敵か味方か
首相は、今頃何をしているのだろうか?かれこれ数時間は経っているに違いない。その間一人で車の中で何を思い、待っているのだろうか?
そんなことを考えていたら、急に時間が気になりはじめた。ポケットからスマホを取り出して確認しようとしたが、どうやら充電が切れてしまっているようだ。
「お?充電か?」
カニカマが、異変に気づいてくれた。そのまますぐ近くの引き出しを開けて、中を漁り始めた。
「あいよ!」
白い充電ケーブルの束を軽く投げてきた。
「すまん。」
それを受け取り、スマホと充電器を接続した。だが、スマホの画面には電池が空っぽで、底の方に赤い線が引かれているマークが付くだけで電源自体はつかなかった。
いつから電源が切れていたのだろうか?
結局時間は分からなかったが、辺りが暗くなっている。数時間は経っているだろう。
その間彼は、この国の現状を憂いで、首相として何をするべきなのか考えているのか?
それともこの国を見捨て、奴らと裏切るためのさらなる作戦を練っているのだろうか?
もし彼が、奴らとグルだったとして、奴らと手を組んでどんなメリットがあるのだろうか?
もちろん、まだカイやカニカマの言うことを信じているわけではない。なにせ、その強奪しようとしている勢力が、カイである可能性も十分に考えられる。
「もし首相が奴らとグルだったとして、それでどうする?彼を殺すのか?」
カニカマは不思議そうな表情でこちらを見ている。
「そんな物騒なことを!」
カイは、首を大きく横に振りながら答えた。
「ただ、彼に何でもかんでも話さない方が良い。それだけだ。どの情報がどう転がるか分からないからな。」
カイが野蛮でなくてよかったと思う。
「だから俺もさっきあのトンネルに入った時も、まるで初めて来たかのように振舞ったのさ。」
カニカマの得意げな顔。やはり鬱陶しい。
だが、確かにあの時、総理は痛みもかゆみも起こしていなかった。その時、外で車の扉が閉まる音が聞こえた。総理なのか?
「それよりも我々は、奴らよりも先にタガニウムを見つける必要がある。」
カイの声のボリュームが、明らかに落ちた。もしかしたら、彼も今の音に気づいたのか?
だが、それ以上の変化はないまま、カイは話を続けた。
「まだ奴らは、動いていないはずだ。今のうちに、やつらが堀ったトンネルから入って、先にタガニウムを見つける。」
「了解!」
カニカマが元気に答えた。
「君は来ない方がいい。」
「なんで?」
あまりにも大きくて、高い声だった。耳がまだこもって聞こえる。
「トンネルの入口で激痛なら、見つけたころには痛みで失神か、最悪あの世行きだ。」
どんどんと話が進んでしまっている。本当に彼らに協力するべきなのか?本当に総理は敵とグルなのか?
「りょうか~い。じゃあ、俺はここでポテチでも食って待ってますわー。」
カイは、時計を見ていた。
「日暮れまであとどのくらいだ?」
「もうだいぶ暮れてるよ。」
もうカニカマは、ポテトチップスを食べ始めている。
「まずいな、急いでトンネルまで行くぞ。」
だが、カイのその勢いに乗ることは出来なかった。
「それで見つけてどうする?あんたがそれを奪って地球を吹っ飛ばすって算段か?」
ようやく言えた。カニカマは驚いた顔をしていたが、すぐに顔に笑みが浮かんでいた。一方のカイはまるで、予想していたかのような余裕の表情で、こちらを見てつめている。
「確かに、その可能性はある。だが、もしそれで僕と組まなかったら、君はこれからどうするつもりだ?」
カニカマも同調している。
「正直君たちの知識は、この宇宙においては微生物以下だ。だから残念ながら、僕が君たちにとって悪い種族だったとしても、手を組むしかない。それで見つけた暁に、もし僕が君たちの敵だと思ったなら、どうにか僕を出し抜く。今はそれしか君たちに道はない。」
そうだ。そもそも、選択肢なんてなかったんだ。人間のおごりだ。
この地球を支配しているのは人間。科学技術の進歩で、地球や宇宙のことが分かり始めてきているだけで、まだ何もわかってなんかいない。分かった気になっているだけなのだ。
井の中の蛙だったんだ。
自分の・・・いや人間の無力さを痛感した。
「まぁとはいえ、君に悪党のレッテルを張られながら、この先二人きりで、真っ暗なトンネルを歩くのも癪だし、ここで無知な君たちに悪党には不利なアドバイスを与えよう。」
カイは、またガムをポケットから出すと、口の中に投げ込んだ。
「いま、君たちを守ってくれているのは、太陽の光だ。実は、この宇宙で太陽の光を浴びることができる生物は、非常に少ない。」
まぁ人間も浴びすぎたら皮膚がんとかになってしまうが。
「ところがそんな大事な太陽は、最近、どんどん小さくなっている。それに伴ってか、太陽の光を克服し始めている種族も、少なからず現れ始めている。そんな種族が万が一にも攻めてきたら、君たちには防衛する手段がない。」
今の日本そのものだ。
「そうならないためにも、タガニウムのような抑止力が必要だと思うんだが、どうかね?」
核を保有するかしないか論争のように、もしタガニウムを奴らより先に見つけ、守りきったとしても、その後の大議論は必須であろう。
「もしタガニウムが、他の誰かに奪われでもしたら、君たちを守ってくれるエネルギーは太陽しかなくなる。本当にそれで君たちは、未来永劫生きていくことができるのか?なんてことをもし、僕が敵なら言わないと思わないか?」
それはわからない。だが従う方が良いことは分かった。
「分かった。なら今すぐに行こう!」
「お願いだから、後ろから刺さないでね!死んじゃうから。」
カイのジョークを鼻で笑いながら、スマホを充電器から抜いた。高速充電のおかげで画面の電池マークは緑一色になっていた。
その時、さっきまでなかった着信履歴が、5件も入っていた。
知り合いか?しかし、知らない番号だった。あまりにもしかめ面でスマホの画面を見ているせいで、二人も興味を持ち始めた。
「どうした?壊れたか?」
しかし、今は画面に夢中になっていたせいで、返答ができなかった。
何せ留守電が残されていたのだ。
「流してみろ。」
なぜか画面を見ていないカイが答えた。
女の人の声・・・、あのコンビニの店員だ。
「もしもし、いきなりごめんなさい。でも、今お店の外に何かいるんです。」
彼女の声はひそひそ声で、息が多く、時々なにを言っているか聞き取りにくかった。
「お願い助け・・・いま入ってきた・・・。」
今にも大声を出しそうだ。
「お願い。助けてください。」
その瞬間、ものすごい雑音と彼女の悲鳴が聞こえたかと思うと電話が切れた。
最近留守電聞くことってなくなりましたよね!私だけ?
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




