復讐
一触即発の状況・・・と思っていたのは、自分だけなのだろうか?いや、総理もそう思っていたに違いない。彼は、この状況の主導権を完全に握っていると思っている。
だが、宇宙人サイドはそうは思っていなさそうだ。議長は、相変わらず毅然とした態度で、総理を眺めている。
総理はいつからここにいたのか?そもそもどうやってここに来たのか?詳しくは分からないが、ワイシャツの袖や、上質なスラックスの裾の破け具合から、過酷だったことは伺える。
二つの勢力が睨み合っている間も、背中は痒い。それは、店員の彼女も同じだと思われた。だが彼女の視線を移すと、痒がっているどころか、カニカマみたいに痛がっているように見えた。それでも、静かに耐えている様子だったが、明らかに腕を悶絶した顔で抑えている。
証言の時に、こちら側に来たおかげで彼女の腕をしっかり見ることができたが、腕は、赤い光の筋ができていた。この筋は恐らく血管に沿っているのだろう。
自分の背中も同じことになっているのか?今まで見えるところにある奴がいなかったせいで、この現象に気づけなかった。
そんなことを考えている間も、話が進んでいる。
総理はボロボロの状態で、奴らを睨みつけて立っていた。レットストーンの赤い光が総理の怒りの顔をさらに際立たせた。
「分かるか?今までずっと怒りや憎しみをぶつけるところがないこの気持ちを!自然災害は仕方がない。そうなる運命だったんだ。ずっとそう言われてきたし、自分自身でも、そう思うしかないと思ってた。」
確かに自分もよくそう慰められていた。運命という言葉はよく聞いた。悔しいがその通りだと、さっきまでは思っていた。
総理もずっと奴らの話を聞いていたに違いない。さっき見た赤い光は、総理が持っていたレットストーンだった。
「でもある日届いた地球外からの信号で、そんなことは無かったと・・・。あの子は死ぬべくして死んだんじゃ無かったと分かった。」
総理の目からは、すでに何滴もの涙が頬をつたっている。
「それを知って、子供の復讐をしない親がいると思うか?」
「それで、最初からそのために?」
カイの言葉にようやく視線が、他の部分にうつった。
「ああ。最初から彼らよりも先に、そのタガニウムってやつを見つけて、復讐を果たすつもりだった。あざのことも何もかも知ってはいた。」
すると総理は、今度はこちらに視線を移した
「すまなかった。君を利用するようなことをしてしまって・・・。許してほしい。」
もちろん、怒ってなどいなかった。利用されているとも思っていない。それよりも背中がかゆい。
議長は冷たい視線で、冷たい言葉を吐くようだ。
「理由がなんであれ、もしあなたが我々を攻撃するなら、IGTOの条項にのっとり、この星全体に対して、武力行使を行う事になります。」
謝罪の一つでもあるのかと思いきや・・・。少し奴ら見直しかけていた自分を恥じた。
「ああ、いいさ!こいつの威力はさっき見た!爆発さえ起こせれば、あんたらだっておしまいだ。」
「いやーそれが・・・。そうでもない。」
カイが割って入ってきた。
「すまんが邪魔をしないでくれ。」
「だが、君が今やろうとしていることは、とても賢いとは言えない。」
声をひそめているが、丸聞こえだ。
「分かっているさ。だが、復讐さえ果たせればなんだっていいさ。」
また、議長から冷たいお言葉が聞けるようだ。
「であれば、最後にこちらから一つ訂正しておきたいことがある。我々ではない。」
「何が?」
総理よりも先に、カイが反応している。
「さっき彼が言っていた信号のことです。それは、我々ではありません。我々は決して地球どころかどこかの星に信号を送るという行為は一切ありえません。」
「条項通りってわけか?だが、どちらにせよ地震の元凶を作ったあんたらを葬れればそれで良いさ。」
総理は少し躍起になっているようだ。
「あんた!さっきの爆発の時にやってたあのよく分からないバリアの準備をしてくれ!行くぞ!」
カイにそう言うと、総理はレットストーンを持つ、右手を後ろに振り始めていた。
「だから、物事はそう単純じゃ・・・。」
カイがそう言うのも時すでに遅く、総理の手からレットストーンは離れていた。
すると、その場にいた議長やずんぐりむっくりを始め、職員全員がメガホンレーザーを取り出し、青いバリアのようなものを張っていた。
「だから言っただろ?このバリアは奴らの技術だ!」
だが、それ以前の問題だった。
「あれ?爆発は?」
総理の間抜けな声が響き渡り、レットストーンがもの悲しげに転がっている。
総理はすかさずこちらに駆け寄ってきた。
「どうやるんだ!あの爆弾はどうやって爆発させたんだ?」
確か放り投げた?いや?ただ持っただけだったような気がする。
「爆発物が不発だったにせよ、その威力を考えれば、我々に対しての反逆行為とみなし、今この時を持ってIGTOは、この星に対しての制裁処置を取ることが決定しました。」
議長の冷淡な声が、いつも以上に響いていた。
「ちょっと待ってくれ!」
カイは慌てていた。しかし、我々地球人はあまりピンと来ていない。
「それよりもまずは、この大陸を元に戻さなければ、あと数十分もしたら、地面に叩きつけられて、全員死ぬぞ!」
「我々をみくびってもらっては困ります。」
「確かにそうだ・・・。」
カイの目は、真剣そのものだった。当事者である地球人の我々よりも・・・。
我々は、恐怖に対する防衛反応で、毅然とした態度をとってしまっているだけなのか?それとも、我々は自分たちを過信しすぎてはいないか?もしそうなら、果たしてそれで良いのか?
「だが、君たちも気づいているだろ?今回の件は裏で糸を引いている奴がいる。このままだと代理戦争みたいなことが起きるぞ!」
「戦争になどなりません。」
それは、平和的な意味じゃないことは、すぐに分かった。
「そうか、だったら・・・。」
カイには、まだ策があるようだ。
「逃げろ!」
はやとちりだったようだ。カイは、一番すぐには動かないであろう総理の手を引いて、建物から一目散に出た。
そして、コンビニ店員の彼女を連れて行くのは、自分の役目。しかし、彼女の姿がなかった。
地球では聞いたこともないような、サイレン音がけたたましく響き渡り、職員たちが一斉に追いかけてきている。
いや、それよりも少し手前に目標を定めているのか?
その時、後ろから何かに引っ張られた。その力に抗うことなく、いや抗おうと思う時間がなかった。
何せ、彼女がレットストーンを持っていることを認識し、ことの重大さに気が付くのが遅かったのだから。
無知は罪
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




