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ミスター・ブルーズ 〜目覚めたら誰もいなかった〜  作者: マフィン
美女と野獣とモンスターハンター

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魔女

 「チリンチリン。」


 まさに文字通りの音色を響かせた鈴は、客人の耳の中にしっかり響いていた。


 そして初めて雇い主の姿を見た。存在していたことに驚きだ。


 雇い主は三人。三人とも同じ真っ赤なドレスを身に着けている。この時代にはそぐわない派手なドレスで、露出が高く目のやり場に困った。


 三人とも色白・・・、いや、と言うよりかは顔色が悪く、チークや口紅、アイシャドウの色がいっそう際立って見える。


 「みなさーん。ようこそ我がヴァインズ邸へ。」


 真ん中にいた女性が芝居かかった口調で、客人に呼びかけた。男性客の鼻の下が伸びているのがわかる。


 「皆さん、今宵は楽しい時間をを過ごしてくださいね。」


 今度は左側にいた背の高い女性が、大きな身振り手振りで話した。男性たちはその一挙手一投足に目を奪われているのに対して、女性達は少し劣等感にも見える表情を浮かべている。


 確かに彼女らの透き通った白い肌に見惚れてしまうのもわかる。だが、その白さが逆に不気味に思えた。


 「みなさま、ワインのお味はいかがでしょうか?このワインは我がヴァインズ家に代々伝わる秘密の製法で造られたワインです。ぜひこの機会に思う存分ご賞味ください。」


 すると今度は少し背の低い右にいた女性が、窓の外で光り輝く満月を眺めた。


 「今宵は満月。満月には、心身のエネルギーを高め、不要なものを手放し浄化するパワーがあります。」


 そう語る彼女の目は虚ろな輝きをしている。


 「今夜はそんな魅惑的な夜ですから、そんな夜にふさわしいちょっとした催しを用意しました。」


 「ぜひみなさま、素敵な今宵の集いを思う存分楽しんでください。」


 「それでは私たちは準備がありますので、また後ほど。」


 そう言うと三人の女主人たちは、どこかへ行ってしまった。

 

 途中から誰が喋っているのか分からないほど、三人の顔は似ている。


 「あれが噂のヴァインズ三姉妹か。」


 「なんて美人なんでしょう?」


 客人たち、その中でも特段紳士たちは、彼女たちの話で盛り上がっている。


 「あの女が魔女か。」


 「まっまっま、魔女?」


 カイから発せられた思いがけない単語に、思わず聞き返してしまった。


 するとカイは、新聞記事をこちらに見せてきた。


 「この土地はこの時代、まだ魔女裁判とかいう慣習が残っていて、その犠牲者の中の一人にこの女、カサンドラヴァインズがいる。」


 新聞記事にはさっきの口上で、真ん中に立っていた女が写っていた。だがそれよりもこの新聞記事に気になることがあった。


 「この新聞記事はどこで?」


 記事の文字を舐め回すように眺めながら尋ねた。


 「一週間後の新聞だ。」


 「違う。場所のこと。」


 「場所って・・・。ここだけど・・・。」


 カイが困惑している理由は分かる。だが、どうしても、見せられている新聞記事の文字が日本語で書かれていると、頭がごちゃごちゃになってしまう。

 

 「ちゃんと機能しているみたいだな。」


 カイが新聞記事とこちらを交互に視線を送りながら、ニヤニヤしている。


 「実はカニカマにダイナー星の技術を教えたら、このメガホンレーザーをとんでも翻訳装置に改造してくれたんだよ。」


 つくづくカニカマが何者なのか気になる。


 「それのおかげで、この新聞記事が日本語で読めるってことか?」


 「それだけじゃない。言葉まで翻訳されるし、それが適用されるのは、使用者の我々だけじゃない。このメガホンレーザーから半径・・・。」


 カイの説明が珍しく途切れた。


 「あれ?いくつだったかなぁ?」


 「それ結構大事じゃないか?」


 そう突っ込みながら新聞を読んでみた。


 カイはこっちがウェイターとして潜伏している間に、いろいろと情報を集めていたようだ。


 「じゃああの女は魔女だってこと?」


 その時、何人かの客人がこちらを見たのがわかった。初めて存在を認知された気がする。


 「今のセリフがこの歴史につながっちゃったかもな。」


 カイが持っている新聞を指しながらポツリと言うと、客人たちは何事もなかったかのようにまた歓談を始めた。


 「でも、魔女なんて実際にはありえないだろ?」


 「ああ、この地球の歴史にあるモンスター話の原因は、大抵宇宙にある。」


 「じゃあ、吸血鬼とか狼男も?」


 「そもそも地球人のDNAは、そんなふうには作られていない。だったら原因は宇宙しかないだろ?」


 新事実をカイはさらっと述べて見せた。とりあえず他のモンスターの例も探してみた。


 「ミイラ男とかフランケンシュタインも?」


 するとカイの目つきが変わった。


 「言っておくが、フランケンシュタインは、怪物を作ったマッドサイエンティストの名前であって、あの緑色のバケモノはフランケンシュタインではない。」


 知らなかった。だって続編で出てきたフランケンシュタインの花嫁は、あの怪物の花嫁であって、博士のではないはずだ。


 「じゃあなんて名前?」


 「さぁ?怪物じゃないか?」


 何とも淡白な答えだ。恐らく興味がないのだろう。だが、どうしても気になってしまう。


 「じゃあ、カイだったらなんてつける?」


 カイは少し悩んでいる様子だったが、すぐに顔を上げた。


 「ハルk」

 

 「じゃあ、彼女たちがそうだってことか?」


 嫌な予感がして話を遮った。


 「本当に彼女たちかは分からないが、そう言った類の何かはこの土地に潜んでいるだろうな。」


 「え?でも・・・。」


 「そう、カサンドラヴァインズは恐らく魔女なのかもしれない。まぁまだ何もしちゃいないがな。」


 まぁ確かに、超自然的なことはまだ起こってはいない。


 「だが、魔女三姉妹と決めつけるのは、まだ早計かもしれない。」


 「でも、カサンドラが魔女なら他二人もそういうことなんじゃないのか?」


 今度はちゃんと声を落として、周りの人間に聞かれないようにした。


 「だが、この記事には処刑された人物の名前はカサンドラの名前しかない。」


 「庇ったとか?」


 「何にせよ、他の二人は処刑されていない。」


 その時、再び三姉妹のうちのカサンドラじゃない方の片方が現れた。


 「ウェイター。ちょっと集合して。」


 相変わらず見惚れるほど美しい。そう思っているのは、客人の紳士達もだろう。


 このままなら、客人よりもウェイターの方が多くなってしまうのではないかと心配した。

 

 「雇い主がお呼びだぞ。ウェイターさん。」


 カイはそういうと、そっと耳元に近づいてきた。


 「用心しろよ。」


 カイからその言葉を聞くと、一気に緊張感が増した。

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