χ=カイ
足早に移動するその人影を追跡していると、やつがとある建物の中に入っていくのが見えた。
「昨日のコンビニ?」
すぐに、頭の中には昨日の店員の顔が浮かんできた。やつは昨日の店員を探しているのか?だとしても、やつを追跡している道中、本当に人間の影一つ見つけることができなかった。コンビニの中に人がいる可能性が限りなく低いと納得できるほどだ。
だが、コンビニの前にはスクーターと、乗用車が2台止まっている。
もしかしたら、俺が寝ている間に何かが起きて、みんな建物の中に避難しているだけなのかもしれない。
まぁだとしたら、よくある一戸建ての店舗なのだから、外から人影が見えてもよさそうだが、そもそも店内自体が真っ暗で、居たとしても見えないだろう。
とりあえず、奴は今コンビニに入ったばかりだ。急いで家に帰り、身支度を済ませれば、何かあっても間に合うだろう。
そう、どうしても身支度がしたかった。なにせ、今の格好は深夜に軽くコンビニに行くような、シャカシャカと音がするようなジャージ?かつてウィンドブレーカーと呼ばれていた代物を上下に身に着けているだけだ。とてもじゃないが人に会いたくはない。
それに、財布やスマホもない。もしかしたら、このまま永田町にある首相官邸まで行くことになるなら、なおさら必要になる。
シャカシャカと音を立てながら、一旦帰宅した。夜とはどこか違う景色に見えた。もし、この近くに自分を狙う盲目のスナイパーがいたら、おそらくこの音ですぐに仕留められるだろう。
家に戻ると身なりを整え、財布のお金を確認した。
永田町まではいけるだろう・・・。電車が動いていればの話だが。
すぐにまた家を飛び出し、コンビニへと向かった。今度は人に会っても大丈夫な服装で走っていた。さっきより音もしない。
再びコンビニの前に到着したが、さっきと様子は変わっていない気がする。あれからどのくらい経ったであろう?もしかして、もうすでにやつは用を済ませ、このコンビニにはいないかもしれない。だが、その心配はすぐに無用であることが分かった。
「支度は終わった?」
コンビニの入り口から、急に顔が出てきた。
「あれじゃあ、確かに都会に行く格好ではないなぁ。」
「は?」
思わず出た一言だ。いろいろ頭の中によぎる。なぜ支度して仕切り直していることを知っているのか?見てもいないはずなのに、なぜさっき着ていた服がぱっとしていないことが分かったのか?そもそもなぜ、周りに誰もいなくなったのに、よりにもよって外国人がいるのか?そもそもなぜ外国人なのに日本語の発音が完璧なのか?
「そりゃ、こんな静けさであんな音を立ててれば、誰だって音のする方を見るし、それから数分で服装を変えて帰ってくれば、首相のあの放送を見て、この緊急事態に感情に身を任せ家を飛び出し、感情に身を任せ俺を追ったものの、遠出の支度を整えにまた家に戻ったと考えるのが妥当だろう。」
あれ、今声を発したか?
「いーや、声は発していないし、その質問に答える前にまだ質問に答えている最中だ!」
やつは、人差し指を前に出し、きっぱりと言い放つとまた、早口でまくし立てた。
「ここに誰もいなくなってしまったことに関しては、今調べている。それに私は外国人の顔をしていない。立派なアジア人の顔を形成しここにいるはずだ。それに君たちの言語を話せているのは、さっきトランスレーションガムを噛んだからで・・・。」
急に彼の早口が止まった。
「何?僕の顔がそんなにおかしいかね?」
おかしいとかの話ではなかったが、とりあえずそれは事実だし、うなずくことにした。
「アジア人ではない?」
小刻みに何度もうなずいた。
「全く、この星の住人の顔は、みんな同じに見える・・・。」
急に地団駄を踏み出した。
「まぁ・・・いいや。」
また、気になる一言が耳の中で、ぐるぐる回りながら脳の中に溶けていった。
「あんた、一体何者なんだよ。」
頭の中がぐちゃぐちゃすぎて、そのストレスをぶつけた。するとすぐにやつは答えた。
「僕はχ。プリーズコールミーカイ。」
そういうとカイは、また人差し指を出して、今度はちょっと待ってほしいという顔をすると、ポケットからガムを取りだし、口に放りこんだ。
「すまん、ちょっと効き目が・・・。」
それも気になる。とにかく今は彼のペースに飲まれないように必死だったが、あまりにも不気味な行動が多すぎて、すでに心が折れそうだ。
「そういうことではなく、あなたは何者なんですか?」
すかさず質問で返された。
「君こそ何者だい?」
「僕は・・・。」
言葉に詰まった。
「僕が見たところ、今君は自分の名前を名乗ろうとした。君の質問に答えたときの僕のようにね。」
気まずい沈黙が流れた。
「まぁ、とりあえず立ち話もなんだし、早くおいで。お友達もいるよ。」
そういうと、やつはコンビニの中に入っていった。まるで自分と話すのを待っていたかのような振る舞いに少し警戒したが、とりあえずやつについてコンビニの中に入った。
中は思っていた以上に薄暗く、外の光でぼんやりと足元が見えるくらいだった。店の中は特に荒らされた形跡はなかった。だが、レジの裏側から誰かがせせり泣く声が聞こえていた。
間違いなくレジカウンターの裏に誰かいる。
急いでレジの裏にまわると、誰かがカウンターの裏に隠れていた。非常に怯えているようで、全身震えていた。
近づくと向こうもこちらが見えていないのか、声を上げながら首を横に大きく振っているのがわかる。どうやら何かを咥えているようで、言葉は話せないらしい。
怖がらせないように、ゆっくり近づく。だんだんと全貌が明らかになる。
「お前、彼女に何してんだよ!」
思わず怒鳴った。もしかしたら、昨日のコンビニの店員に少し気があったからかもしれない。あるいは彼女がレジの下の何かと両腕を縛り付けられ、布を口に噛まされている状態だったからなのか?
ただどちらにしても、この薄暗い狭い空間で、これから自分は奴と戦わなければならないことはわかった。
こっからさきΧはカイと表記しますが、ずっとΧと思っててください。(今のところ特に理由はないです。)
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




