メガホンレーザー
またもや、あのトンネルの入口に来た。最初のときはトンネルに入るまで、背中が痒くなることはなかったのだが、今回は、まだトンネルの中に入っていないのに、掻きむしりたいほど、背中が痒い。
となると、さっきのカニカマみたいに、トンネルの中では激痛が待っているかもしれない。そう思えば思うほど、足がすくんだ。
だが、そう躊躇している間に、奴らは後ろから迫ってきている。
東京から、わずか数分でここまできてしまうやつらよりも先に見つけるなんて、もしかしたらかなり無謀なことなのかもしれない。
「何やってるんだ?早く!」
トンネルの中から声がした。もうすでに、カイは先にトンネルの中に入っている。意を決して入ったとしても、背中が痒すぎてどうしようもない。すると、少し先にいたカイが戻ってきた。
「仕方ない、これを。」
カイの手には、錠剤が二つあった。うすだいだい色の少し細長い円状の錠剤で、何回か見たことがある。
「これって?」
「くすりだよ!アレルギーの!」
多分だが、市販の花粉症の薬だと思った。
「でもこれで痒みを抑えられたら・・・。」
このアレルギー反応でタガニウムを探すのに、抑えてしまったら、見つかるものも見つからない。
だったら、あのワンボックスカーでの苦悩はなんだったのか分からなくなってしまう。
すると、カイの右の口元だけが上がった、なんとも人を馬鹿にしたような顔をしていた。
「何言ってんだよ。こんな薬ごときで抑えられるようなら、まだ、そんなに近くにないってことだよ。本当に近くなったら、また痒くなるから大丈夫だよ。だから、早く飲んで行くぞ。」
カイから錠剤を受け取ると、そのまま丸呑みした。食道から胃にかけて、重く何かが通る感覚がした。ただこれが効くまでは、一旦この痒みと闘いながら歩いて行かなかければならない。
カイは容赦なく、どんどんと先へ進む。足場はでこぼこしており、定期的に溝に足がハマり、痛いとかはなかったが、ただただイライラする。
記憶が正しければ、カニカマが激痛で倒れたであろう地点にきたが、痒みに変化はなかった。これは薬のおかげなのか、自分の体の適応とか何かのおかげなのか?とにかく今は、この足場に慣れなければ、あと数メートル歩いた瞬間、足が悲鳴を上げ始めそうな気がした。
その時、ようやく違和感に気がついた。
カイも自分も、ライトで行先を照らしていなかったのだ。それなのに、カイの顔も見えるし、さっき手渡された錠剤の形から色まで、正確にわかった。
なぜこんなことが起きているのか?たださっき入った時は、カニカマもライトをつけていた。それが暗いからという先入観でつけただけなのか?となると本当は、さっきもライトはいらなかったのかもしれない。
すると、カイは突然周りの壁を触り始めた。
「これまた随分手のこんだ削岩作業だこって・・・。」
そう言いながら、あのよく分からない青色のビームが出る装置を取り出し、照らしていた。
「それなんなの?」
カイは、不思議そうにこちらを見た。
「ああ、これか?メガホンレーザー。」
思っていたよりも、チープな名前だった。でも確かに、見た目はメガホンみたいな形をしている。それこそ今朝、そのメガホンの先から出てきた青いレーザーを浴びた経験もある。
「なんの道具?」
「なんのって言われてもなぁ・・・。いろいろ?」
カイの困った顔を見る限り、本当にこれっていう機能がないのだと確信できた。
「物を探知したり、分析したり、武器としても使える。」
武器として使えるのは、この先少し役に立ちそうだと思った。
「それに、メガホンとしても使えるぞ。」
メガホンレーザーを通して拡声されたカイの声が、トンネル中に響き渡った。その瞬間、後ろから大きな物音が聞こえた。
「オットー・・・。」
「オットーって何?」
後ろを見たが、まだ何も見えない。
「こりゃ、走ったほうが良さそうだ!」
そう言うとカイは、一足先に走って行ってしまった。
「ちょっと待って・・・。」
反射的にそう言うと、足場の悪いトンネルの中をカイを追いかけるように、走り始めた。
すると、足場の溝に足がはまってしまい、大きく転んでしまった。こんな転び方をしたのは、小学生以来だった。
後ろからまた大きな物音だ。今度は、鮮明になんの音だかわかる。さっき聞こえたあの擦れる音だ。奴らがこのトンネルに入ってきたに違いない。
今度はあえて溝に足を入れて先へ進むことにした。溝は思っているよりも深くなっている。その溝に合わせて大きく足を上げて走らなければならない。
カイはどうやって走っているのか、もう結構遠くまで走り去ってしまっている。そしてさらに最悪なことに、背中の痒みも悪化している。薬が効かなかったのか、走ったことによって代謝が上がり、痒みが増幅したのかもしれない。
だが、そんなことに気を取られているわけにはいかない。心なしか、音が大きくなっている気がする。辺りも暗くなっている。どっちに向かえばいいのか?このまま、まっすぐ進んでいいのか?
そう考えているうちに、どんどんと壁に激突してもおかしくないくらい暗くなっている。
後ろから、ライトのようなものまで見えてきた。奴らはもうすぐそこまで来ている。その時、何かに服を掴まれたのを感じると同時に、急に引っ張られ、その勢いで、床に転がった。
「こっちだ!ここでやり過ごすぞ。」
どうやら分かれ道があったようだ。道から外れると、すぐに後ろにいたやつが目の前を通り過ぎた。奴らは思っていたより迫っていたことに、恐怖を感じた。
「やっぱり。連邦評議会の連中の仕業かぁ・・・。でもなんか腑に落ちない。」
カイが何かぶつぶつと言っている。何言っているのか分からないことにはもう慣れた。
今のところメガホンレーザーって欲しくはないですよね!
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




