七十二時間後・・・
あの事件から三日が経った。この三日間はあっという間に過ぎた気がしたが、耐え難いほど退屈な七十二時間だった。
総理は相変わらず記者会見に追われ、すっかりテレビの中の人に戻ってしまった。ひとまず、バラバラに飛ばされていた人々の対応がひと段落しているようだが、まだまだ問題は山積みのようだ。
ただ、会見の映像がテレビで映る度に、首相官邸の内装が気になるようになった。
たまに、自分が入ったことのある場所が映ると、テンションが上がっている様を傍から見たら、カニカマ級の異常者だろう。
カニカマといえば、彼もあれから音信不通である。あんなふざけたワンボックスカーに乗っていればすぐに分かりそうだが、多分この辺りにはいないのであろう。
結局彼は何者だったのだろうか?そもそも三日前は挨拶もろくにせず、みんな別れた。総理も首相官邸に着いて早々に記者に囲まれてしまい、話す暇もなかった。
そして、カイだ。彼とは・・・。
数分前に会った。あのコンビニの前で。
今日は最後の出勤日だった。三日前の事件の後、普通に仕事へ向かった。だが、一日中起きていたせいで、仕事中の大事な局面で爆睡をかましてしまったせいで、取り返しのつかないミスをしてしまった。怒られるとは思っていたが、まさかクビになるとは思ってもみなかった。
それで世界を救ったのにこんな仕打ちを受けた自分の運命に嫌気をさしながら、夕食を求めてあのコンビニに向かった。
コンビニの中はあんなに荒れ果てていたのに、もうすっかり元通りになっていた。店長が相当頑張ったのであろう。
今日はいつも買っている唐揚げ弁当と、カニカマを買ってみた。あの時はカニカマに取られてしまい、食べれていない。
その二つをレジへ持っていくと、スタッフルームから若い女性の店員がやってきた。
「いらっしゃいませ。」
ぶっきらぼうな挨拶を聞いて、ふと視線を上にあげた。
現実はそううまくいくわけではない。彼女はあの爆発の犠牲になってしまったのだ。その現実を変えることはできない。
だが、普段の日常が、たった三日で元に戻ってしまっただけに、あの出来事は本当は起きていないのではないかと、錯覚してしまう。
気づけば、自然と涙が出ている。自分でもなぜだかわからない。もちろん、レジを打っている店員に心配されるわけでもなく、むしろ引かれているというのは分かった。
おつりが十円多い。だが、店員はすぐに裏にはけてしまった。
まただ・・・。これでこのコンビニは二十円も損していることになる。とりあえず、そのままこの前の十円と合わせて二十円を、募金箱に放りこむとコンビニを後にした。
その時、
「君のそのあざってまだかゆい?」
急に聞こえてきた聞き覚えのある声に、思わず笑顔がこぼれてしまった。
声は後ろから聞こえた。
声のする方に振り返ろうとした。
また、期待が外れてしまったらどうしよう。そんな現実はうまくいかない。
そう保険を掛けながら、振り返える。
そこにいたのは、見覚えのある背の高い外国人だった。だが、今日は暑い季節に似合わず、青に白のストライプ柄のスーツに、ベージュのロングコートを着て彼は立っている。
「さみしかった?」
「今度は何の用?」
素直に反応できなかった。
「旅のお誘いをしようと思ってね。」
彼は、軽い口調だった。
「カニカマの方が良いんじゃないの?」
まだ、素直になれない。
「彼は忙しいから。」
「僕だって・・・。」
「仕事クビになったのに?」
カイは何でも知っている。まぁ、もしかしたらあんなにクビになるのが早かったのは、彼のせいなのかもしれないとも思った。
少しの間、沈黙が流れた。そして、もし一緒に旅をするなら、一番聞いておきたいことを尋ねた。
「あんたは、いったい何者なんだ?それに何のために、旅をしているんだ?」
カイは軽くため息をついた。
「そろそろちゃんと説明してくれないか?ここまでの事が起きたら、もう何聞いても驚かないって。」
すると、カイの顔から笑顔が消えた。
「この地球は、近いうちに侵略される。僕はそれを阻止するためにこの時代に来た。」
「タイムトラベラーってこと?」
「いや、僕は時そのものだ。」
今まで彼から説明された内容の中で、最上級に理解できなかった。
「じゃあ、今回の出来事も起こることはわかっていたってことかい?」
「ああ、大まかにはな。」
「じゃあ、あの時核ミサイルが飛んできて・・・。」
「全部分かっていた。だが、今回は僕も知らなかったことが多い。特に、地球人がまさかこんなに高度に進化していたなんて・・・。」
カイは食い気味に答えてきた。
「だったら、そもそもタガニウムをこの地球に・・・。」
「そう単純な話ではない。」
諭されるように言葉が返ってくる。
しばらく、頭を整理していた。
「隠していてすまないと思うが、時間というのは複雑なんだ。」
別に隠されているとも思ってはいなかった。恐らくカイも、我々の理解が追いついてくれば、いずれ話をしてくれたと思う。
「でも、なぜ今急に?」
「どうやら、君がカギみたいなんだ。」
「僕が?」
「ああ。」
「なぜ?」
「君が生き残ったのは、今回が初めてだからだ。」
さらっととんでもない発言をしてきた。
「どういうこと?」
脳みそがパニック状態だ。だが、この三日間、脳はこの刺激を求めていたに違いない。
「君の存在がこの時間を混乱させているようなんだ。だから君はあの事件以後、孤独を感じていたんだろう。そもそもこの時間に存在しているはずの人間ではないのかもしれない。」
「なんで?」
孤独なのは昔からだし、それは自業自得だ。だが、なぜこんな奴がそんな壮大な話の中心人物に選ばれたのか、心底疑問だ。
「わからない。だが、君の存在はもしかしたら、変えることができなかった運命ってやつを変えることができるのかもしれない。」
カイの言葉には、毎回重みを感じていた。それはもしかしたら、今まで一人で定められた運命と戦ってきたからなのかもしれない。
「わかった。行くよ。」
思っていたより、自分の中でも早く決断できた。それにタイムトラベルには興味がある。
「よし、じゃあ早速出発だ。」
カイに、いつもの軽い口調と笑顔が戻っていた。
「ちょっと待ってくれよ。荷造りしなくちゃ!」
「そんな時間はない。いや、時間は自由自在だ。」
笑いながら、メガホンレーザーを見せつけてきた。
「まさかそれで?」
「はい、これ!」
カイが渡してきたのは、イヤホンの片耳だった。
「何これ?」
「ブルートゥースイヤホン。便利な世の中だ。」
こんなものでタイムトラベルをするのか?そもそもできるのか?すべてが想像と違う。
「少し耳がキンとするかもしれないけど、絶対に外しちゃだめだぞ!」
そう言われると怖い。
こうして、耐え難いほど退屈な七十二時間を経て、僕はタイムトラベルをすることになった。
目的を果たすために。
第一章はこれでおしまいです。お疲れ様でした!そして第二章もよろしくお願いします。
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




