着陸
もはや今いるこの場所は現実なのか?それとも、かなりリアルな夢なのか?このバリアの先では一体なにが起きているのか?
そういえば、日本で起きているこの異常現象に、世界中はどれほど大騒ぎになっているのか?べリングキャットがあの映像を撮っている以上、話題にはなっているはずだが・・・。
もしかしたら、映像に対してフェイクとか何かのメッセージだとか、オカルト的な観点ではいろいろな議論が交わされているかもしれない。
もしくは、誰にも気づかれず、ただただ平和な日常が送られているかもしれない。
だが、このままいけば確実に大きなニュースになるだろう大惨事が、今から起きようとしていた。
「今どうなってる?」
「ものすごいスピードで落下してる。」
カイとカニカマは、まるで二人で協力プレイをしているゲームの世界で起きたことのように、冷静に話していた。
「さっきの地震か?」
「なんで地震なんて起きるんだよ!」
総理の疑問に、カイがさらなる疑問で返していた。
「そりゃこっちが聞きたいね!」
総理の言う通りだ。カイの分からないことは、この地球上で誰も分からないだろう。
「カニカマ!出力を上げてくれないか?」
「やってるけど、さっきだってこちらの操作に速度が反応したのは、だいぶ経ってからだったぞ?」
だんだんと、ジェットコースターが急降下しているときのような、心臓が締め付けれられているような感覚が出てき始めた。
「大丈夫か?これ速度上がってないか?」
総理も同じような体の変化を感じたのであろう。言葉から焦りや恐怖を感じ取れる。
「分かった!分かったけど終わった後に文句はなしな!」
あまりにもな唐突さと、説明の無さに少しの間、沈黙が流れた。
「何が?」
沈黙を破ったのは、総理だ。
「だから、ちゃんと着地させるけど、終わった後に文句だけは言うなよってことだよ。」
「そりゃ分かってるよ!だから、今から我々はどうなっちゃうのかがしりたいの!このままだったら、やばいよねぇ?」
総理の語彙力が、いよいよ崩壊してしまった。
「今の推定速度から考えても、良くて建物が全部崩壊するくらいかもしれない。」
「は?」
確認しておくが、今落下しているのは日本の関東地方の中心部。
なんなら首都と呼ばれる東京が含まれた大陸だ。
東京に建てられている高層ビルの数々、地上地下に張り巡らされている路線。さらには、国会や皇居など、国の中心的な役割を担う施設や建造物。
それらすべてが崩壊するなんて、映画や小説の世界だけの話だ。
それだけではない。どのように着地するのか?下は海面なのか?それとも地面?もしくは、地面と表現していいものなのか分からない何かが、下で大陸の着地を待っているのかもしれない。
兎にも角にも、このまま何もしなければ、さらに速度が増して、我々がいる落下中の大陸だけではなく、下に残されている他の大陸も無事では済まないだろう。
「じゃあ、どうする?」
「だから、文句なしって約束してくれ・・・。」
「分かった!文句は言わないよ!無事に着地できたら、何も言わないから!」
総理は食い気味に答えた。それほど、落下している時間が長く感じた。つまり、地面にもう間も無く到達してしまう。
「おっけい!文句なしいただきました!」
カイの号令に、カニカマはキーボード操作で答えた。その瞬間、体が急に重たくなった。というより上と下から鯨か何かで、板挟みにされる感覚に近い。
そんなことになったら、とてもじゃないが立ってはいられない。それは、みんな同じだったようだ。我々は地面に伏せながら、この大きな大陸が無事に着陸するのを願った。
体が押しつぶされ、内臓やら目玉やらが飛び出してきそうだ。その限界が来るか来ないかのところで、重圧から解放された。
「成功か?」
カイが、真っ先に起きあがった。あたりを見回しても、風景に変わりはなかった。いや、星が消えている気がするが果たして・・・。
「生きてはいるぞ。」
総理も起きあがった。皆、安堵のため息を漏らした。
「本当は、ゆっくり優雅に降下しようと思ったのに、とんだ着陸ショーになっちまったな!」
カニカマは相変わらず、能天気だ。
「ああ、それは謝罪しておこう。よし、解除していいぞ。」
カニカマが、エンターキーを押した瞬間、ほんの一瞬だったが、ものすごい大きな揺れが起きて、再び我々は地面に転がった。
周りの木々や、建物が大きな音を立てたが、なんとか持ち堪えたようで、再び何もなかった様子を演じている。そう考えると、日本の技術は本当に凄い!
「すまん・・・。着地しきる前に、止まってしまったみたいだ。」
「なら、もう平気か?」
「ああ、安心しろ。」
カイと総理は、寝転んだまま話していた。
ようやく、日本の大陸を元に戻すことができたようだ。だが、そうなると今度は、いなくなってしまった人々の問題に直面した。
いったい彼らはどこへ行ってしまったのか?何百万という人々が姿を消している。どこか一箇所にまとめられているのか?それとも、本当に存在を跡形もなく消されてしまったのか?
そのとき、またもや揺れが起きた。揺れすぎてなんだか気分が良くない。すると地面から、聞き覚えがある独特の機械音が聞こえてきた。
「やっぱり、さっきの揺れは奴らの仕業か。」
「奴らって?」
「君たちが怒らせた、銀河のお偉いさんたちだよ。」
独特の機械音は、だんだんと大きくなり、数も増えてきた。
「艦隊で攻めてきたか?」
相変わらず、カイは嬉しそうだ。
「どうする?」
「もちろん、降伏する。」
カイは無邪気な微笑みを、こちらに向けてきた。
「何言ってんだよ!そしたら・・・。」
総理は激しく抗議した。すると、カイの微笑みが呆れ顔に変わった。
「あのさぁ・・・。あんたそれでも、国のトップなんでしょ?文句があるなら、僕にお伺いなんか立てずに、自分で判断したらどうなのよ?」
二人が言い争いをしている間にも、奴らの球体の乗り物が、地面から無数にわいて出てきた。
名パイロットだわ!
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




