逆走
眼前には暗闇が広がっていた。さっきまでぼんやりと見えていたはずなのに、今はすぐそこにいるはずのカイですら姿が見えない。
「大丈夫か?」
どうやら今自分は尻餅をついて倒れているようだ。その時、ぼんやりと今自分がいる場所の様子が、見える瞬間があった。
「静かにしてろよ。」
後ろから迫っていたやつが、方向転換か何かをしたせいで、やつが照らしているライトの漏れが、こちらをうっすらと照らしていたのだ。
その一瞬だが、追って来ていた奴の姿が見えた。とはいえ、おそらく何か乗り物に乗っているのであろう。金属でできた丸い・・・球状のものに、足?いや触手のようなものが、四つ生えていた。
大きさに関して言えば、地球の戦車なんかよりも大きかった。それこそこのトンネルと同じくらいの大きさだ。
そして、触手の先には、大きな爪のようなものが四つ・・・。これがバッテンの跡の正体に違いない。今もその跡を作って、通り過ぎていった。
あの中に、コンビニ店員のあの子がいたかもしれない。だが、今ここで飛び出していっても、一緒に捕まってしまうのがオチだ。
そう考えられるほど、なぜか今は冷静だった。いや、もしかしたら、ただ怖かっただけだったのかもしれない。どちらにせよ、選択としては、正しかったと信じたい。
その得体の知れない乗り物は、カイが言っていた独特の金属が擦れる音を立てながら、我々から遠ざかっていった。
「どこへ向かったんだろう?」
今の素通りの仕方的に、目的地へ向かっているはずだ。
「東京だろう。」
「東京?でも、奴は今東京から来たんじゃないのか?」
「厳密にいえば、東京の地下深くかな?」
そういうと、カイは奴らが向かっている方向と逆方向・・・つまり来た道を戻り始めた。
「でも、だったらその場から地下に降りれば良いじゃないか。なんで奴らはそうしなかったんだ?」
カイに、着いていくしかない。もちろん、なぜ逆走しているのか、疑問に思っていないわけではない。だが、頭の中でそのうちわかるだろうと思うようになった。
「地下鉄だよ。」
「地下鉄がなんだって言うんだ?」
確かに、東京の地下には地下鉄やら、それ以外にも地下街であったり、いろんなものが張り巡らせているイメージだが、それを奴らが今更気にしてくれるほど、慈悲深いとは思えない。
「恐らくだが、奴らにとって地下鉄という存在が未知だったに違いない。それで、被害を最小限にするために、ここからトンネルを掘って、地下へ続く道を作ったのかもしれない。そうすれば、奴らの弱点でもある紫外線の影響も受けにくくなるしな。」
「被害を最小限?」
その瞬間、カイが急に立ち止まった。
「そうなんだよ、僕もそこが引っ掛かってるんだよ。連邦評議会は、なぜこんな手の込んだことをしたんだ?」
「それは・・・地球を見下してるからじゃないの?」
「ああ、だが奴らは、こういう事象に対しては秘密裏に行う組織なんだよ。とてもじゃないが、大陸の一部分を上空に浮かせて、世間の注目を集めるようなことは決してしないと思っていたんだが・・・。」
またもや、だんだん背中が痒くなってきた。
「お?背中痒くなってきたか?」
どうやら無意識に背中を掻きむしっていたようだ。
「と言うことはこの辺りか?」
カイはそう言うと、メガホンレーザーで、その付近の壁や天井を調べ始めた。
「うーん・・・。やっぱりこれじゃダメかぁ・・・。」
どうやらメガホンレーザーでも、何も探知できないようだ。そして、またカイはぶつぶつと独り言を言い始めた。
その時、地球では見たことがなかった光景が、目に入った。
「ここが少し光っているのって・・・。」
「どこ?どこのこと?」
カイは、キョロキョロと左右に首を振り始めた。
「どこっていうか・・・。ここの辺り?」
カイは、首を振るのをやめて、周りを俯瞰し始めた。
「なるほど・・・。と言うことは塵みたいに舞っているのか?それとも気化したのか?」
今度は、こちらに目線を向けた。だが、申し訳ないが、今は満足に話ができないくらいに、背中が痒い。
「そのアレルギー反応は、果たして体内に入ったことによるアレルギーなのか?それとも、外部から直接皮膚に触れて、あざが反応しているのか?」
そう言いながら、メガホンレーザーをこちらに向けてきた。メガホンの先端からが青いビーム発せられたが、今回は直立不動で受けることができた。
「どうですか?」
「うーん・・・。わからん・・・。何せ、塵くらい小さいと、吸い込むことができてしまうからなぁ・・・。」
じゃあ、なぜ・・・。まぁとにかく、今わかっているのは、この付近でかなりアレルギー反応が出ているということ。つまり、この近くに、タガニウムに関係する何かがある可能性が高いということだ。
「となると、この辺を掘ってみたら良いのか?」
「掘るって言ったって・・・。」
トンネルとして最近掘られているとはいえ、土のまま穴の形を保っているわけではない。何かしらの方法で形を維持している以上、恐らく簡単に掘れるほど柔らかくないはずだ。
「まあまあ、見てな!」
カイは、壁にメガホンレーザーをピッタリとくっつけると、本来のメガホンの構えをした。
「よお!」
メガホンレーザーから発せられるカイの声は、トンネルの壁を震えさせた。すると、メガホンレーザーをくっつけていた部分の壁の土が、形をとどめきれず、土の粒がほこりのように落ちているのがわかった。
「ちょっと掘ってみるか?」
カイは、壁を手で掘り始めた。
「どういう原理?」
「さぁ、わからん。僕が作ったわけじゃないし。」
トンネルの中が、一気に土の匂いが充満し始めた。ここまでくると逆に、一体どんな技術でこのトンネルを形成していたのか、さらに気になる。
壁を掘り進めていくと、なぜか辺りが少しずつ明るくなっていった。そして背中の痒みもさらに増していく。
まるで蚊に刺された状態で、ウルシを背に寝転がったようだ。ということは、もしかしたら、目的に近づいているのかもしれない。
「あったかも・・・。」
背中の痒みが、だんだん痛みに変わった。
土の匂いと言ったらさつまいもほりを思い出す
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




