのですが、皆さんにお願いしたいことがありますの。」 


 本当に彼女は魔女なのか?魔女だとしてもいい魔女なのではないかと思てしまうほど、純粋な笑顔で彼女はさらに続けた。


 「実はこの後の催しなのですが、皆さんにも手伝っていただきたいんです。」


 他のウェイターの様子を伺った。一人を除いてほとんどのウェイターが二つ返事で承諾しそうな顔をしていた。


 「何をしたらいいんですか?」


 誰も質問しそうになくて、思わず疑問を口にしてしまった。

 

 「そんな大したことじゃないんです。ただ、その催しをしている間、窓のそばに立っててくれたらそれで良いんです。」


 窓というのは恐らく、正面の階段を登った先の二階の廊下にある窓のことだろう。確かに窓は六つある。それぞれ一人ずつそこに立てばいいということなのだろうか?


 「それだけ?」


 「ええ、皆さんにあまり負担をかけさせないようにと、カサンドラ姉さんに言われているので。」


 あどけない笑顔が男達のハートを鷲掴みしている。正直、事前情報がなければ心を奪われていただろう。


 いや、正直に言おう。少し奪われている。


 「やってくれますか?」


 男達は思ったとおり、二つ返事で快諾した。自分ももちろん、情報収集のために首を縦に振った。


 「報酬は?」


 やはり、このウェイターの中の紅一点はそう簡単に口説き落とせないようだ。


 「私たち給仕するしか聞いてないんだけど?」


 と給仕してない人間が異議を唱えた。


 「もちろん、報酬は倍出します。それにうまくいけばさらに謝礼いたしますわ。」


 このウェイターの女とカミーラに天と地ほどの差を感じたのは、僕だけではないはずだ。


 すると女は、満更でもない顔をした。


 「なら、私も文句ないです。」


 どうやらこの女は金に目がないのかもしれない。


 「よかったですわ。では、早速催しを始めますわよ。今夜は楽しくなりそ!」


 カミーラは楽しそうにスキップをしながら、帰っていった。男達の鼻がどんどん伸びていく。


 会場に戻ると、ほとんどの客人が空のグラスを自分の外側に向けて立っていた。


 「この時代のやつは言葉が喋れないのか?」


 急に背後からカイの皮肉が聞こえてきた。


 「それで収穫は?」


 「催しをするから窓のそばに立てって言われたくらいかな?」

 

 そう言った後に、もう一度さっきの出来事を頭の中で反芻した。だがそれ以上の報告するべき出来事はなかった。


 「言われたくらいかな?」


 カイが明らかに失望しているのがわかる。だがそれ以外と言ったら、カミーラヴァインズが魔女とは思えないという感想しか残らなかった。


 「君、女に騙されやすいだろ?」


 カイが、人の心を読めることを忘れていた。


 「ということは、君も窓のそばに立つのか?」


 「立つけど・・・。」


 カイは周囲の様子を伺っている。


 「全員立つことを了承したのか?」


 「うん、」


 「あの女もか?」


 カイが指差したのは、背の低いウェイターの女だった。


 「ああ、確かに一回渋ってたけど、報酬が上がるってなったら、承諾してたよ?」


 「で、なぜ君は?」


 「任務のため?」


 「だとすれば君の選択は不正解だ。」


 「なんで?」


 思わず出た強い口調に、カイも驚いている様子だった。自分なりにない頭を使って考えた上での結論だった。それをいとも簡単に否定されれば、誰でも同じ態度をとるだろう。


 「なんでって、計画通りに事が運ばなくなったとき君ならどうなる?」


 「次の計画を練る?」


 「だが、それが計画の最終段階で起きた上に、辞めることが出来なければどうなる?」


 「強行突破?」


 だが、自分なら単純に諦めるだろう。そういう人生だ。


 「そう!つまり実行される計画が不十分の状態なら、欠陥がある可能性が出てくる。そうすれば阻止するとなった時に、成功確率が上がるってわけだ。」


 残念ながら、さすがにそこまで考えられる頭は持ち合わせていない。


 すると、再び鈴の音が鳴り響いた。


 各窓には、すでにウェイター達が立っていた。完璧の出遅れた。


 とりあえず急いで自分の定位置に向かう。


 だがウェイターが全員窓のそばにいなかったにもかかわらず、シャンデリアの照明が少し落ちて、客人達がざわついた。


 「お集まりの皆さま、いよいよ今宵のメインイベントを始めましょう。」


 今度はカミーラが嬉しそうに、客人に語りかけた。


 どうにか窓の前に辿り着いた。一番右端の質素な位置にある窓だ。正直、外の景色なんかまるで見えない。


 だが、微かに何かが動いたような気がした。


 窓の先にある中庭には、ブドウ畑が広がっている。もしかしたら、その茂みが風でゆれただけだったのかもしれない。


 視線を再び客人の方へ向けると、カイがこちらを鋭い眼差しで見ている。


 何かが起こるようだ。

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