発見
奴らが乗っている球体の乗り物は、思っていたよりも中は広かった。
人が一人、中で操縦するのに困らないくらいの大きさだと思っていたが、大人4、5人が立って歩けるぐらいの広さがあった。
中の明かりは、自分達の服やらなんやらの色が、浮いて見えるほど真っ白で、LEDよりも光量が強くだんだん頭が痛くなってきた。
カイは、奴らと何か話しているようだ。しかし、こちらには何一つ伝わってこない。
そして奴らの姿だ・・・。どこからどう見ても人間だ。
見た目は、ずんぐりむっくりなおじさんで、上下スウェットを着ている。髪の毛は薄く、無精髭を生やしていた。
恐らく自分が思っている以上に、奴らをジロジロと眺めすぎたのか、こちらを見ながら何かを訴え始め、終いには人差し指をこちらに向けて抗議のようなことをし始めた。
どうやらカイが、なだめてくれているようだ。そして、そのままこちらに近づいてきた。
何か言っているが、こちらには電子音にしか聞こえない。いや、これはもはや高音域多めの雑音だ。
カイも何か言っている、しかし何も分からない。
すると、カイはポケットから例のガムを取り出した。
そう、ガムの効果が切れているだけだった。それを頬張り、噛み砕く。
「もしもし?通じてる?」
カイの口から、再び日本語が発せられた。
「効力短くないか?」
「長いのは高いのよ。」
会話が通じてホッとした。
「それでやつはなんて?」
「やつだと?貴様だれに向かって口をきいてる!」
いきなり、別の人物の日本語が聞こえてくると、びっくりというより、俯瞰的になるのはなぜなのであろう?
「しまった!間違えて君に高い方のガムを与えてしまった。最近値上がりしたから、節約してたのに・・・。」
どうやら高いやつだと、一個でいろんな言語に対応しているようだ。高いといってもどれくらい高いのかはよくわからない。
カイの反応からして、300円のコンビニのおにぎりぐらいだとは思うが・・・。
すると、カイが耳元に近づいてきた。
「言葉には気をつけておいた方がいいぞ。異星人感のコミュニケーションでは、しょっちゅう行き違いみたいなことが起こるからなぁ・・・。」
そもそも地球上でも、翻訳が難しい単語や熟語があるのに、どうやって異星人の言葉を翻訳しているのか?このガムの構造が心底気になる。
「何をコソコソ話しているのだ?」
どうやら、カイの耳打ちヒソヒソ話が気に食わないようだ。おじさんの容姿に似合わない甲高い声で、叱責された。
「ああ、大したことじゃないよ。ただ、彼はあなたたちのような異星人を見るのは初めてだから、色々と質問を受けていてね。」
「だったら、直接私に聞いたら良いではないか?ジー・・・いや地球人よ。」
確かに今、なんかよく分からない言葉を発したと思ったが、もしかしたら、これが翻訳の難しいところなのかもしれない。
奴は眉を吊り上げ、こちらを見ている。質問したら答えてくれるのなら、質問をしてやろうじゃないか!
「なんであなたたちは、我々地球人を見下しているんですか?」
しかし、反応がない。もしかして、早速彼らの痛いところをついてしまったのかもしれない。
「あの?聞こえてます?」
だが、奴はただまっすぐこちらを見ている。
「もしかして、言葉通じてない?」
すると、感じ悪くこちらに背を向けた。
「誰が、質問に答えると言った?」
そう言いながら、自分の定位置に戻っていった。
カイは、気まずそうな顔をしている。
「まぁ、あいつらは基本誰かを見下しているから、別に地球人に限ったことではないと思うよ?」
よく、この宇宙で殺し合いが起きないなぁと思ってしまう。
「でも、姿形が一緒なのに・・・。別にあんまり地球人と変わらないし、むしろあんな体型じゃ、逆にこっちが見下したくなるわ。」
間違いなく、地球じゃモテないだろうと、モテない男が言ってみた。
「彼らが決めた法律で、秩序を守るために各星の主要な生物と同じ姿をしなければならないという決まりがあるんだ。」
「だから、人間なのか?その主要な生物ってどうやって決まるわけ?数の多さ?知能の高さ?だとしたら、どれも人間は当てはまらなそうだけど?」
皮肉たっぷりに答えた。
「さぁ?奴らの考えてることはわからん。なぜあんな格好にしたのかも・・・。」
カイはまた耳打ちをしてきた。それが気に入らんのか、またしても奴はこちらを睨みつけていた。
「ということは、あんたもそれが理由でそんな姿なのか?」
「まぁ、そういうことになるな。」
カイはやつに比べて、かなりセンスが良いと思った。
「なら、あんたは奴らの仲間ってことか?」
「まぁ・・・そんなところかもな。ただ、この規則はこの銀河系全体の法律みたいなもんだからなぁ。」
なぜ、その情報が地球に来ていないのか?よっぽど下に見られているに違いない。
この乗り物は、動いているのか?それとも止まっているのか?何せ揺れを全く感じない。外から見たら、歩行に近い動き方をしているところからしても、多少の揺れがあるはずだが・・・。
なんて考えていたら、急に奴がこっちに近づいてきた。
「着いたぞ、降りろ。」
本気で冗談だと思った。しかし、冗談ではなかったとすぐに分かった。外に出てみると、先ほどとはまるで違う景色が広がっている。
トンネルの中ではあるが、さっきよりも眩しいくらいに明るい。白く輝く空間に、物騒な形をした、球体に金属の足がついたような奴らの乗り物が、いくつも停められていた。
周りには、地球人そっくりな奴らの仲間が、右往左往して何かしらの作業をしているようだ。
「こっちだ!」
奴らの出迎えは、かなり手荒だ。ここは抵抗せずに、前へ進んだ方がいいだろう。
しばらく歩くと、今度はさっきからある球体の乗り物よりも、一際大きい乗り物が現れた。いや、これはもはや建物だ。
「議長!爆発現場に、こんな奴らがいました。」
中に入るや否や、ずんぐりむっくりのおじさんは、我々を議長とかいう人物に差し出した。
カイは、陽気に手を振っていた。カイが手を振る先には、気が強そうな金髪で中年の外国人女性が、こちらを睨みつけばがら、座っていた。
そして、その近くには、あのコンビニの店員も怯えながら、座っている。
「ガールフレンド発見!助けますか?」
カイは、この状況を楽しんでいるようだ。
あのガムを考えついた時、ちょうど外国人とコミュニケーションが取れなくて悩んでいました。
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




